古代ラグナ文字

1

 私が私自身の不思議に気がついたのは、三十も半ばになったころだった。


 最初に疑問を持ったのは、妻のこの一言からだった。


 ――あなたは本当に、いつまでもお若いのね。うらやましいわ。


 言われてみれば、私の外見は二十歳のころからいかほども変わっていなかった。目立つ皺もなく、肌にもハリがあって、髪は黒々としていた。私はこれまで私自身のその外見に特に疑問を抱かなかったが、妻を見てみれば確かに出会ったころにはなかった皺があり、重ねてきた年が垣間見えた。


 私は鏡に映る自身の顔をとっくりと見つめた。


 そして思った。どうして私はいつまでも若いままなのだろう、と。


 そしてその疑問に答えが出ないまま二年が過ぎたころ、私は仕事でアッピラード地方に出向くことがあった。


 そこで知ったある宗教に、私は雷に打たれたような衝撃を得た。


 そうか――


 なるほど、私は「そう」だったのだ。


 それから私の苦悩の日々がはじまった――

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