第6話 ひまりと遊園地
翌日のバイト終わりに ひまりから、あかりが病院に戻ったことをLAINEで知った だんだんと外出許可も出るようになるらしく 今度は3人一緒に出掛けたいと
あかりは俺とひまりが付き合ってることを知らない 知ったらどんな顔をするだろうか
知った上で俺たちは昔みたいに仲良く遊べるのか
公園で俺たちに追い付きたい 置いていかないで。と泣きながら訴えていた あかりの気持ちを考えれば考えるほど不安が押し寄せ 思わずため息が漏れた
「どした? スマホみてから、でっけーため息ついて 彼女さんと喧嘩か? 俺で良ければ話聞くぞ、若者よ」
隣のロッカーで着替えていた優也さんが、心配してくれたのか声を掛けてくれた
優也さんは 誰もが知ってる名門大学二回生の20歳で、180センチを超える高身長にジャニーズ系の顔をしているから、バイト先のファミレスでは、優也さん目当てに若い女の子が来ることも多い
「優也さん……恋愛って難しいっす」
「そりゃあな だから楽しいんじゃん」
バイトの制服から私服に着替える優也さん シンプルなデニムに白Tシャツだけなのに やたらとお洒落に見えてしまうからズルい
「よし 終わり時間が一緒なのも珍しいし コーヒーくらい奢ってやっから 外の喫煙所まで付き合え」
「あざっす ペットボトルのコーヒーでお願いしゃっす」
すぐ裏手にあるコンビニでアイスコーヒーを買い、備え付けられた灰皿の前に移動した
夜21時を過ぎたにも関わらず 昼間アスファルトにこもっていた熱気のせいなのか 空気は
「で 本当に喧嘩したの? 」
「いえ 彼女とは順調ですよ ただ……」
あかりの事や俺たちの関係を話した 優也さんは電子タバコを吹かしながらも 黙って聞いててくれた
「……だから、妹に俺は姉と付き合ってんだ。って言った方が良いのか分からなくて」
「そっか。それもヘビーだな 妹さんからしたら、2人が幼馴染み以上の関係になってるの嫌だろ。小さい頃から3人だったんだからさ」
「そうっすよね……でも、言わないのも隠してる感じがして嫌で」
「姉の方は? 陽太の彼女さんはどう思ってんだ? 」
ひまりか 確かに、ひまりはどう考えてんだろ あかりの事しか考えてなかった
打ち明けた方が良いと思ってんのかな?
「話を聞いといてなんだが 彼女さんとどうするか話した方が良いだろう 俺的には言っても言わなくても 後に一悶着はありそうだが」
「なんで そういう事を言うんすか? ならない様にどうすれば良いか聞いたんすけど」
「わりぃ 俺もそんな恋愛はした事ないから答えが出せないわ まっ 悩んで泣く結果になろうと 悩んで喜ぶ結果になろうと 青春だろ良い経験じゃん バレない浮気のやり方とかナンパの仕方なら教えられるけど」
この人 最低だイケメンだからって何でも無罪になると思うなよ! 話すんじゃなかった 時間の無駄だ無駄 帰ろう
「まっ 俺が言えんのは、三角関係で誰一人傷付かないってのは無理だし、優しい嘘だろうが恋愛ではつくな。その優しい嘘がバレた時、嘘をつかれた方は想像以上に苦しむだろうから」
「先輩の忠告 しかと心得ました お疲れっす」
「お疲れさん 気いつけてな!」
帰り道 余っているペットボトルのコーヒーを口に含む
そうだ明後日の待ち合わせ時間とか決めとこう
ポケットからスマホを取り出す 液晶画面には俺とひまりが笑顔で映っていた
昔なら俺とひまりの間には必ずと言って良いほど あかりがいた……
とりあえず 『水曜は10時には迎いに行く』っと送信
すぐに既読に変わり
『電車だから10時10分までに駅に集合でいいよ』
方向一緒何だから わざわざ別に行くこともねーだろ とも思ったが『了解!』とだけ返した
※※※※
絶好の遊園地日和なのか 絶望の遊園地日和なのか
上を向けば雲ひとつないスカイブルー!! ペンキで塗りたくっても こんな気持ちいい程に青くはならねーだろっ てくらいのスカイブルー だが暑さは驚異の最高予想気温は37度!!
不急の用事以外は外出を控えた方が良いレベルだよ!
水族館の方が絶対に良いが ひまりは魚が苦手なんだよなぁ 料理とかでは平気なのに動いてる魚は苦手とかって珍しい気もするが
早めに着いたので駅中に入り 改札前の柱に寄り掛かかった
夏休みだからか学生っぽい人たちが多い だが ひまりより可愛い子は もちろん見付けられなかった
「陽太君 ごめんね 待った? 」
後ろから声を掛けられ振り向いた
「おぉ 待った待った 待ちすぎ」
うおぉぉぉ 天使が降臨したのか! 目映いばかりじゃ!! 有り体に言えば雑誌から飛び出してきたんじゃあぁぁ!!
「どうかな? こういう系統の服って初めてだから サプライズで見てほしくて」
デニムショートパンツに有名スポーツブランドのロゴが大きく入った大きめのTシャツ しかもポニーテールにベースボールキャップそしてスニーカー
スポーティーだし、 なんと生足全開!!
ひまりが、ベースボールキャップとスニーカー履いてるのなんて初めて見た
「へ 変かな? 動きやすい格好をしてきたんだけど……」
首を壊れた扇風機みたいに左右に振りまくった
「ぜんっぜん 変じゃねーよ ありったけの誉め言葉をまとめて一言で言えば 『MKMS』だ」
「『MKMS』?」
「めちゃくちゃ可愛くて悶え死んだ」
「死んじゃダメだよ これから遊園地何だから」
クスッと笑う ひまり
やべっ また悶え死んだ……
慣れっことは言え 駅中でも電車に乗ってても 周りの視線がひまりに向いているのが良く分かる
こういうのって ひまり自身も気付いてんのかな?
「ねっ 遊園地で乗りたいものは? 陽太君は絶叫系苦手だったよね? 」
「得意ではないな 俺はコーヒーカップとか観覧車とか 何かほのぼのしてるのが良いや」
「なにそれ お爺ちゃんみたい 今日は記念日をすっぽかされたお詫びに私に付き合って貰うわよ」
「すっぽかしたつもりはねーけど、了解です。とことん付き合わさせて頂きます」
って ハナッから こんなのに乗ると仰るのか!!
行列に並ぶ俺の目の前には高速でグルングルンと回りに回る 日本で一番の最高時速を叩き出すジェットコースター
なんだよ もはや殺害兵器だろ! 物理法則とか無視しちゃってない? 万有引力とか遠心力って知ってる?
あんなスピードでジェットコースターがレールから飛び出して I Can Fly しない?
「もしかして怖い?」
「あん こわかねーよ こんなもん目を瞑っときゃ良いんだろ」
「それ怖がってるじゃん」
「ちげーよ 目を瞑る事で、風をより感じたいんだよ」
並んでいる人がジェットコースターに乗り込む度に 少しずつ前へと進む あんなのに乗りながら楽しんで手を上げてる奴らの気がしれん 大袈裟だが死刑囚の気分だ……あの棺桶に俺は乗るのか 何で隣にいるひまりは こんなに平気そうなの
順番来るの早すぎだから もっと遅くて良いし なんなら来なくて良いんだけど
「さっ 次、私たちだよ 意外と早く乗れて良かったね」
「お おぅ」
「あれ? 私たち もしかしたら」
最悪だよ! 順番的に俺ら先頭じゃねーか! 付いてねー
「先頭だよ 私たち付いてるね 」
君とはさっきから意見が合わないようだ
ジェットコースターに乗り込むが 肩と安全バーに隙間が出来てないか 腰のベルトは緩んでないかが異常に気になって仕方がない
カタカタと不気味な音を立てジェットコースターはゆっくりと動き出した
お父様お母様 先立つ不幸をお許し下さい……
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