詩集『逢魔が刻』

『よい旅路を』

　そうですか

　あなたは、これから地上に行くのですね

　おめでとう　

　とりあえず、そう言わせてください

　あなたがどう育てられ、どんな愛を受け、どんな人生を歩むのか

　私には分かりません　

　でも、やっぱりおめでとうと言わせてください

　何があろうと、どんな選択の末の結果だろうと

　あなたは、あなたなのだから

　私にとっても、あなたの代わりはいないのです

　信じてください

　あなたは、愛されていると

　親に１０人の子がいたとして、そのうちの１人がいなくなったら

　嘆き悲しまないでしょうか

　９人いるからいいや、などと思うでしょうか

　だから、私は送り出すすべての子らについて

　いつも心を痛め、涙をもって見つめています

　あなたも、大事な私の子

　私はあなたを忘れはしない

　見捨てはしない

　一人にはしない

　そのようなことがないように祈っていますが

　もし、不幸な出来事で早くにこちらへ戻ってきてしまうようなことがあるなら

　私は両手を広げて、あなたを迎えましょう

　そして抱いてあなたが泣き止むまで離さないでしょう

　あなたがいいというまで、子守唄を耳元で歌いましょう

　そして、あなたが眠るまでそばにいましょう

　どうか、世があなたを光で包みますように

　私がすべての人に与えた、その人にしかない光を

　世が認めて受け入れ、伸ばしてくれますように

　どうか、世があなたを憎みませんように

　そして、あなたが世を憎みませんように

　誰一人自分を愛してくれる者がいないと思っても

　あなたを世に送り出した私がいます

　最後には、私が責任を持ちます

　もう、出発の時間ですね

　一度地に下れば、あなたはここでの記憶も私のことも忘れます

　すべてまっさらな状態から、あなたは世界を通して学び、自分を作ります

　どうか、幼い時の純真さと素直さをいつまでも持ち続ける人であれ

　恐れず、惑わず

　泣いても笑い、倒れても立ち上がり

　絶望しても希望のともし火を絶やすことなく

　大勢でなくてもいい、誰か一人でもいいから　

　誰かのために輝く光となってください

　それでは、しばしのお別れです

　最後に、もう一度あなたを抱かせてください

　恥ずかしがらないで

　次にあなたを迎えられるのはいつか、分からないのですから

　もう、これ以上何も言うことはありません

　また会う日まで

　ちょっと待って

　やっぱり、最後にもうひとつ言わせてくださいね

　愛してます——

　よい旅路を

　行ってらっしゃい