第3話 相談を「する」側も「される」側も、一人で抱え込まないで

 うつに関しては「1人で抱え込まないで」というメッセージが最近になって浸透しつつありますが、これは「うつの当事者」だけでなく「相談をされる側にいるでろう患者の身内や友人」にも当てはまります。


 なぜかと言いますと、1番恐ろしくて避けなくてはいけないのは「共倒れ」です。

 うつを抱える患者の「死にたい」を聞き続けるうちに身内もおかしくなっていく、あるいは稼ぎ頭が倒れて収入がなくなる、なんてこともあります。


 特に稼ぎ頭のお父ちゃんが倒れたら一家離散にもなりかねませんのでこうなるともはや家族だけではどうしようもなくなります。

 なので役所に行って公的機関からの支援を受けることを強く、強く勧めます。なぜなら「支援してくれる人を1人でも増やせばその分、楽になれる」からです。


 人命救助の際には倒れている人を見つけた時はまず最初に「大声で周りに助けを呼ぶ」とありますが、これは「手伝ってくれる人を1人でも増やす」手段です。

 人命救助のプロフェッショナルである救命医だってそうします。救命医だからといって決して1人で抱え込んだりは絶対にしません。


 むしろ「人命救助のプロだからこそ」1人でできることには限界があって数多くの人の手助けが無くては人を救えない。というのを良ーく良く知っています。

 なので「1人で」あるいは「家族の中で」抱え込んでも解決しないどころか、悪化すると思っていいです。




 ではその具体的な公的支援は何か、というと……


・雇用保険

・障害年金

・障害者控除

・都営交通乗車証

・高額療養費制度

・自立支援医療費制度

・精神障害者保健福祉手帳

・保険料納付猶予制度

・保険料免除制度

・簡保入院給付金

・医療費控除

・生活保護


 私が思い浮かぶだけでもこれだけあります。他にもあるかもしれません。


「役所」というのは「声を上げなければ基本無視」という姿勢なので積極的に声を出さなくてはなりません。酷かもしれませんが「つらい、つらい」と言うだけでは何の解決もしないのです。

 つらいつらいと言って誰かが手を差し伸べてくれるのを待ってるのは楽かもしれませんが非現実的な事です。まずは市役所に駆け込んでサポートしてくれと頼み込むところから始めましょう。


 こういった「外部からのサポート」を受けることが「負け、敗北」であると感じてしまう人も中に入るかもしれません。

 ですが人生において勝ち負けなんてありません。あるとしたら「自殺は計測不能レベルの負け」というのがあるでしょう。なので「1人で抱え込む」事は「うつ当事者」も「うつ当事者の周りの人」も絶対にしないで親戚や医者、公的機関の支援を受けるべきだと思います。


 特に核家族化の進んだ現代日本では助けを呼ぶ相手がいない。なんてことも少なくありません。なので公的機関への援助申請を一刻でも早くすべきです。

 少なくとも精神科や心療内科に通ってそこの先生を巻き込むというのは非常に有効な手段です。もしその先生が博識ならば役所の支援策を聞けるかもしれません。実際私も先生から言われて制度を知って得した人間でもあります。




 正直な話、メンタルを損なったら「1人での回復」はほぼ不可能、と言っていいくらいの極めて困難な事です。風邪やインフルエンザと違って寝てれば回復するものではないからです。1人でも多くの人間を巻き込んで一緒に治療するように心がけてください。


 繰り返しになりますが、人命救助のプロフェッショナルである救命医でさえ、まず最初にやることは「大声で周りに助けを求める」事で「治療を開始すること」ではありません。

「治療を始めるよりも早く」周りの人間に助けを呼びます。救命医ですら絶対に1人で抱え込んだりはしません。

 なのでためらわずに周りに助けを求めてください。たとえメンタルをこじらせてしまった人であろうと、その周りの人であろうと、です。




【次回予告】


このエッセイ・ノンフィクションのタイトルにもある「希死念慮きしねんりょ」とは一体何か?

それを4話目にしてようやく解説しましょう。


第4話 「希死念慮(きしねんりょ)とは?」

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