第37話 見学
「もう船は見ましたか?」
「いえ、まだです。」
「ええと。そうですか。じゃ、私がご案内しましょう。」
三人で連れだってYさんの船の場所へと移動する。船は上架してあるので脚立でよじ登る。
「ええと。実はこの船のYさんの前のオーナーさんとも長い付き合いでして、この船もずっと私が見てるんです。で、この船はですね。ヤンマーのディーゼル船になります。22フィートですね。現状で特に悪いところはありません。ただ、ドライブのチルトがほんの少し油漏れを起しているみたいです。これは直した方がいいでしょうね。」
「ははあ。」
「ええと。エンジンをかけてみましょうか。エンジン回りもきれいにしてあります。」
エンジンルームを開けてみると確かにきれいだ。ピカピカに整備してある。とても1700時間も動いているとは思えない。電源を入れエンジンのキーを回すと眠っていたエンジンが目を覚ます。耳を澄ますが異音などはしないようだ。
「ええと。Yさん。これはバッテリーはいつ交換したんでしたっけ?」
「あ、バッテリーはこのハンドルの下に入ってます。新品に換えたばっかりです。」
「ええと、じゃあ、バッテリーも問題ないですね。」
「はい、ないです。私が自分で交換しましたから。」
「ええと、この船は確か魚探がついてましたよね。Yさん。」
「あ、ありますよ。見ますか?」
「はい、ぜひ。」
Yさんは船を降り車から魚探を取ってきた。
おお、なんか結構新しめのいい魚探じゃないですか。ホンデックスの8インチの魚探である。
「へえ。この魚探もついているんですか。」
「はい、もう使わないからいいですよ。差し上げます。」
何から何まで私の思い描いたものに近いじゃないですか。トイレは完全にあきらめるしかないが今まで見せてもらった中では一番私の希望に近い船だ。特にセンターコンソールのところにオーニング(屋根ですね)がついているのが気に入った。キャビン付きの船には何度か載せてもらったことがあるがキャビンの前方に人が立つスペースがないことがほとんで船の後方でしか釣りができない。あまり大きな船は望めないので自然とキャビンのない船に目が留まる。そうなると一つの懸念が浮かんでくる。雨が降ってきたらどうしたらいいのか?ずぶぬれか?べしょべしょなのか?オーニングがついていると多少の雨ならしのげるだろう。少し雨が降っている時の方が良く釣れたりするのでこれは便利そうだ。
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