詩集『逢魔が刻』

『イエス・キリストへの手紙』

　いつもありがとうございます

　小さな私

　おこりんぼな私

　すぐに人と比較する私

　あなたはそんな私のことも大好きで

　いつもおそばにいてくださいます

　あなたはかつて私がどんなだったか

　ご存じのはず

　なぜお怒りにならないのですか

　なぜもっと厳しい罰をお与えにならないのですか

　石をお投げにならないのですか

　私は汚いのです

　お触れになってはいけません——

　あなたはそう言う私におかまいなしでしたね

　あなたは一体どういうお方ですか

　何が起こったのか分からない私は

　思わずあなたを見上げました

　私、生きていていいんですね

　幸せになっていいんですね

　生まれ変わるんですね

　もっと夢見ていいんですね

　あなたは物静かで

　たいがい黙って頷かれるだけですけど

　優しい目と

　口もとのほころぶのを見るだけで

　私の欲しい一番の答えになっています

　ご覧ください

　まだ危なっかしいところもありますけど

　私は元気になりました

　時々昔のダメな自分を思い出しますけど

　もう思い出す時間は日に日に減っています

　そのうちまったく思い出さなくなるでしょう

　ゆるされなくて当たり前のことをゆるしてくださってありがとう

　痛かったでしょうね

　辛かったでしょうね

　あなたを見上げるだけだった私には

　とても本当のところは分かりません

　学のないはしためには言葉でうまく言えませんが

　ただ、感謝しますと言う他ありません

　ただ、あなたの示した愛を忘れません、としか言えません

　あなたはいなくなりました

　けど　不思議なもので

　私は毎日　望めばいつもあなたにお会いできます

　手を伸ばせばいつもあなたはそこにいます

　そして会えばいつも言ってくださる言葉

　お前に会いたかった

　やっと私を呼んでくれた

　寂しかった

　だから嬉しいよ——

　私はそのお声が聞きたくて

　今日もひざまずいてあなたに祈ります

　あのね

　こんな私もちょっとだけ成長したのですよ

　泥だらけの私に救いの手を差し伸べてくださったあなた

　だから今度は私が

　誰かの手をつかもう、って

　どんな人でも

　何をしたとかも関係なく

　そうしたいんです

　こんな私でも出来ますかね？

　あなたが一緒なら

　きっと大丈夫ですよね

　きっと

　泣いてる誰かを連れてこれたら

　どうかその人の頭をなでてやってくださいね

　そして私にも

　よくやった、って優しく笑ってくださいね

　うん

　みんな家族

　うれしいなぁ

　えっ　私泣いてますか？

　何でだろうね

　嬉しいのにねぇ——