5
事情を聞いたレオナードは、慰めるように友人の肩を叩いた。
エリザベスはオリバーのためにリゼットに紅茶と茶菓子を頼んで、それをテーブルに並べた。
「ありがとう、ミス・エリザベス」
力なく微笑むオリバーに、エリザベスは同情を禁じえなかった。
「さすがに世間知らずのキャリーをこのままにはしておけないな。なんとかして連れ戻すしかないだろう」
レオナードが言えば、オリバーは疲れたように頷いた。
「ああ。彼女のヒステリーを思うと気は進まないけどね。万が一何かあってからでは遅い。このあたりの治安はまあいい方だが、それでも女の子一人でふらふらさせるわけにはいかないよ。例の殺人事件のこともあるし……」
自分で言いながら、オリバーは気分が重たくなってきたのだろう。顔を覆ってしまった。
「今日ほど彼女と婚約したことを悔やんだことはないよ……」
よほど精神的に追いやられているのだろう。この場にエリザベスがいると言うのに、オリバーは本音を吐いてため息をついた。
レオナードはオリバーのために紅茶にウイスキーを落としてやる。
「気は進まないだろうが、警察を頼った方がいいかもな。ちょうどボナー警部が町にいることだし。彼ならすぐに探し出してくれるだろう」
「そうだね……、そうしよう」
「大丈夫だ、すぐに見つかるさ。見つかれば、少し怒ってやるといい。君はいつも甘い顔をしすぎなんだ」
たまにはガツンと言ってやれと言うレオナードに、オリバーは小さく微笑んだ。
そしてオリバーが紅茶を飲み干して立ち上がったとき、デビットがオリバーを呼ぶ声が聞こえた。
どうやら客人が来たらしい。
いったい誰だろうと訝りながらオリバーが階段を下りると、そこには、今まさに連絡を取ろうと思っていたボナー警部が立っていた。
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