第44話 とっとと逃げろ!
「それで、もし可能ならFマリーナからそちらに船を移動させてもらえなかいと思って電話したんです。」
「ああ、そういうことですか。もちろんいいですよ。」
「それとですね。私、実は芦屋の漁港に係留所を持っていまして、しばらく、そうですね。1ヶ月ほどそちらで修理とか船の操縦の練習をさせていただけないでしょうか?」
「もちろん、かまいませんよ。船のサイズはどれくらいですか?」
「22フィートのドライブ船です。」
「船台はちょうどいいのが今開いています。上架料は一日1000円です。それと船の上げ下ろしは一回4000円になります。よろしいでしょうか?」
「はい。わかりました。」
「で、いつ持ってきますか?」
「うーん。それがいつかとはっきり言えないんです。Fマリーナの主人がもう訳がわからないので。」
「大変ですねえ。まあ、いいでしょう。動かせる日が決まったら電話ください。」
私は次にYさんに連絡を入れた。今日の様子をあらかた伝える。
「えーっ。…それは困りましたねえ。」
「はい。困りました。で、ですね。私、船を近所の別のマリーナに移動させようと思うんです。Fマリーナのおやじはお前とはなんも契約してないから話なんかきかんとぎゃーぎゃーいうんですよ。で、申し訳ありませんが今度船を動かす時の連絡をYさんにお願いできませんか?僕の話は聞かないと断言されたのです。」
「はい。はい。わかりました。いいですよ。で、いつ動かしますか?」
「いや、私、先日も話したように一度も船を一人で操縦させたことがないんです。ちょっと手伝ってくれる人を探してまた連絡させてください。」
さて。
だれに手伝いをお願いしたらよいのか。困り果てた私はいつもお世話になっている元上司でもありお客様でもあり、商売上の先輩として尊敬しているWさんに電話をした。Wさんは津屋崎スズキマリーナに長いこと船を置いており、このあたりの海にとてもくわしい。
「こんにちは。Wさん。あのですね。かくかくしかじかで、はい。申し訳ないですが自信がないので出港の手伝いをお願いできませんか?」
「おお。いいですよ。いつがいい?」
「Wさんの予定に合わせます。」
「そうだなあ。じゃあ、来週の火曜日にしようか。火曜日の10時ごろはどう?ちょうど満潮だから出せるでしょう。」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
私は早速、来週の火曜日10時ということをYさんと津屋崎スズキマリーナに連絡をした。
矢は放たれたのである。
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