第22話 アメリカ編 ジャブローに散る

「あ、ゆうさんだ。」


 電話の主はどうやら一緒に湖に入っているゆうさんのようだ。


「あ、はい。あ、いやあ、けっこういいのが来てますよ。はい、俺もあにきも調子いいです。ええ、60ぐらいのが二本と50ぐらいのがちょこちょこ。ええ、はい。いまですか?今は移動して東の一番奥に入ってます。はい、そうです。はい、お待ちしてます。」

「どうしたん?」

「ゆうさんがこっちに来るって。」


 しばらく釣りながらまっているとゆうさんのバスボートがとことことやってきた。


「しゅうちゃん、どう?調子は?」

「いやあ、けっこう釣れました。プレスポーンに入ってるんじゃないですかね。サイズがでかいです。」


 弟はライブウェルをあけてバスを持ち上げて見せた。


「おお。でかいなあ。いいなあ。おにいさんも調子いいみたいですね。」

「はい、おかげさまで楽しませてもらってます。いやあ、キャステイク、いいですねえ。」

「いいでしょう!!」

「ゆうさんは?」

「いやあ、朝からけっこう数はでるんだけどサイズがねえ。ちいさいんですよね。」

「そうなんですか。」

「しゅうちゃん、そのでかいのはどこで釣った?」

「ほら、朝言ってたあの岬からちょっと奥に入り込んだワンドのあたりにかけてです。反応もよかったですよ。」

「そっか、じゃ、いまからそっちの方にまわってみよう。」


 ゆうさんは踵を返して右側の岬へと向かった。我々も今いるところより前いたところのほうがよかったと判断。この場を離れることにした。日も高くなり気温がぐんぐん上昇している。20度前後あるだろうか。エレキをあげてエンジンをかける。われわれも元の右側の岬へ戻ることにした。


 水面は青々と透明感を増している。ほとんど木は生えていないが低木のような草のような背の低い植物が延々と続いている。土はみるからにやせ細ったような色をしているのがわかる。ロスから1時間半のほどしか離れていないにもかかわらず、ここにもピューマがでるという。そういえばハリウッドの町中にピューマが出没して大騒ぎになったことがあったなあ。


 朝まずめの気ぜわしい移動とは違い、バスボートはのんびりと移動してゆく。水面になにかへんな小屋のようなものが浮いている。あれはなんだ?


「あれ?しゅう。あれなん?」

「ああ、あれは便所だよ。」

「なんですとーーーー!!」


 アメリカでは便所が湖に浮いていた。おそるべし。アメリカ。

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