第33話 第二展示場
展示場をでたM原さんの後を追う。糸島は不案内なのでどこを走っているのか皆目見当がつかない。大きく曲がったり海のそばを行ったりけっこうな距離を走ってようやく第二展示場へと到着した。ここは整備工場にもなっているらしく工場のようなものも併設されていて中では作業員がエンジンの整備に忙しく動き回っている。先ほど見せてもらった船よりもあきらかに一回り以上小さなちょうどお手頃に思える船が沢山展示してある。私はさっき見た船を思い浮かべ胸をなでおろした。
M原さんはにこやかに笑ってどうぞご自由にご覧くださいといった。私は一通り見て回る。ここには手が届きそうな船が何艘か置いてある。
「どうですか?」
「はい。ありがとうございました。なんとなくどれぐらいかかりそうなのかわかってきました。」
「そうですか。それは良かったです。…ちなみにご予算はどれぐらいでお考えですか?」
「はい。できれば100万円以内には抑えたいと思っているんですが。」
「100万円ですか。」
「難しいですかねえ?」
「いえ。難しい、というか、一番悩みどころの金額ですね。」
M原さんはにこやかに答えた。
「ええとですね。例えばこの船ですが本体価格が96万円。4スト90馬力21フィートのキャビンがないタイプの船です。これも、よそを見ていただいたらわかるかもしれませんが価格には自信があります。エンジンは700時間ぐらいです。まだ十分乗れます。この船には魚探がついていませんので別途購入が必要です。」
「魚探ってどれくらいかかる物なんですか?」
「普通、と言っていいのかわかりませんが8インチぐらいのGPS付の魚探でおおよそ15万円ぐらいじゃないでしょうか。」
「けっこうするんですねえ。」
「そうですね。それに部品と取付工事費が5万ほど。その他にここから、ええと船の停泊場所はもうお決まりですか?」
「はい。北九州の芦屋なんですが。」
「北九州ですか。ではそこまでの船の運送代が別途かかります。これも5万円ぐらいはみておいてください。ですから、ええと、合計して消費税っと。」
M原さんはぽちぽちと電卓をはじいた。
「大体130万円。ですね。中古船というのは基本、現状渡しなのでご覧になられて気になる部分はもちろん補修とか塗装とかはさせていただきますが別途料金がかかってきます。艤装はけっこうお金がかかります。ステンのアンカーを買うだけでも10万ぐらいはしますから。」
「なるほどお。高いんですねえ。」
「そうです。でも、最初にお金を投資しておかないと一度買って乗り始めたらなかなか手を加えるのが難しいんです。船は。」
「そうなんですか?」
「そうなんです。だって海の上にあるわけでしょう?マリーナに上架しているなら話は別ですけど。上架してあるとしても整備したり改造するには業者を新たに呼ばないといけませんよね。」
「まあ。そうですね。」
「陸にあげてある今のうちに気になる部分は全部手を入れておく方が後々いいんですよ。」
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