『明日はきっと大空へ』


 どうしよう


 私は飛べない


 傷ついた


 疲れ果てた


 立ち上がることもできない





 悪魔が光と慰めの天使を装って囁きかける


 やめてしまいなさい


 投げ出してしまいなさい


 楽になりますよ


 誰もあなたの苦労なんか分かっちゃいないんですから


 そんなやつらのためにあなたがこれ以上苦しむことはありません


 ほっときなさいって


 なぁに 大して困りゃしませんよ


 あなた一人が消えたくらいで





 誰もいない


 何も見えない


 傷を癒すものはない


 道はどこにあるのか


 愛と真実の言葉はどこにあるのか





 不思議だね


 魔法をかけられたみたい


 考えるべきことはもっとあるはずなのに


 檻の一歩外には世界が広がっているのに


 目の前の不幸しか見えなくなる


 どんなに他の事を考えようと思っても


 まるで誰かが操作でもしているかのように


 初めの映像がクローズアップされる


 思考は檻の中で堂々巡りを続け


 気がつけば私はいつも同じ思いに囚われ続ける



 


 私は飛べない鳥


 翼をもぎ取られた鳥


 羽根をむしられた蝶


 もはや何の役にも立たず


 いずれ死にゆくのみ


 これじゃいけないという心の叫びが


 やがてこれでいいんだという声の大きさに負けてゆく


 私は仰向けにひっくり返って空を見た





 もうあの空を飛ぶことはない


 二度とあのはばたいた日々には戻れない


 静かに目を閉じる


 完全にあきらめて開き直ったつもりでいたのだけれど


 意思とは関係なく涙が一筋頬を伝った



 


 誰がお前をいらぬと言った


 誰がお前を価値なしと言った


 言ったその者は一体何者か




 神か


 違うのか


 それでは間違っているかもしれないわけだ


 お前は全面的に受け入れるのか


 神が言ったのでもない言葉をなぜ無条件で受け止める


 お前はいつからそんな信心深い者になった



 


 耳を傾けるな


 もちろん反省すべきはし己を常に向上させよ


 でももしお前の伸びるのをくじく者が現れたなら


 傷つきやすいお前の心に毒をすり込む者がいたなら


 手向かってはならない


 弁解してはならない


 受け入れなさい


 喜びなさい




 時としてお前が正しい場合もあろう


 明らかに相手が間違っている場合もあろう


 しかし受け止めなさい


 頭を下げなさい


 傷もしみもない汚れ無き宝石のような謙遜と柔和は


 自分をも人をも変革する力を持つ


 もし力には力をもって抵抗するならば


 例えあなたが正しくても


 滅びにいたる戦争が虚しく繰り返されるだけである

 


 


 もう一度翼をくださいますか


 もう一度飛びたいのです


 確かに羽根はもがれました


 翼は折れました


 しかし泥にまみれても底から這い上がる者に


 どんな絶望的な中でも太陽に顔を上げ続ける者に


 奇跡は起るのではないですか




 弱い私の心では悪い声がより増幅されて聞こえていた


 世の中で存在を許されずに存在しているものは何一つない


 あなたがいるのは


 あなたが必要だから


 あなたには使命があるから


 あなたが愛されているから

 


 


 飛びなさい


 翼が折れたら再び願い求めなさい


 何度でも


 あなたがあきらめない限り 死を自ら選ばない限り


 値なしに無制限にあなたをよみがえらせましょう


 不死鳥のように


 あなたはただ 求めなさい


 死の力を 悪魔の知恵と力を砕いておきます


 任せなさい それは私の仕事です




 さぁ


 明日が来ます


 心配しないでお休み


 眠りの世界にお行き 


 今日は悲しみに暮れたあなたも


 明日にはまた笑って世界に挑めるように


 私はあなたの心に種をまいておきました


 それはきっと花開き


 迷うあなたを導いてくれるでしょう

 



 翼が折れることを恐れないで


 翼を求めなくなることを恐れなさい




 世界中の人間があなたを責めても


 何人があなたを泣かせても


 私だけはいつでも


 どんな時でも


 あなたの味方


 だって


 あなたと私は


 ひとつなのだから

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