第36話 他人のせいにする
「他人のせいにする」
このお話のタイトルにもあるこの行為を実行するのは後ろめたい気があるかもしれません。責めたくなる気持ちも分かります。
ただ、メンタルを病んでまずは心の分解清掃や整備が必要な方には有効な場合もあります。
足の骨を折った人が骨がくっつくまでの間ギプスを付けるのと同じように、精神的に病んだ場合は「他人のせいにする」という苦しみを和らげる対症療法も有効でしょう。
例えば体調の悪さを「気圧が低い」とか「寒暖差が激しい」とか「占いで悪く言われた」などと言えばいいでしょう。
ここで重要なのが、天気とか占いという「悪く言っても言い返してこない」相手のせいにする事です。
実在する人のせいにしたらばれた時に問題になると思いますのでそれは辞めたほうが良いのですが、天気や占いと言った言い返してこない相手のせいにすると「自分は悪くない」と思えるのでだいぶ気が楽になります。
「他の物のせいにするなんて卑怯じゃないか!」とか「言い訳ばかりしていると立ち向かえなくなるぞ!」と思うかもしれません。
ですが、メンタルの病というのは実際に「脳の神経伝達物質の量がおかしくなっている」という、
風邪引いて熱や咳が出るのと同じようにれっきとした「異常事態」なので、そんなことを言うのはインフルエンザで39度台の熱が出ている人に対して
「トレーニングして体力をつければそんなのすぐ治る! さあダンベルだ!」と言って無理やりトーニングさせるようなものです。
特にメンタルを病みやすい人というのは繊細で、ほんの少しのマイナスを100にも1000にも増幅して被弾してしまう人が多いです。
「私は失敗作の出来損ないの落第生で叩かれて当然、けなされ嫌悪されて当然」という思考で固定されている人が多く、
生きる上で大きな重しになってしまいます。なのでこういう人……「昔は「弱い奴」として文字通り斬り捨てられる側にいた人」というのは
意図的に他人のせいにするトレーニングというのは必要でしょう……「意図的に他人のせいにするトレーニング」と書くと妙な話かもしれませんが。
メンタルをこじらせる人の中には「自分は幸せになってはいけないんだ」って思ってる人もいて、こういう人は自分が恵まれている環境にいると精神的ダメージを受けるんですよ。
それこそ「アフリカには生きたくても生きていけない子供たちが大勢いるのに自分はクーラーなんかつけている」とか言ってね。
そう信じてる人は本当に「他人のせいにする」トレーニングを積まないと色々崩壊すると思います。
こういう人は結婚式で新郎や新婦として出席しても「こんなのふさわしくない」「どうお返しすればいいのか分からない」って言って精神的にダメージを負うんですよ。
しかも幸せの濃度が人生で1番濃いだけにその分食らうダメージが半端なモノではない位になってしまうんですよ。信じられないと思いますが。
そもそもメンタルを病んだ本人は「メンタルを病む」ほど追い込まれていることがほとんどで、自分一人の力ではどうしようもない緊急事態に直面しているものです。
というか自分一人の力で何とかできるならそもそもメンタルを病むことなんてありません。精神的におかしくなるのには必ず理由があるのです。
たとえそれがどんなにささいで馬鹿馬鹿しい理由でも本人が真剣に悩み過ぎて体調がおかしくなるのであれば、それは傾聴すべきでしょう。
前にも言いましたが、例えば「思春期の悩み」っていうのは大人からすればささいで、ほほえましくすらある程度の小さい小さいものですが、
当の本人にとっては「あまりにも大きすぎて悩み過ぎた結果、世界に絶望して自殺してしまう」程に「真剣で重苦しくのしかかってくる脅威そのもの」なのです。
実際、今でも500~600名近くの若者たちが自殺していますから、決して言い過ぎではないでしょう。
そんな人たちはとにかく「自分が悪いんだ」とあまりにも強く思い過ぎていて、それがメンヘラとなって表に出てくるのです。
メンヘラになる人からすれば普通の人間というのは「破滅的なまでに無責任」で「狂騒的なまでに自分勝手」なものです。
そんな人たちが集まって世界が回っているというのはあまりにも不気味で不可解の極みかもしれませんが、
それで世の中というのは成り立っているという実にいい加減なものなのです。
なので他人のせいにする練習でもしとけばいいと思います。特にメンヘラにかかる人というのは。
昔、それこそ江戸時代だった頃はもっと人間いい加減だったんですよ。
例えば大工は雨の日は休業、なんてのは序の口で夏は暑いから仕事したくない、冬は寒いから嫌だとか言って休んでたくらいですから。
そういういい加減な生活でも日本は回ってたんですよ。今でこそ会社員は当たり前になったんですけど、日本の歴史からすればここ100年程度のごく最近の話なんですよ。
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