第24話 アメリカ編 キャステイクの白い彗星
キャステイクレイクではラージマウスバス、スモールマウスバス、ストライプドバス、トラウト、ブルーギル、ナマズなどがつれるらしい。今回の目的はラージマウスバスなのだが、実はストライプドバスが一度釣ってみたい、釣ってみたいと夢見ていた。ストライパーは食べるととてもおいしいらしくこの魚だけはリリースせずに皆持って帰る。キャステイクのような広大な湖にも陸っぱりで釣りをしている人も多い。聞けば陸っぱりの人たちの多くはストライパー狙いなのだそうだ。
コヨーテとかピューマが出るのによく陸っぱりなんてできるなあ、なんてのんきなことを考えながらもといた岬の少し手前のワンドに入った。二三投したときにまた携帯が鳴った。
「あ、またゆうさんだ。もしもし?」
「しゅうちゃん、どこにいる?」
「あ、さっきの岬の二つほど手前の、はい、スロープに近い方のワンドにいます。」
「がちゃっ」
「あ、切れた。」
「なん?しゅうや。」
「いやあ、わからん。」
また、キャストしようとしたとき遠くからバスボートがかっ飛んでくる音が微かに聞こえた。向こうから白いバスボートが全速力で走ってくるのが見える。ゆうさん、あんたはシャアか!あぶねえ!
「しゅうちゃん、見て見て!」
ボートを止めたゆうさんがライブウェルから取り出したバスはこれまで見たことがないほどでかかった。ただひとことデカイとしか形容できない。これがひょっとしてフロリダ種か。ゆうさんは興奮して話し出した。
「このちょっと先の崖のところで何投かしてたら突然がぼっとでた!いやあ久しぶりでこんなデカイのかけたよ。興奮した!」
興奮しているのはみたらわかります。
「うわー。俺こんなでかいバス初めてみた。」
「いやあ、僕もひさしぶりですよ。さっき、しゅうちゃんから聞いた岬のちょっと先でさ。四~五投したらさ。がぼんよ。がぼん。」
「にいさん、すごいっすねえ。」
私は興奮冷めやらぬゆうさんと弟と私とわいわいバスを囲んで盛り上がっていたが、ふと冷静に考えると今この輪のなかにはたして私の嫁さんとかしゅうやの嫁さんが入ってくることがあるのか?いや、この世が終わってもそれはないだろうということに今更ながら気が付いた。
男は死ぬまで子供である。今日、わずか数百メートルを100kmのスピードでかっとんできたゆうさんとでかいバスを見て心底うらやましがっている弟を見て私は確信した。男は世界の害悪だ。たぶんそうだ。きっとそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます