2
レオナードに断られて、最初は説得を試みたボナー警部だったが、彼の意志が固いとわかると残念そうに去っていった。
オリバーと少し話があるらしいレオナードに、先に部屋に戻っているようにと言われて、エリザベスは部屋に戻るために、一人で大階段を上っていた。
どうしてレオナードは警部の協力要請を断ったのだろう。
警察の仕事に素人が首を突っ込むものではないだろうが、レオナードは過去に警部に協力したことがあるらしい。それなのに今回は役に立てないと言ったのは何故なのか。
もちろん、今回は前回レオナードが協力したという窃盗事件とは違い、殺人事件だ。事件の難易度や危険性も違うのかもしれないし、彼はもう近衛隊の人間ではないのだから、協力する義務もないのかもしれない。しかし、何かが引っかかる。
エリザベスは困ったように微笑んだレオナードの横顔を思い出した。
「おや、お嬢ちゃん、おはよう」
突然話しかけられて、エリザベスは思考を現実に戻した。
顔をあげればセルジオ教授がひらひらと手を振っていた。
「教授、おはようございます」
階段を登り切ったエリザベスは、二階の廊下で、今まさに階段を下りようとしていた教授にぺこりと頭を下げた。
「教授はどこかに行かれるんですか?」
「ああ、町に行くんですよ。祭りはなくなっても、研究対象がなくなるわけじゃありませんからな」
「教授は闇の宗教の研究をなさっていたんでしたね」
「さよう。まだ調べていない資料もたくさんありますからな。しかし……」
教授は顔を曇らせると、少し考え込むように視線を落とした。
「昨日の事件が少し気になる」
「昨日の事件って……、例のなくなられた方の?」
「うむ。研究者の勘とでもいうのか――、何やら嫌な予感がするのですよ」
「嫌な予感……?」
「今年は闇の宗教で使われていた十三の年回りで言えば、『復活』にあたる。まさかとは思いますが――、ちょっと、気になるのですよ」
そして教授は、本当なら遺体を見せていただきたいところですが、無理ですかな――と物騒なことをつぶやきながら、階段を下りて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます