鴨川ビタースウィート

 飯も食べ終わり、ひまりと海斗は祇園商店街に向かうとの事で 俺とあかりも合流する事にした


 京阪線で祇園四条駅を降りると 舞子さんが歩いてたり昔ながらの町並みにタイムスリップした感覚を味わう



「すごおぉい 舞子はんどすえ! 」

「お前 木刀振り回すな! 俺が預かる。それに、バカにしてると思われるから普通に話せ! 」

「分かったゼヨ……」

「それも引っ張りすぎだ! 」


 それにしても和風な雑貨を扱ってるお店にお土産屋が多いな


「あっ 陽太 ここ『あぶらとり紙』で有名なお店だよぉ」

「『よーじや』かぁ アニメの『ロウきゅーぶ』でも出てきたなぁ」


 決してロリコンでもないが ここにあの小学生たちが来てたかと思うと、まったく感慨深いぜ!


「『幼児屋』なのに『老朽部』とか、ちょーウケるぅぅ」

「別にウケねーし、わざわざ難しく変換するな!取りあえずひまり達と合流しねーとだな」


 って、あいつらは何処にいるんだ?

 LAINE送っても既読にならねーし 信号を待ってる間に電話してみるか



「え? あれ 海斗だよ」


 あかりの指差した方に目をやると 交差点の向こうには舞子さんと自撮りしている海斗の姿が見えた


「良いなぁ あかりも舞子さんと写真取りたい! 」

「バカ 走るなって 」


 青信号になると同時に海斗に一目散に駆け寄るあかり。

 俺も後を追おうとすると路地裏から驚いた様な女性の声が聞こえてきた


 ひまりっぽい声だけど まさかな……あかりは海斗と一緒に舞子さんと話してるのが見えるし念には念をで行ってみるか


 路地裏に入ると道が細く

 人気もなかった

 少し進むと犬の鳴き声が聞こえ


「ひまり! 」

「よ 陽太くーん た 助けてよ~ ワンちゃんがずっと追っ掛けて来るんだけど」


 細い路地裏の行き止まりの所で ひまりは柴犬に吠えられている

 柴犬の尻尾フリフリの様子からは構って欲しいだけなんだろーが ひまりからしたら最悪だろうな


 木刀を向けながら柴犬に少しずつ近付くと珍しいのか 、木刀の先にじゃれ始めたので そのまま木刀を引き寄せ、しゃがみ込み柴犬の体を撫でた

 こんなに柴犬可愛いのになぁ 顔を両手で挟みつぶらな瞳を見据えると


「お前 悪気はなかったんだろーけど、あのお姉さん。ワンちゃんが苦手なんだよ。ごめんな」


 柴犬は理解したのか木刀に飽きたのか クゥンと悲しそうな鳴き声とともに去っていった


「大丈夫か? 」

「ありがとう! 本当に怖かったよ~」


 抱き付いてくるひまりからは、相変わらず良い匂いと胸の感触が伝わってくる

 良くやった柴犬!


「大袈裟だな。あの犬も悪気はなかったんだろうけど」

「そうだとしても怖いものは怖いもん」

「まぁ 苦手なもんは誰でもあるからな」


 俺から離れると木刀に視線を向けキョトン顔のひまり


「これは、あかりが買ったんだぞ! 」

「ラッキーアイテムだ! 朝の占いで、魚座のラッキーアイテムは木刀だったんだよ」


 あかりの言っていた事は本当だったのかよ!


「特にあかりはラッキーな事何てなかったぞ」

「そう? 私は『陽太君。助けて』って時に、本当に陽太君が助けに来てくれたからラッキーだったけどな」


 少し照れた様に上目遣いに髪を耳に掛けるひまり

 俺の好きな仕草だと知っててやってるのを分かってはいるが

『好きなものは好きなんだもん』

 やられる度にドキッとしてしまう


「海斗君と離れちゃったけど あかりは? 」

「あぁ あいつらは合流してるよ。俺らも行くか……どうした? 」


 歩こうとすると袖を引っ張られた


「今まであかりと一緒だったんだから、今からは私とデートしよ。ダ ダメかな? 」


 くっ 美少女に言われて こんなん断れる男いねーだろ!


「ダメじゃない。海斗にLAINEしとくか」

「やった! 色々お店あるし見て回ろうか? 」


 むむむ やはりあかりの時には感じられない 甘酸っぱい胸キュンがする

 俺たちは、さっき見た『よーじ屋』であぶらとり紙を買ったり

『祇園まるん』と言うお店で売っている 色取り取りの可愛らしい京飴を買ったりと買い物を十分に堪能した


「大分、買ったね」

「家族の土産も買ったからな。さてと、合流するか」


 俺が歩こうとしても立ち止まったまま動かないひまり


「どうした? 日も暮れたし戻ろうぜ」

「待って……もう少しだけ もう少しだけ2人だけでいたい」


 何か今日のひまりはいつもと違う気がする

 こんなに主張してくることは珍しいな


「いいけど、何処か行きたいのか? 」

「ここから歩いて5分位で鴨川に行けるみたいだから、行ってみたい」

「了解、じゃ 行くか。袋貸して、俺が持つから」

「良いよ。私が買ったお土産屋だし」


 ひまりの持っていた袋を奪い、空いてる左手を差し出した


「手、繋げないから」

「じゃ 腕組みしちゃう」

「そ それは恥ずかしい……」

「私は恥ずかしくないけどな」


 俺の手を握り締めいたずらっ子の様な笑顔を浮かべるひまり


 手汗がヤバイかも 手汗を拭く為に手を一旦離そうとすると


「離しちゃダメ。またワンちゃんに狙われちゃうよ」


 強く握り返してくるひまりは、俺の腕を巻き取るように自分の体へと引き寄せた……手の先だけじゃなく半身全部が密着する


 手から伝わる温もりと緊張は比例するみたいだ

 俺の鼓動もダイレクトにひまりに伝わってそうで余計に恥ずかしい


 鴨川につくと土手沿いにはカップルが沢山いた

 空いてる所を見つけ腰を下ろす


「ねっ 膝枕してあげようか? 」


 俺の顔を覗き込んでくるひまり

 周りには他に人もいるので恥ずかしがってると


「もう日も落ちて暗いから分からないよ」


 そう言うと繋いでた手を俺の頭に優しく触れ

 太ももへと誘ってくれた

 世界が変わったように視界が縦から横になる甘くてほろ苦い……



「何回でも言えるけど、私は陽太君が大好きです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る