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 レオナードに断られて、最初は説得を試みたボナー警部だったが、彼の意志が固いとわかると残念そうに去っていった。


 オリバーと少し話があるらしいレオナードに、先に部屋に戻っているようにと言われて、エリザベスは部屋に戻るために、一人で大階段を上っていた。


 どうしてレオナードは警部の協力要請を断ったのだろう。


 警察の仕事に素人が首を突っ込むものではないだろうが、レオナードは過去に警部に協力したことがあるらしい。それなのに今回は役に立てないと言ったのは何故なのか。


 もちろん、今回は前回レオナードが協力したという窃盗事件とは違い、殺人事件だ。事件の難易度や危険性も違うのかもしれないし、彼はもう近衛隊の人間ではないのだから、協力する義務もないのかもしれない。しかし、何かが引っかかる。


 エリザベスは困ったように微笑んだレオナードの横顔を思い出した。


「おや、お嬢ちゃん、おはよう」


 突然話しかけられて、エリザベスは思考を現実に戻した。


 顔をあげればセルジオ教授がひらひらと手を振っていた。


「教授、おはようございます」


 階段を登り切ったエリザベスは、二階の廊下で、今まさに階段を下りようとしていた教授にぺこりと頭を下げた。


「教授はどこかに行かれるんですか?」


「ああ、町に行くんですよ。祭りはなくなっても、研究対象がなくなるわけじゃありませんからな」


「教授は闇の宗教の研究をなさっていたんでしたね」


「さよう。まだ調べていない資料もたくさんありますからな。しかし……」


 教授は顔を曇らせると、少し考え込むように視線を落とした。


「昨日の事件が少し気になる」


「昨日の事件って……、例のなくなられた方の?」


「うむ。研究者の勘とでもいうのか――、何やら嫌な予感がするのですよ」


「嫌な予感……?」


「今年は闇の宗教で使われていた十三の年回りで言えば、『復活』にあたる。まさかとは思いますが――、ちょっと、気になるのですよ」


 そして教授は、本当なら遺体を見せていただきたいところですが、無理ですかな――と物騒なことをつぶやきながら、階段を下りて行った。

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