第6話 「死にたい」から「死ななくてはならない」へ

「死にたいと言っている奴に限って死なない」

 こんな「間違った」意見が出てくるのはおそらく「死にたい」と「死ななくてはならない」の区別がついてないのかと思います。


 確かに「死にたい」と言っているうちは「比較的」危険度は低いでしょう。もちろん「比較的」であって健常者からすればこれでも桁違いに危険です。これが「死ななくてはならない」となると危険度がさらに格段に跳ね上がります。

 何せ「死ぬこと」は既に決定事項であり、あとは「どうやって死ぬか?」を考えている段階だからです。

 ここまでくるともう「即入院&強制投薬治療」レベルの危険度です。


 そもそも「死にたい」と「死ななくてはならない」は一見似ているように見えますが実際にはほぼ別物なもので「死にたい」はある種ガス抜きであり、まだこの世に「ほんの少し」ではあるものの希望や未練は残っています。


 これが「死ななくてはならない」になるともはやそういった希望も未練も無く、自分の存在自体が地球上に存在するあらゆる生命体にとって迷惑であり、地球のためにも全生命のためにも、さらに言えばこの宇宙のためにも一刻も早く「あらゆる困難をすべて乗り越え」「想像を絶する何か、あるい想像すらできない恐ろしい何が待ち受けていようとも」死ななくてはならない。


 というある種の『絶対命令』や『正義感』にとらわれてしまいます。




 よく自殺完遂者は「死にたい」と周りに言ってから3ヶ月後か半年程度たって「もう大丈夫だよ」と安心させたタイミングで死ぬそうです。

 これも憶測ですが、「死にたい」という言葉で周りの人間がパニックを起こして「そんなこと言ってはいけません!」「もう2度と死にたいなんて思ってはいけません!」と説教してしまいその結果「家族にこんなにも迷惑をかけるゴミクズのカスはやっぱり死んだほうがいいんだ」と考えるようになり「死にたい」から「死ななくてはいけない」と思考が変わるようになるのだと思います。


 また「死ななくてはならない」と思ってしまうともう死ぬのを自分で止めたくなくなるし、誰にも止められてほしくないので止められる危険性を徹底的に下げるために周りの人間には「大丈夫だよ」と『ウソ』までつくのだと思います。



yomiドクター:「死にたい」と向き合う

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160921-OYTET50017/



 ここに「本当に自殺したい人は死にたいと言わない」を証明するデータが出ていますが、これは世間一般でいう「本当に自殺したい人」は「死にたい」のではなく「死ななくてはいけない」と本気で思っている、というのが抜けていると思います。

 この宇宙においてただ一つの救済である「死」を誰からも絶対に邪魔されたくないので、このケースでは『わざと』死ぬ気はないという『ウソをついた』んだと思います。

「死ななくてはならない」とまで行ってしまった人には「死」というのはこの宇宙に存在するただ一つの救済であり、自らの抱える問題を全て解決してくれる「ベストアンサー」なのです。

 なので「絶対」に、「何があって」も、「どんな困難や障害が待ち構えていよう」とも、「死ななくてはならない」と思っているのでしょう。


 私は1度(でおそらく済むだろう)この「死ななくてはいけない」まで行ってしまった経験があるので少しはわかります。今思えば「それだけの労力をかけてまで死ぬ必要ってあるの?」と言う位にまで徹底的にやるんですよね。

 幸い「死のうとしている自分」に気づけて会社を辞めて回避できたのですが1歩、いや半歩でも踏み間違えてしまったら、多分こうしてあなたに向かってメッセージを書くことはなかったでしょう。

 もし私があの時会社をバックレる形で辞めなければ、多分人を殺していたか自分を殺していたでしょう。それくらい切羽詰まった状況でした。


 それほどまでに「死ななくてはいけない」というのは強烈的なまでに「死ななくてはいけない」と思うものです。少なくともウソをついてまで「邪魔されたくない」「阻止されたくない」と思う位には、です。




【次回予告】


メンヘラに対しては最初に接するのであればとりあえず共感するだけで十分です。具体的な治療をしなくてもいいです。

なぜか? メンヘラはバッテリー女だからです。


第7話 「うつを抱えている人は無条件で「バッテリー女」扱いしたほうが良い」

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