ミステリーオブ京都
いつもの恋愛同好会の部屋、ホワイトボードには
『修学旅行について』
と書かれてある
あかりは指し棒でボードを叩くと
「えぇ 良いですかぁ 明日から待ちに待った修学旅行です! ワクワクして眠れなかったとかないように」
紅茶にスコーンと、優雅な
放課後を過ごしている
ひまりはジト目全開になっている
「昨日から眠れずにいるのはあかりでしょ? 目の下にクマ出来てるよ」
「だって、あかりに取っては人生初の修学旅行なんだもん」
「気持ちは分かるけど、妹ちゃん。しっかり寝ないと旅行中に眠くなっちゃうよ」
「その時は陽太の腕の中で眠るから大丈夫」
ニコッとあどけない笑顔で腕に絡み付いて来るあかり
「ダメ! 陽太君は予約入ってるんだから」
逆側の腕に絡み付いて来るひまり
互いに引っ張るもんだから
両腕が上がったり下がったりシーソーかな……
「最近おかしいとは思ってたけど、陽太とお姉様って付き合ってたよね? 」
疑惑の眼差しを向けてくる海斗
こいつなら信用出来るし
話しても良いかな
取りあえずひまりを見ると
首を縦にも横にも振らないので俺に任せたのだろう
「実は色々あって、別れた……距離を置いてるって言った方が良いのかな」
「いや めちゃくちゃ距離近いじゃん。いまも密着してるし」
「そうなんだけど、何て言えば良いかわかんねー」
「ふ~ん。だから、妹ちゃんも陽太を狙ってるわけね」
複雑な表情のひまりと真逆に 相変わらずのニコニコ顔で頷くあかり
こうなってるのも俺の行いなんだろうな……
俺とひまりはお互い好き同士なのは間違いない
ただ、あかりを昏睡状態にさせといて ひまりと付き合える程メンタルは強くない
俺的に言ってしまえば
あかりが俺を諦めてくれれば願ったりなんだが
6年前から俺の事を好きだったらしいし 今も好意を隠そうともせずに見せてくる
絶妙と言うか微妙なバランスで成り立っている宙ぶらりんな俺たちだ。
「いけない。もう、こんな時間 お母さんから買い物頼まれてたんだ。あかり帰るよ」
時計を見るなりハッとした表情であかりの手を引っ張るひまり
「私たち先帰るね。明日からの修学旅行も宜しくね」
「陽太パイバイ ついでに赤ピも」
手を振ると部屋を出ていった。
「お前たちに何があったか知らないけど、大変だな」
「まぁな……」
「どっちか選んでもどっちかは傷付く。幼馴染みで双子だから余計にダメージもデカイだろうな」
「……はぁ 一夫多妻制にならねぇかなあぁぁぁ」
いたっ! 海斗に頭を叩かれた
「陽太のくせに生意気だぞ! 」
「重々承知しております」
本気で怒っていた目をしていた海斗 こういうとこは優也さんに似ている
どうしたもんかなぁ テーブルに突っ伏した……後2・3年あかりが目覚めるのが遅かったら、おそらくひまりと将来について本気で結婚を意識していただろう
逆に2・3年あかりが目覚めるのが早かったら、しっかりと2人と向き合って、どちらと付き合うか答えを出していただろう
贅沢すぎる悩みな分
答えが出せない…………
※※※※
「おは。妹ちゃん。ちゃんと、眠れ……てないみたいだな」
俺とツインズは既に新幹線に乗り込んでいたが
遅れて海斗がやってきたので、2人席を回して向い合わせで座れる様にした
「赤ピ……ガイドブックが眠らせてくれなかった……自由行動の行きたい場所を絞らせてくれないんだよぉ 恐るべし京都」
目を充血させながら今もガイドブックを離さずにいるあかり
「一応は回る場所や順番は決めといたけど、あかりはガイドブックに付箋とか貼りすぎだから。私が持ってるから寝てなさい」
「自由行動って明日と明後日じゃん。今日の夜、みんなで考えれば良い。ひまりが言ってくれた様に 京都に着くまで二時間半はあるから寝てろ」
新幹線がゆっくりと動き出した。週間予報では毎日晴れマークだったので
雨の心配はなさそうだ
学生最後の修学旅行、少しでも楽しくしたい
京都駅に着いてからバスに乗り込み初日の泊まるホテルまで移動する
9月も中旬になるが残暑が厳しい
「今さら京都かよ。って思ってたけど、着いてみるとやっぱワクワクすんな」
「そうだな。やっぱ雰囲気が違うからな」
バスの中から京都の街並みを見る海斗が興奮気味に話す
俺たちの学園はクラス事で修学旅行の行き先を決められるので
大体はシンガポールや台湾など海外になるが
生徒の半分と担任の花森ちゃんの強い推しにより
学年で唯一国内の京都になったのだ
ホテルのエントランスで花森ちゃんからの説明を聞いて、一旦部屋に荷物を置くことになった
部屋は2人組なので俺は海斗と ひまりはあかりと。ペアになっている
部屋に入るなりホテル独特の乾いた空気と抗菌された匂いを感じた
「今が16時だろ。温泉は17~18時 夕飯が18時30から。で、22時までは自由か」
「だな。夕飯食べたら、ひまりとあかりと一緒に明日の予定でも確認するか」
「あぁ 温泉まで時間あるし、ホテルの中に何あるか見ていこうぜ」
適当にお土産屋等を見て回ってから、温泉に浸かったがホテルの温泉なので、掛け流しではないらしい
明日からの旅館の温泉が楽しみだ
ありがちな女風呂を覗く様な強者もおらず
平和に温泉タイムも終了を迎えた……はずだった
事件は夕食時に起こった。と言うより事件は温泉タイムで起こっていた。
クラスメイト全員で夕飯を楽しく囲んでいた時である
「おーい 全部屋回るのも面倒だし、食べながらで良いから聞いてくれ」
花森ちゃんが立ち上がると 皆は手は休めずに耳を傾けた
「男子は関係ないと思うが女風呂の方で下着を忘れた者がいる。貸し切り時間だったから、私たち以外には有り得んだろ」
男子からはどよめきが上がり 女子は女子同士で目配せして(私じゃないよ)と確認しているようだ
「心当たりのある者は私が預かってるから取りに来るように」
「因みにどんな下着ですか? 」
女子の1人が聞くと一呼吸間があってから 花森ちゃんは口を開いた
「紐パンとブラのセットだ」
うおおぉー。と、きやあぁ。
歓声と悲鳴が合わさった
男子側のボルテージは特に凄いものがあり
あちこちから
「おいおい紐パンって攻めてるなぁ 誰だよ? うちのクラスに着てるやついんのかよ!」
「勝負パンツってやつじゃね? マジかぁ やべー 修学旅行を狙ってか! 興奮すんだけど」
むむむ 確かに興奮する! っじゃやなくて、けしからん。修学旅行だぞ! 学を修めるんだぞ!
まったく 最近の女子高生は紐パン……紐……パン? 一応聞いてみるか。あくまでも一応な
「な 何色ですか? 」
「陽太! スケベだスケベ」
「あいつ色を気にしてんぞ! 」
男子に突っ込まれてしまい 女子からは批難めいた視線を浴びる
「ち 違うんだ色が分かれば俺の想像が当たってるかどうか」
「美馬くん最低! 」
「それな! 何を想像すんだっつーの! ひまりさんもこんな彼氏で大変だねぇ……」
って、思いっきり味噌汁をひたすらグルグル箸で回しているが……ひまり? まさかお前なのか? 本当にお前のなのか?
あんなスッカスカな防御力皆無で、ある意味攻撃力と素早さに全振りしたものを装備していたと
ひまりは完全におかしかった。器用に箸を使い豆腐を1㎝の立方体に刻んでいる その隣では瞬きしながらニヤつくあかりの姿が目に入った
やっぱ あいつが何か企んだのか?
何をしたんだ
夕飯もそこそこに切り上げ自由時間を使い俺の部屋へ集まった
俺の頭には紐パンしか入ってなかった
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