消えたキャリー

1

 私がどうやら普通の人でないらしいと気がついたのは、仕事でアッピラード地方に行って、さらに数年がたったころだった。


 私はアッピラード地方で出会った独特の宗教に興味を覚え、数年かけてその宗教について調べていた。


 特に名前のないその宗教のことを、私は『闇の宗教』と名付けようと思う。


 その闇の宗教を調べるにあたって私を一番てこずらせたのは、古代ラグナ文字だった。


 闇の宗教の経典は古代ラグナ文字で書かれていて、現代の言葉に翻訳されたものは一つもなかった。


 仕方なく、私は古代ラグナ文字で書かれた経典の翻訳をはじめた。


 そう――、これに数年を要したのだ。


 私が経典のすべてを翻訳し、闇の宗教についておおよその理解を得ることができたのは、私が四十になったときだった――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る