3
リゼットにティーポットに紅茶と、簡単につまめる焼き菓子を用意してもらい、エリザベスは図書室の窓際のテーブルにそれらを並べた。
場所は図書室だが、気分はちょっとしたピクニック気分だ。
レオナードは楽しそうなエリザベスを微笑ましそうに見やってから、壁一面の本棚に並んでいる本の背表紙をゆっくりと見て回った。
コードリー橋の修復にはまだ時間がかかる。仮の簡素な橋を先に作るという話だが、それにも十日――もしかしたらそれ以上はかかりそうだった。その間にすることもないので、エリザベスが見つけた古代ラグナ文字の紙は、いい暇つぶしになったと言える。
しかし、あの紙が何なのか見当もつかない。この膨大な本の中から手掛かりを探すのは骨が折れそうだし、もしかしたらこの中に何の手掛かりもないかもしれない。
そんなことを思いながら本を見て回っていたら、レオナードの反対側から本棚を見ていたエリザベスが「あ!」と声をあげた。
「どうした?」
「ううん。この本を見て、ちょっと思い出しちゃって」
エリザベスが本棚から一冊の本を抜き取って、レオナードのもとに持って来た。
ビロードで装丁された本には『復活』と書かれていた。
「この本が何か?」
表紙だけでは、この本が物語なのか論書なのかもわからない。エリザベスがどうしてこの本に惹かれたのかとレオナードは首をひねった。
「うん、別にこの本が関係しているとは思わないんだけど、昨日ね、セルジオ博士が言っていたのよ」
―――今年は闇の宗教で使われていた十三の年回りで言えば、『復活』にあたる。まさかとは思いますが――、ちょっと、気になるのですよ。
「復活?」
エリザベスが昨日セルジオ博士と会話した内容を告げると、レオナードは眉を寄せた。
「セルジオ博士がそんなことを? ……祭りで出た死人と、闇の宗教が関係していると?」
「わかんないけど、研究者の勘みたいなものなんだって」
「ふうん……、なるほど、それは少し気になるね」
レオナードはそう言って、エリザベスが持って来た本をぱらぱらとめくった。そして、研究者の勘は知らないが、彼女の勘もなかなかのものだと思った。
「ビンゴだよ。この本、闇の宗教について書かれている。少し読んでみよう」
レオナードとエリザベスはその本を持って、窓際の席まで移動した。
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