第10話 休むことが出来なくなる

「平日は足手まといをやらかしているんだから休日に挽回しなくてはならない」

 とか

「充実した完璧な休暇をしなければいけないのに、時間があればアレもできた、コレもできた、なのにお前は怠けてばかりで何もしない!」

 という謎の言葉が身体の内側からわいてきて休日横になっても休めない。


 うつ病にかかると何が問題かというと『休めない』これが非常に大きいです。

 特に日本人は休むのが「とんでもなくへたくそ」なのでうつで長期休暇を取ってもうまく休むことが出来ない方が非常に多いです。




 うつ病など精神疾患にかかると「休んでください」とよく言われますが「自分だけ休むのは面目ない」とか「休むことで周りに迷惑をかけている」とか、

 さらには「長期間休むことで日常が崩壊してしまうのではないのか?」とか「ここで休むと社会的信用を何もかも失ってしまい無になってしまうのでは?」とか、

 はたまた「ここで休むと理想の人生プランが滅茶苦茶になってもう取り返しがつかなくなってしまうのでは?」と思って

 ベッドで横になっても心の中は常にあせりすぎていて精神的にちっとも休まらない。ということは非常によくある話です。私も今でも時々こうなります。




 おそらくうつが長期化する理由というのは「精神的に休むことが出来ない」からだというのも1つの大きな原因だと思います。

「休むことは怠けることだ。働け働け、社会貢献しろ」と自分で自分を追い込んでいく。

 でもうつになると身体も頭も動かないわけで、それこそ本当に酷ければ「トイレに行くことすらできずにベッドの中で漏らしてしまう」事だってあります。

 それを見てますます「内側からの声」が激しくなっていって自分にムチを打つ。


 その結果もう自分ではどうしようもなくなって自殺。という最悪な結末になってしまいます。




 特にメンタルを病むとまず思考回路がおかしくなってしまって正常な判断が出来なくなってくるので、

 こればかりは周りの人が「強制的に止めさせる」位の事はやっていいでしょう。


 今のところは「うつ」を始めとした精神疾患というのは「脳の病気」であるという見方が強いです。

 なので「おかしくなった脳」がいくら考えても「おかしな結論」しか出てきません。

 第1話で「推しのDVDやブルーレイを見ても「俺なんて死んだほうが推しの彼女のためになる」と思ってしまう」と書きましたが、

 これこそ「おかしくなった脳」がいくら考えても「おかしな結論」しか出てこない、その例です。




 ではどうすればいいのか? となりますと「家の内外に関わらず落ち着ける場所を見つける」事がよさそうです。

 特に家族がメンタルの病に詳しくない場合は偏見を持たれることがあり家の中が落ち着けない、という事もあるでしょう。

 そうしたら(動けるのであれば)家の外に落ち着ける場所を求めるようにしたほうが良いかもしれません。

 例えば図書館や喫茶店、ネットカフェ、あるいはグループホームといった外に居場所を求めるというのもありですし、どうしても居場所が見つからない場合は「入院」という手もあります。


 何も家の中にこもりっきりというのが休むことだとは限らないわけなんですよ。

 人によっては「トレーニングジムの中で運動すること」が落ち着ける場所だったり事だったりするし「カラオケで叫ぶように歌う」が落ち着ける場所や事だったりするんです。

「家の中にいることが安心できない」というのは当たり前のように起こることですし、それで悩む必要はないでしょう。




 それと「自分が休むことで会社が回らなくなってしまうのでは?」という恐怖で休めない人も多いと思いますがそんな心配はいりません。

 アメリカのリンカーン大統領はある日突然暗殺されてしまいましたがそれでもアメリカは崩壊せずに平常運転してました。

 あのアメリカ大統領でさえある日突然死んでもアメリカは回っていたんですから、あなたが休んだくらいで会社が回らなくなる。

 なんてことはまず起きないので安心して休んでください。




 うつは怠けものである。と言いますが全然怠けていません。というのも常に「死にたい」との戦争状態にあるからです。

 何とかして死なせたい自分と、何とかして死なずに済ませたい自分との戦いがいつも続いていて、これは正直かなり精神的に消耗します。


 平日は仕事中、休日は1日中、特に午後からは常に「死にたい」と思い続けるため仕事自体は楽な軽作業なのですが、終わる頃にはもうズタボロになるまで疲弊ひへいしきります。

 場合によっては「嘔吐おうと」することもあります。

「死にたい」という言葉が頭の中に延々と響いているのですが聞いてるだけで疲れてくるんです。


 健常者からすれば「じゃあ死にたいと思うのを止めればいいじゃないか」と思うのですが、

 それが出来れば苦労しないわけで、もう「死にたい」は自分の意志ではどうしようもなくて何があろうが絶対に止められないんです。


 たとえて言うなら「どうしても崖に向かって飛び込みたくなる自分を、どう頑張っても首つりしたくなる自分を必死に抑え込み続ける」と言えば

 少しは理解できるでしょうか? それも起きている間は1日中ずっと休憩なしで。




 もう少しわかりやすい例を挙げれば「国会での与党と野党のやり取り」を思い浮かべれば少しはわかりやすいでしょうか?

 野党は与党の欠点のあら捜しをして飽きもせずネチネチネチネチほじくり返して金をもらっているという御大層な仕事をしていますが

 あれを「与党=自分自身、野党=何とかして自分を死なせたいもう一人の自分」と考えれば少しはわかりやすいでしょうか?


 常に「与党=自分自身」のダメなところ、出来ないところ、至らないところをほじくり返してネチネチネチネチ攻め続け、それを起きている間中は常に休むことなく続けている。

 たまにミスをしようものならメチャクチャ大喜びしながら罵倒してくるもう一人の自分自身がいる。と言えば少しは理解できるでしょうか?




 とにかく自分の意志の芯の部分に「死にたい」あるいは「死ななくてはならない」という言葉がズドン!! と突き刺さっていて、

 できることなら動かしたいのですがもう何をやっても動いてくれなくて、もうどうしていいかわからずに本当にヘトヘトになって、

 その間も絶えず「死にたい」という声が頭の中に響いて、もうただただ死にたい死にたい死にたいって言い続けるしかなくて……というありさまなんです。


 多分これ読んでる人(特に健常者の方)は「この人はものすごくパニックを起こしているのだろうけど言いたいことはわからない」と思っているでしょう。

「自分の意志とは関係無く動くもう一人の自分」なんて言われてもわからないと思いますし、想像することすらできないでしょう。

 これでも一応健常者にも理解できるようにかみ砕いてはいるものの、それでも無理というのはあるでしょう。




 とにかくうつを抱えると精神的に泥沼どろぬま化した内戦状態になってもう自分の力だけではどうしようもなくなるということだけは覚えておいてください。

 以前漫画家の「西原理恵子」氏がDVについて「本人たちは洗濯機の中で回っているようなものだから、周囲が気付いて引っ張り出すしかない」と言ってましたが、精神疾患も同じだと思って下さい。

 もう本人の力だけではどうしようもない状態まで追い込まれていて、誰かが手を貸さないと最悪自殺してしまうところまで行ってしまっていると思ってください。

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