第29話 足の無い人に「サッカーやろうぜ!」
「精神的に病んだ人を励ます」っていうのを素人がやると、100%の善意で『足が無い人』に「サッカーやろうぜ!」って言うようなものですよ。それ位「埋めがたい溝」っていうのはあります。
多分文明がいくら進歩してもこの溝は決して埋まらないと思います。人間って奴は自分が体験したことしか理解できないので。だから精神科医や心療内科医っていう専門家がいるんですよ。
「とにかく何をしてもネガティブな方向に思考が行ってしまう」ので、もう自分の意志ではどうしようもないんです。
そう。死にたい死にたいと言い続けるのは「もはや自分の意志ではどうしようもない」ところまで行ってしまうわけでして、もう当人でさえ止めようがないんです。
精神的な病気は数値化できないし、風邪のように誰もがかかる病気ではないので根本的な理解はおそらく不可能だと思いますが、
それこそ『信号機を見ても死にたくなる』くらいに意識が『死にたい』に固定化されて、そこから抜け出すことは自力では不可能になるんですよ。
研究によれば精神疾患は「脳の誤作動によるもの」というもっともらしい理由がついています。
っていうか、こんな思考回路は努力して手に入れるものじゃないし、手に入れる価値も無いものなので共倒れだけはしないように。良いことないから。
それと現在苦しんでる人に言いますが、もう自分の力では死にたいは止められないので「恥や敗北や屈辱や真の絶望だと思って良い」から心療内科に相談しないと悪化しますよ。
「そこまで話を大事(おおごと)にしたくない!」とか「自分なんかのために他人を巻き込むだなんてとんでもない!」って言って拒否するのは
「ガン治療を拒否する」のと一緒で「死に一直線」だからやらないで下さいね。精神的な病は「ガン」と一緒で絶対に自然治癒しないし、放置すると命まで取りますよ。ホントの話で。
実際俺は前の仕事で元からメンタル不安定なのにパワハラに遭って、死ぬ「半歩手前」まで追い詰められたから。あと「半歩」でも踏み間違えていたら死んでました。誇張表現抜きで。
ヤフーの検索で出てくるメンヘラ向けのアドバイスは、交通事故で足を失った人に向かって「外で元気に遊べばポジティブになれるよ」って言うようなもので、
「それが出来ないから苦労してるんだよ」って言いたくなるような内容ばかり、というかソレがほぼ全てで、全くもって参考になりません。
「過去は変えられない。昔にとらわれずに前を向いて歩きなさいな」って言われても、本気でこじれたメンヘラは
「そもそも足が無いから『歩く』っていうのがどういうことなのか分からない」と返さざるを得ないので、アドバイスする側も何をくれてやればいいのか分からなくなるはず。
本気でメンヘラになると太宰治氏の人間失格じゃないけど「弱虫は幸福でさえ恐れる。綿でケガする」もので、もうどうすればいいのかメンヘラ本人ですら分からなくなります。
(完全に余談ですが、この「弱虫は幸福でさえ恐れる。綿でケガする」というフレーズを思いついた太宰治は本物の天才だと思う。わずか38歳の
それこそ「『希望』に傷ついて『夢』でケガする」というところまで行ってしまう。
何度も夢や希望にすがって「幸福から不幸に叩き落される経験」を何度も積んで「学習性無気力」を学んでしまった悲しい事例だと思います。
じゃあ何を与えればいいんだ? 何が欲しいんだ? ってなるけどあまりにもこじれすぎて、メンヘラ本人ですら何が欲しいのか? どう接して欲しいのか? 分からなくなってしまうものです。
そんなこと言ってしまうと「またバカにされるんじゃないのか?」「また『分からない』と否定されるんじゃないか?」って思って意識的にせよ無意識的にせよ恐れているんです。
どうだ、メンヘラってめんどくさい奴だろ(偉そうに言うな)。
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