詩集『逢魔が刻』

『手紙』

　お元気ですか

　この世界はどうですか

　楽しいですか

　苦しいですか

　あなたの涙は私に届いています

　あなたの叫びはいつも私の胸に響いてきます

　あなたを送り出したことを後悔はしていません

　信じています

　でも、時々不安になる弱さをゆるしてくださいね

　あなたが何もできない時

　目の前が闇だけになった時

　何もしてやれません

　胸が痛みます

　あなたには力があります

　ないように思うかもしれないけれど

　あるのです

　ヒントは世界にあふれています

　見つけてください

　見方ひとつ、気持ちひとつで世界は変わります

　負けないでください

　ともすれば、あなたの心の目を曇らせ

　一切の真実から目をそらせようとし

　見なくてよいものに目を向けさせ

　自分の世界を有限なものにさせる罠が、この世界にはたくさんあります

　我が子よ

　優しい子

　愛しい子

　どんなにあなたを想っても足りない

　あなたを幸せにしてあげたい

　悲しみも苦しみも痛みも

　不安も恨みも劣等感も

　その他あなたを苦しめるものすべてから

　解き放ってあげたい

　子よ

　私の与えるものは時として

　あなたが望んでいるものとは違うかもしれません

　いいえ

　むしろあなたが望まないものでさえあるかもしれません

　でも、これだけは覚えておいて

　子が食べ物を求めるのに、土を与える親はいません

　子が飲み物を求めるのに、泥水を与える親はいません

　私の与えるすべては、あなたのためなのです

　例えその時は悲しい出来事のように思えても

　いつかきっと、分かる日がきます　

　だから闇に飲み込まれないで

　不信に負けないで

　絶望に打ち勝って

　愛を夢だと遠ざけないで

　おとぎ話だと笑わないで

　最後まで、走りぬいてください

　私は両手を広げてあなたを待っています

　ゴールしたなら、あなたのすべての傷を癒しましょう

　あなたの目から涙をすべて拭い去りましょう

　例え何があってもあなたを離さない

　一瞬たりともあなたを忘れない

　この想い

　届くでしょうか

　私の想うことはあなたのことばかりです

　我が子よ

　いつか帰ってきてください

　待っています

　いつまでも

　さようなら

　また、お便りします