第32話 誰にも迷惑をかけないのは神様仏様のみ

「誰にも迷惑をかけたくない」


 精神を病んでくるとこんなことを思うようになりますが、率直に言えば正直「傲慢」な悩みだと思います。

 何故なら「誰にも迷惑をかけないのは神様仏様のみ」だからです。




「誰にも迷惑をかけたくない」という人からすれば世界に絶望するようなことをあえて言いますが、人間というのは生きているだけで誰かに迷惑をかけるものなのです。

 赤ちゃんの頃は「おぎゃーおぎゃー」と夜泣きして親を困らせただろうし、子供のころはクラスメートや友達に迷惑をかけて絶交したりされたのは1度や2度ではないでしょう。


 今では業界一の天才だって子供のころはそうだったし、普通の子と変わってる分余計に親や親せきに迷惑をかけていたでしょう。




 なので、人間と言うのは生きているだけで誰かの迷惑になるんです。人間はごく普通に生活しているだけでお互いを怒らせ、不愉快にさせ合うんです。

 そしてお互いに迷惑をかけ合ってそれをお互いに許しあったりお互いに無視しあったり、時にはお互いに怒りあったりしながら人生をやり過ごすぐらいしかできないものです。

 それが普通で、それをしないというのなら間違いなく神様仏様の類です。




「人間は生きているだけで他人に迷惑をかける」からこそ子供のころは親から「他人に迷惑をかけてはいけません」と言われるものです。

 実際には「子供が他人に迷惑をかけることで、その迷惑が親である自分に降りかかって来るのを避けたい」という親のエゴなだけです。

 子供の尻ぬぐいをせずに済ませたい、事前に防ぎたいという親の「恐ろしく傲慢なエゴ」から発せられる言葉です。


 親と言うのはワガママで身勝手なもので、自分の身の可愛さゆえに神様仏様にしかできない「誰にも迷惑をかけない」というのを子供に強要させるんですよ。

 それで一部ではあるもののどれだけ子供が苦しむかも一切分からないんですよ。

 そんな親の呪縛はさっさと断ち切ったほうが良いでしょう。何せ人間は「生きているだけで他人に迷惑をかける」生き物なのでこればかりはどうしようもないです。




 よく「家族に迷惑がかかるからやりたくない」と言いますが、あなたがまともな人間なら迷惑をかけてもいいんですよ。

 家族もその辺は分かってくれるし、それで怒ったりはしないと思います。

 迷惑をかけた分は後でお返しすればいいだけですし、何だったら迷惑をかけっぱなしで死んでも怒りはしないと思います。




 何度も言いますが「誰にも迷惑をかけない」のは「神様仏様」しかいません。

 人間は生きているだけでどうしても他人に迷惑をかけてしまいます。言ってしまえば、それが人間の限界です。

 なので誰かに迷惑をかけるのは当然のことでそこを嘆いても「天が落ちてこないか心配で心配で夜も眠れない」というのと同じくらいの滑稽こっけいな悩みになってしまうでしょう。


 もちろん「積極的に」迷惑をかけるのはやめておいたほうが良いのですが「一切迷惑をかけない」というのも問題です。いずれにせよ話が「極端すぎる」のが問題でしょう。

 メンタルをこじらせると、とにかく話が極端になりがちで100か0のどちらかしかないという考えになりやすいです。

 そこを改めましょう。


 具体的には「この意見は極端すぎやしないか?」と自分の考えに疑問を持つことです。そしてなるべくデータにのっとった客観的な情報を探しましょう。

 知り合いに聞いてみるにもいいでしょうし、ネットで探せば置いてあるかもしれません。




 それに迷惑をかけるのならいっそのこと愛嬌あいきょう良くふるまって「しょうがないなぁ助けてやるか」って相手に思わせるような迷惑のかけ方をした方がいいに決まってます。

 迷惑をかけた分は別の事でお返し、それこそお中元でも良いので返せばいいんですから。

「アイツは仕事はできないけどお中元はしっかり送って来るから律儀だけは良いんだよなぁ」って思わせれば良いんです。

 それも出来なきゃ「アイツ仕事はミスするけど飲み会ではテキパキ動けるんだよなぁ」って思わせればそれでいいんです。何も仕事のミスは仕事でカバーしなくても良いんです。




 こう書くと「そんな事絶対に!! 『絶・対・に!!!!!』許されるものではない!!!!!」って思うでしょうけど、

 世の中「持ちつ持たれつ」なので「迷惑のキャッチボール」をするのが当たり前なんです。

 ……この「迷惑のキャッチボール」っていう言葉が恐ろしくて思わず目をそむけたくなる気持ちはわかります。そんな事あり得ない!! って思いますよそりゃ。俺だってそうだもん。

「絶対にミスしない完璧な人」も昔はミスしてたから、そういうものです。




「迷惑罪」がこの世には存在して、有罪判決を言い渡されたらどんな恐ろしいことになるのか分からなくてひたすらに怖くて怖くて仕方ない。

 っていう人がこの作品の読者には少なからずいるでしょうが、そんな人には「もっと迷惑をかけてもいい」と言っておきます。

 おそらく子供の頃に親から「迷惑をかけてはいけません」って言われてそれを律儀に守り続けている人なんでしょう。それは親の傲慢から来る「悪いしつけ」なので守らなくても良いです。

 破っても構わないモノです。

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