『光あるうちに』
来ないで
光あるうちに光の中を歩いて
闇に来るのは簡単
人は皆 自分の醜さが汚れが明らかになるのを恐れ
光に来ようとしない
かえって光を憎むの
滅びに至る門は入りやすく
命に至る門は見つけにくい
いじめた子が自殺した
マンガ読んで笑ってる時に その知らせを聞いたの
遺書があって
私の名前がそこにあった
え
何で
最初に思ったのは
何であれくらいで死ぬのよ、だった
そのすぐ後で
私のすべてが灰色に変わった
命って何
どうしてこんなに胸が苦しいの
学校中大騒ぎになった
私は、クラスに居場所がなくなった
未成年だから実名報道はされなかった
でも地元で分かる人は分かる
学校の子は皆知っている
街を歩くと、皆が噂する
皆が振り向く 指を差す
弟がいじめられて帰って来る
私のせい
父さんが職を失った
形は依願退職だが私には分かる
私のせい
逃げるように荷物をまとめて引っ越した
私のせい
母さんは頬骨にひびが入るまで私を殴った
私はあえて逃げなかった 避けなかった
その後で母さんは私を抱いて一晩中泣いた
何てことしてくれたの
それでも、お前は私の子だよって
一生をかけて守るって
二度と這い上がれない闇
夢にあの子の顔を見る
目玉が飛び出てる
舌が、あり得ない長さで口から突き出てる
地面から浮いた足先から、糞尿が伝う
死
罪
考えたこともなかったそのやっかいな概念に対して
何の内容もないバカなガキが向き合わなければならなくなってしまった
私は夜中に目覚めては、洗面所で吐いた
鉄の壁を蹴ってごらん
痛いのは自分の足のほう
人を傷付ける者はみなこれと同じ
私は、刀をこぶしで殴りつけたのと同じだ
こぶしは裂けて血飛沫が上がった
私ね
日本中を回りたい
いいえ 世界中を回りたい
人をいじめる子すべてに叫んで回りたい
私のようになっちゃだめ
こっちに来ちゃだめだってば
あなたはまだ戻れる
まだ光に引き返せる
その叫びだけが
私に出来るせめてものつぐない
例え私が結婚できて夫ができても
家庭を持って子どもが生まれても
あの子を死なせた影は一生私から離れないだろう
心の底からの幸せなど一生感じることはないだろう
残りの人生はただ償うためだけにある
十字架を背負い乾いた心を引きずって生きる
私に課せられたただ死ぬよりも辛い罰
人を傷付けることは、自分を傷付けることと同じなんだよ
何も感じない人は、ただ認識できてないだけなんだよ
確実に、自分の人生がゲロとクソ同様になっていくよ
死んだら私のこの苦しみは終わるだろうか
それとも、永遠だろうか
赦してくれ、なんてムシのいいことは言わない
でも
私にも光、見えるかな
ちょっと浴びれるだけでもいい
もう一度 何も知らなかったあの頃に戻りたい
死ぬまでに一日でも いや数時間でもいいから
こないだ夢を見た
あの子は初めて死体じゃなかった
夢の中でね
私はあの子と手をつないで歩いたよ
会話もなくただひたすら歩いたの
ごめんねぇ
本当にごめんねぇ
言っても遅いんだけどね
それでも、他に言いようがないんだもん
あの子は、ちょっとだけ笑ってくれたよ
赦されたとは思わない
あの子はただ、私が自分で命を絶たずに生きていくだけの力を残してくれただけ
取り返しのつかないことをした私への
神様の最後のプレゼント
知らずに人を傷付ける者たちよ
まだ光あるうちに
光の中を歩みなさい
闇を知らずに人生を終えることができるように
私は、あなたのために
いつも陰ながら祈っています
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます