『My Pledge ~私の誓い~』
お元気ですか
その後おかわりありませんか
あなたが元気でしたら
それがなによりです
ええ 私のことですか?
いいんですよそんな 私のことなんて
相変わらず旅の途中です
まぁ、あっちへ行ったりこっちへ行ったり
フラフラとね
なかなか居所が定まらなくてね
ひとところに腰を落ち着けられなくてね
今じゃ元々どこに行きたかったのか
そこで何をしたかったのか
分からなくなるような有様なんです
ええ、気にしないでください
泣くのはいつものくせですから
ホラ オオカミ少年の話って知ってるでしょ?
嘘つき続けて最後に誰にも信じてもらえなくなった、って話
あれと同じようなものなんです
私 いつだって泣いているもんだから
ああ またこの子泣いてるわなんて感じで
最後には誰も気にとめてくれなくなりました
ずっと泣いてれば心から泣くこともあるんですけど
そういう本当のときに誰も慰めてくれません
まぁ 悪いのは私なんですけどね
慰めじゃなくってもいい
例え厳しい言葉でもいいから
誰かに私を見てほしい
静かだ
音もない
私は胸の底にずっと降りていく
暗い
だがそこには
本当の私が眠っている
その人の心はその人自身しか知らない
当たり前のことなんだけどそれは深いこと
もし自分の心が人に漏れるなんてことがあったら
私は気が狂ってしまうだろう
人に言えないような醜い私
恥ずかしい私
自分勝手な私
悪魔のような私
人に見られていないと思ってやったことの数々
人の心の中なんて知られたくないことの博物館のようなもの
痴態の展覧会のようなもの
いやよ、いやよ
見ないでえええええええ
のぞかないでえええええ
イヤアアアアアアアアアアアア
…………
あ、ごめんなさいね
私なんでこんな文章を書き出したんだっけ
思い出した
あなたと手紙で対話してるつもりになって
自分を慰めてたんだわ
そうそう
私が今頭の中で作ったあなた
お話の続き聞いてくれる?
だからね
人はね 自分の心の中なんて他人に知られたくないの
手に取るように読み取られたくなんかないの
私の心が他人に知られることがないことに感謝しなくちゃ
だって恥ずかしすぎる
知られないからこそ安心して生きられる
人前にも出られる
表面上は立派なことだって言える
なのにさ
私ったらムシがよすぎるんだろうな
心を人に知られたくないって思いながらさ
一方では誰かに全部分かってほしい、って思う自分がいるのよ
おかしいでしょ?
笑っちゃうでしょ?
私のいいところも 悪いところも
キレイな部分も 醜くて汚い部分も含めて
私自身が恥ずかしさで張り裂けてもいいから
全部を包み隠さず教えれる人が欲しい、って思うのよ
離れて分かった
私はあなたが好き
愛してる
あなたにならね
私の全部を話せる
私の心の風呂敷を全部広げてね
全部を見せられる
見てください
これが私という人間なんです
目を背けたくなったらゴメンナサイ
腐臭で鼻が曲がったらゴメンナサイ
この世に生まれてから今までの
私の見たもの 聞いたもの 感じたもの
してきたことのすべてを
もしあなたさえ受け入れてくれるなら
伝えましょう
好きなの
ああ 私ったら一体何を言ってるんだろ
自分勝手だよね
人間って不自由
心の一番奥底で思っているホンネ通りのことができない
現実の色々なものに縛られて
がんじがらめにされて
心にもないことを結果としての行動に出す
そしてしまいには
それが私の本当の思いだったと勘違いまでする
私はね ひとつ心に決めたの
私は歌を歌おう
命の歌
愛の歌
あなたを想う歌
傷だらけでも生き続ける、すべての愛すべき人々への歌
いつも
どんな時でも
うれしい言葉だけを口にしよう
いつも喜んでいよう
絶えず祈ろう
絶対に、泣き言なんていわない
絶対に、ああどうしてなどと言う言葉は使うまい
絶対に、もうイヤなんて言わない
絶対に、なんであの人はなんて言わない
絶対に、どうして分かってくれないのなんて言わない
ただあなたが好き
私はいつだってあなたの味方でいる
もし あなたにも泣きたい時があれば
泣いてもいいよ 私がそばにいてあげる
でも 涙枯れるまで泣いたらまた頑張るんだよ
いつかきっと
大丈夫だよ
あなたの日がきっと来る
そして 私の日もきっと来る
きっと
あらイヤだ
今まで書いたヤツ全部おじゃんだ
書きながら泣いちゃってね
涙でインクがにじんでね 字が判別できなくなった
便箋だってシワシワ
だって、こればかりはパソコンで打つよりもね
紙に書きたい、って思ったんだ
だって だって
私の大切な、大切な告白だったんだもん
あーあ
今まで書いたのもう一回書くのかぁ
タイヘンだ
いっそのこと口であなたに言えたら早いんだけどな
そういえばあなたは今どこかしら
私にもしくだらない自尊心がなくって
さらに私の背中に羽根でも生えて
あなたのいる場所が分かりさえすれば
きっとすぐにも飛んで行くことでしょうー
部屋の呼び鈴が鳴った
「誰かしら」
私を訪ねてくるものは滅多にいない
郵便や荷物でさえほとんど来たことがない
どうせセールスか何かの類だろう——
そう思って居留守を使った
それでも呼び鈴はしつこくなり続ける
「結構しつこいわね」
……待てよ?
私の胸はドキンドキン早鐘を打った
まさか……ね
まさか
まさか
でも
考えすぎて違ったらショックも大きい
でも
でもの気持ちがある限り
私は希望を捨てない
ドアを開けた
それは心のドアを開け広げたようなものだった
私はその胸に飛び込んだ
大海原に飛び込んだ
私 もう逃げないね
私の頭のてっぺんの毛から足のつま先まで
全部あなたのもの
私の心の世界のすべて隅々まで
全部あなたに話す
不自由なんてない
窮屈なんてない
気まずさなんてない
それが本当の自由
二つの魂がひとつになる、ということ
この手紙
今破きます
だって
彼が隣にいてね
今から全部話し聞いてくれるって
どんなに時間がかかってもいいって
僕は君自身にはなれないけど
限りなくそれに近く君の事知りたいって
だから紙に書かなくてもよくなった
ずっとずっと
一緒に
いようね
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