祭りの夜

1

 幾何いくばくかの未来に、もしもこの棺を開きこれを読むことができた人間がいたのならば、私は私の持つ力をほんの少しだけ分け与えてもいいと考えている。


 それにはまず、私がこの世に復活を遂げる必要があることを先に伝えておこう。


 私の手記の謎を解き、もしも私をこの世界に呼び戻すことができたならば、私はその者にどんな財宝よりも価値のある力を与えるだろう。


 さて、その私の持つ力であるが――、それを語るにはまず、私の生涯を語る必要がある。


 勇気あるものよ、欲深きものよ、己が欲望を満たすために、私の生涯を知るといい。




 私は、今この時より百年ほど前、スラム街の貧しい家の、三男坊として生を受けた――

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