希死念慮の出る男の手記

第23話 あなたはただそこにいるだけでも価値がある

　あなたは「あなたは何もしなくてもただそこで生きているだけで価値を生み出している」こう言われるとどう思うでしょうか？

　おそらくは「そんなことない。会社でも家庭でもダメダメで食料に洋服に電気ガス水道ネット代などを無駄遣いしてるだけだ」などという反応が返ってくるかもしれません。それでも言います。

「あなたは何もしなくてもただそこに生きているだけで価値を生み出している」と。

　なぜか？　それに関しても解説しましょうか。

　例えばの話「赤ちゃん」って存在価値はあるでしょうか？

　赤ちゃんは自分だけでは何一つできません。自分ではご飯を作るどころか年齢によっては自力で食べることすら出来ません。一人でトイレに行くことも、年齢によっては歩くことや寝返りをうつことすらできません。

　ましてや働いて金を稼ぐこともできませんし、夜泣きやイヤイヤもするし、あなた以上に何の価値も生み出していないどころか迷惑な存在ですらあります。

　実際育児に押しつぶされて我が子に手をかけるなんていう案件は悲しいながらもいつの世にもありますからね。

　そんな彼ら（あるいは彼女ら）に存在価値は無いとは言えませんよね？

　なぜなら哺乳瓶に紙おむつ、ベッドに服におしゃぶりを作るメーカーにとっては赤ちゃんは「何もしなくてもただ存在してくれるだけで価値を生む」のであって「赤ちゃんがいるからこそ」成り立つ仕事なわけです。

　それと同じであなたが精神的な病にかかっても……いや、あなたが「精神的な病にかかったからこそ」成り立つ仕事というのもあります。

　精神科や心療内科のお医者さんだってそうですし、薬を処方する薬剤師にそもそも薬を作る製薬会社も精神的な病にかかったあなたがいるからこそ成り立つ仕事なのです。

　他にも食べ物を作ってくれる農家や養豚場や養鶏場、服を作ってくれるアパレルメーカーにそれを売る店、これを読んでくれているというのならあなたのパソコンやスマホだって作ってくれるメーカーがあるからこそ手にしているはずです。材料から完全に自作する事はできないはずです。

　また、決して「自分にモノ、カネ、手間暇を注ぐのは資源の無駄遣いでただただ資源を食いつぶすだけの浪費だ」とは思わないでください。

　例えば競馬で散財したって直接間接問わず馬の騎手や競馬場の整備スタッフ、馬の牧場関係者などなどにお金が行くので決して無駄遣いではありません。

　おそらくは「自分には生産的なものは何一つないゴミクズのカスで何の価値もない存在だ」というのが出発地点になっているのでしょうが、それは間違いです。

　とにかく「あなたは何もせずにただそこで生きているだけで価値はある」というのは忘れないでください。

　多分「人の役に立っている」と言われると不愉快というかむずがゆい感情が出ると思います。

「こんなゴミクズのカスで、存在しないほうがみんな喜ぶような負の遺産みたいなやつ」が「ただ生きているだけで誰かの役に立っている」と聞くと奇妙な感覚になるかもしれません。

　ですがそれは気にしないほうが良いでしょう。それはメンタルをこじらせたせいで起こる「異常な感覚」であってそれが無いのが普通だからです。

【次回予告】

家族や会社に迷惑がかかる。と思って病院に行かない人も結構多いかと思います。

大丈夫。家族や会社に迷惑をかけても、その迷惑を返済できなかったとても、恨みはしませんよ。

第２４話　「つらかったら「きちんと」つらいと言う事　死んだらもう取り返しがつかない」