『目覚めて祈りつ』


 昨日は楽しい日だったかい?


 思い出に残る一日だったかい?


 何てことのない代わり映えしない一日だったかい?


 それとも 忘れてしまいたいような嫌な一日だったかい?


 生きているだけでも苦しくて


 呼吸していて自分という意識があるというだけで苦しくて


 酒で忘れるみたいに


 眠って死人のようになることでひと時でも現実を忘れたい


 そんな思いの人はいないかい?





 夜に見る夢


 私という人間は極彩色の無法地帯で


 時間と空間を超越したなんでもありの世界で


 僅かなひと時をその波のような空間にゆだねる


 毎晩 私たちはその世界に招かれるのに


 そこがどこだか分からない


 そこが何だか分からない


 なぜそんなものを見るのか分からない


 


 やぁ


 昨日は楽しかったかい?


 うん


 いっぱい遊んだよ


 ご飯お腹いっぱい食べたら疲れちゃった


 週末がね 誕生日なの


 お友達いっぱい呼ぶんだよ


 ママがパーティのお料理頑張って作ってくれるって


 早く朝が来ないかなぁ


 起きたら早く学校行ってお友達に会いたいなぁ


 そうかい


 それはよかった



 


 やぁ


 何だか寝苦しそうだね


 何よ しゃべりかけないでよ


 ただでさえ眠りが浅いのに起きちゃったらどうしてくれるのよ


 私はもうダメ


 そうだ


 折角話しかけてきてくれたんだから聞いてちょうだい


 私起きたくない


 いつまでも寝ていたい


 朝が来る


 そしたらあの現実というやつにまた向き合わないといけない


 自分が何のためにいるのか分からない


 そのヒントすらくれないあの不親切な世界にまた戻るんだ


 永遠に眠らせてくれなんて、ムシが良すぎる?




 おや 君もかい


 ああ もう私を呼び起こさないでよ


 例え夢の中でもモノを考えるのイヤ


 死にたい


 でも


 死んでもそれで終わりじゃなかった時のことを考えると


 また何らかの形で私という要素が残るのかもしれないと思うと


 簡単には死ねないの


 ゼッタイにきれいさっぱり消えてなくなるっていう保証はないでしょ?


 霊とかいうのがゼッタイいるという証明もないけど


 逆に完全にいないという証明もないでしょ?


 だから自殺なんてギャンブルはできない


 あたし昔っから賭け事とは勝負事は弱いんだから


 だからリスカして心を落ち着かせるのがせいぜい


 完璧に私が消えてなくなるには、どうしたらいいかな


 教えて欲しい



 


 どう思う?


 腐ってるな


 その子たちがじゃない その世界が


 世界が腐敗しているからその場にそぐうように生きる人間も汚れる


 聞こえないか?


 人間どもの心の渇きから来る叫びを


 恵まれて見えていても心の底では暗い穴がポッカリ


 もはや彼らは我らの世界でしか自己を解き放てない


 ここがひと時のくつろぎの場でなく


 現実世界よりこちらのほうにいたいなどと願う人間


 長い時間の流れの中でそういう人間もまれにいたが


 この時代になって急に増えだした


 何たることだ



 


 みんな


 こういう経験はないかい?


 目覚めてすぐ


 自分がどこの誰なのか


 仕事は何で何を楽しみに生きている人間なのか一瞬思い出せない


 極端な話自分の年齢や性別すら意識に上ってこない


 でも時間がたてば何となく自分が戻ってくる


 ああ そうだった


 私は何がしで確か仕事は 歳は そしてここは私の家





 


 現実世界の仮面を脱げば


 肉体を離れ一切の余分な記憶を脱ぎ捨てれば


 人は皆 同じ根源に還る同じ魂


 人よ


 手を取り合え


 手をつなげ


 平和の子となれ 平和を作り出せ


 誤解してもらっては困る


 この世界は現実世界と表裏一体 そのまま反映している


 そちらに平和と平安がなければ


 こちらの世界だって同じこと


 そうすればあなたは夢の中でも来るべき世界でも


 あなたは時を過ごすことが苦痛ではなくなる


 夢の世界もあの世も現実世界からの逃避場ではない


 そこをよくするために現実の生があるのだ


 だから死ぬな


 生きろ


 無様でも何かにすがらねばならぬのなら すがってでも生きよ


 だから手を取り合えと言ったのだ







 負けるな


 心配するな


 必ず出会える


 生きることへの真実に


 そのためにすべてを捨てることが生きることだと感じれる何かに


 誰かに


 求めても得られないのは求め方を間違うからだ


 惑わされるな


 目を凝らせば 耳を澄ませば


 世にあふれかえっている多くの間違いの中に


 キラッと光るものは見つかる




 眠りにたゆとう子たちよ


 私はあなたがたに姿を現すことはないが


 そしてあなたがたも目覚めれば私のことを忘れるが


 いつでも応援しているよ




 おや


 もう朝かい


 邪魔したね


 話し聞かせてくれてありがとう


 じゃあしばしのお別れだ

 



 また 夢で

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