混浴デッド・オア・アライブ
『何回でも言えるけど、私は陽太君が大好きです』
ひまりの言葉はいつも鼓膜より心に直接響いてくる
顔を上に向けると俯いているひまりと視線が重なりあう その黒く綺麗な目は微かに潤んでいた
口の中が渇く、返し方が分からないけど何か言わなくちゃ
「知ってる」
「……」
「ひまりが俺を好きなのは知ってるから」
上に手を伸ばし艶やかな黒髪に優しく触れると ひまりは儚げな微笑みを浮かべたが その目からは涙が零れ落ちた
「知ってないよ」
「……」
「私は『大好きです』って言ったんだもん」
『俺も』って言ってしまいたい 言ってしまえばひまりは喜んでくれるかも知れないが あかりはどうなるんだろう?
「いっそ陽太君を嫌いになれたら良いな。そしたら、こんなに辛い想いもしなくてすむのに」
零れ落ちる涙を袖で拭うひまりに『俺も大好きだから』って言いたいのに言葉に出来ない
「昨日のバス停でも言ったけど 私の気持ちは何処に向ければ良いの? 」
「ごめん……」
「そんな謝罪の言葉を言わせたくて聞いてるんじゃないよ」
「……」
両手で顔を覆ってから、ひまりは顔を上に向けた
「あぁ もう! 本当はこんな雰囲気になりたくて 鴨川まで来た訳じゃないのに」
今度は覗き込む様に見つめられ 顔を両手で挟まれた
「ねぇ 陽太君。この世で1番重い物って分かる? 」
重い物か、なんだろ?
「分かんない」
「この世で1番重い物は……愛してない女性の体なんだって」
「あはは 経験ねーけど 確かに重そう」
「私、もしかして 今、そんな感じになってない? 大丈夫かなぁ」
俺の顔を挟んでいた両手で今度は自分の赤らめた顔を挟むひまり
あざとい気もするが可愛い
「『氷の美少女』何て言われてるけど笑っちゃうよね」
「それは周りが勝手に言ってるだけで、俺は最初から思ってねぇよ」
「『美少女』の部分が? 」
「『氷の』部分だ」
「知ってるよ」
ひまりはクスッと笑ったあと、はぁ~ っと深くため息を吐いた
「さっきまで、陽太君はあかりと2人で行動してたでしょ? 凄い気になって気になって仕方なかったんだ」
「別に神社にお参りして飯食っただけだ」
「そうかも知れないけど もしあかりと陽太君が付き合ったら、私はどちらも失うんだ。って思ったら凄い焦っちゃったよ」
むむむ なるほど
あかりと付き合ったら ひまりは俺とあかりを失う
ひまりと付き合ったら あかりは俺とひまりを失う
悲しみや寂しさは倍なのか
「陽太くん。戻ろう」
「そうだな」
3人が上手く行く関係ってないのか?
俺がどちらかと付き合ったとしても、双子は双子で良い関係性のまま。みたいな
それは欲張りなのか?
ギブアンドテイクで何かしら失わきゃいけないのか?
俺たちはあかりと海斗と合流し2日目に泊まる旅館へと向かった。
旅館の部屋に入ると和室だからか、木の匂いがやけに落ち着く
この2日目の旅館は高級旅館であり、その売りは何と言っても大小様々な温泉である。その各温泉も男女で入れる時間が分かれているらしい
俺は部屋で少し寛いでから温泉に入ろうと思っていたが
「男子は時間的に夕飯食ってから風呂に入れるってさ」
海斗がスマホを弄りながら教えてくれた
「了解! 今日は歩き疲れたから、本当はもう入りたいんだけど」
「まぁ しゃーない。俺は飯食ってから、行くとこあるから先に入ってて良いぞ」
「行くとこって何処だよ? 」
「俺モテるからさ。女子のお部屋に呼ばれてるんだよね」
ニヤニヤしちゃって。ったく 女子の部屋に行って先生に見付かっても知らねーぞ
夕飯は高級旅館らしく懐石料理が豪勢だったが、質より量の男子高校生には物足りない
飯も食ったし温泉行こうかな
「海斗 温泉行ってくるわ」
「今の時間で入れる温泉は『藤の湯』ってとこだぞ」
「了解」
「『藤の湯』だから間違うなよ」
海斗は女子の部屋に行けるのが嬉しいのか口許が綻んでいた
藤の湯、藤の湯、っとここだな
暖簾をくぐり脱衣所に向かったが誰もいない
おかしいな? 男子はみんなもう入ったのか?
まぁ 伸び伸び入れるから良いけど
脱衣所からガラス戸を開けて中に入ると
石に覆われた広い円形の温泉は乳白色をしていた
少し遠くを見ようとするだけで、湯煙が立ち込め見えなくなってしまう
この広い温泉を独り占めとか気持ち良いいぃぃ
今なら泳いでも良いよね? 俺しかいないし
めちゃくちゃクロールや背泳ぎをした
温泉最高だぜ!
ガラガラガラガラ
「うおぉぉ ひまりちゃん! 誰もいないよ2人占めだよ」
「こら あかり 走らないの。ちゃんと体を洗ってから入るんだよ」
「すごーい 赤ピが言ってた通り、この時間は誰もいないんだね」
海斗! あいつはめやがったな!!
どうしよう? 今のところ2人は俺の存在に気付いてない……
しかし ここには隠れる所もないし 温泉に入ってこられたらバレる!
と 取りあえず円形の真ん中にある柱の影に隠れて 2人が体を洗ってる隙をみて潜水して上がり ここを出るしかねー 幸い湯煙が凄いので遠くは目に入らないだろう
どっぽ~ん
柱の影から様子見するとあかりが早くも泳いでらっしゃる!
「あかり! 行儀悪いよ 誰もいなくても温泉で泳ぐなんて小学生低学年だよ!」
「えー 誰もいないし良いじゃん。ひまりちゃんは真面目だなぁ」
くっ あかりが早くも温泉に入って来るもんで
出るタイミングがなくなってしまった!
隙を窺いつつ今は我慢するしかねぇか!
ひまりも温泉に入ってきたのか お湯の流れが少し変わった
「ひまりちゃん。相変わらずおっきいぃ」
「ちょっと 何処触ってるのよ」
何処触ってんすか? 気になるんですが
「良いじゃん。減るもんじゃないし 色々と挟めそうだよね。谷間に指入れてみて良い? 」
「もう バカな事言ってないで、しっかり肩まで浸かりなさい 」
アバババ 今はエロい事を考えるな俺! 下半身の血流を良くすると大変な事になる!
政治と宗教について考えよう!! 世界で起こる悲惨な戦争何て ほぼ政治と宗教絡みだ
「あかりの指がポヨンポヨンに埋め込まれていくうぅぅ」
そう政治も宗教も皆ポヨンポヨンに埋め込まれて行けば良いぃぃ
「ねぇねぇ ひまりちゃん。そのまま おっぱいを両手でギューってやって、あかりの指を挟んでよ」
そう! 両手でギューってなった所に戦争なんて挟んでしまえばいぃぃ
おっぱいの前には政治も宗教も戦争も平伏すのだ
平和だ平和 おっぱい1つで平和になる
女性は偉大なり!!
「ひまりちゃん。今日、夕方に合流してから陽太と何処に行ったの? 」
って、話題の落差が激しい!
こういう話にもなりそうだったから早く出たかったのに
もう訳が分かんなくて、のぼせそうだよ……
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