『Insomnia ~不眠~』
守りたい
でも守るって何だろう
強くないと守れない
じゃあ弱い私には守れないのか
力がないと群がる敵からあの人を守ってあげられない
じゃあ力のない私には守れないのか
私は考える
そんなはずはない
ただ力が強ければいいってもんじゃないだろう
そういう人しか愛する人を守れないなんてはずはない
そんなのおかしい
人間ならば誰でもできるはずであってほしい
じゃあ力って何だ
強さって何だ
考える
目がさえる
夜は更ける
私は非力だ
何の力もない
でも
守りたいという気持ちだけは有り余るほどある
あふれてあふれてしょうがない
狂ってしまいそうだ
苦痛よ 不幸よ 災難よ 涙よ
あの人を襲うはずだったすべてのものたち
私に降りかかれ
私がぜんぶ代わろう
どうかあの人にはただ幸せと安らぎが行きますように
たとえあの人に気付かれなくたっていい
私が盾になるんだ
全部防ぎきるんだ
指一本触れさせはしない
死よ
あの人を襲うならまず私を襲え
勝てるものなら私に勝ってみよ
私は眠ることなく
まどろむことなく
いつでもお前を見張っている
いよいよ目がさえる
私の挑発がいけなかったのか——
本当に色々と現れ私に襲い掛かってきた
魑魅魍魎 百鬼夜行
私の体を食いちぎる
死を覚悟した
痛くはない
悲しくも悔しくもない
祈ったことはただひとつ
どうか意識の途切れる最後の瞬間まで
あの人を守らせてください
あの人を愛させてください
愛したまま命を終わらせてください
バカめ
生きていてこそ愛も意味があるだろうに
死んだらおしまいじゃないか
もう会えないんだぞ
愛するも何もあったもんじゃないだろう
私は敵を睨んだ
あんたたちなんて怖くない
体を殺しても私の心をどうこうすることのできないやつら
私の魂に対しては何の力もないくせに
かわいそうに
あんたたちのほうが世界で一番弱いんだよ
哀れなやつら
今分かったよ
あんたたちを見て
本当に強いってどういうことなのか
真の強さって何なのか
本当の強さ
愛する者を守るために
自分が傷つくことを恐れないこと
人は誰でも自分がかわいい
そういう自己中心的な生き物だ
でも
誰かを心から愛した時
親になった時
その逆になれる
まったく新しい人間に生まれ変わることができる
どんなことでもしてあげたい
この体さえ 命さえ捧げたい
愛は損得勘定を破壊する
愛は弱き者を強者に 英雄に変える
そうか
弱くたって守れるんだ
ってか私って強かったんだ
私が強いんじゃなくって愛の力が偉大なんだね
自分の力じゃ何もできないけど
胸にこみ上げてくる熱い想いが
私に恐ろしいまでのエネルギーを注ぎ満たす
弱いほど強くなれるんだね
強いと思っていると自分より上の者に倒されるんだね
本当の強さは目に見えないところに現れるんだね——
強さは弱いところにこそ現れる
そこまで思考が及んだ時
満足した私にようやく眠気が襲ってきた
あれ
私が何となく思うに
今まで夢の中で考え事をしていたんだと思う
ということは
夢の中でさらに寝るってこと?
じゃあ私ってば
二回目覚めないといけない?
ああもう
よく分かんないよう
どうでもいいや
あの人への思いに胸を満たせればそれで——
あとのことは
どうでもいい
おやすみ
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