第二章完 檸檬ポップ
くっ 相変わらず柔らかい唇なんだけど
何かいつもと違う気がする
こ これは!?
何度か軽いキスを繰り返していると ひまりの舌が入ってくる
優しくて暖かかくて包み込まれる感覚は舌にも体にも力が入らない
ただ もっとひまりを味わいたかった 漏れる吐息もフレグランスの匂いも俺の中に取り込みたくなる
絡め合う舌からはレモンとアルコール?の味がした……
「よう……君、気持ち……」
息が出来なかったからか、苦しそうに眉根を寄せるひまりの顔に欲情する 守りたい気持ちと汚したい気持ちがごっちゃになる
「もう ダメ 私の全部……あげる」
吐息とともに漏れる台詞にも欲情する ひまりの全部が欲しい もっともっと深いところで繋がりたい
ただ……これは違うだろ おそらくアレだ
何かこう キスして接近して気付いたが……
ひまり酒くせーー!!
「よ よう……た君 あげ△⭐️⚪️⭐️⚪️」
だあぁぁぁ こんなのいらねーけど、抱き締められてる分 近距離で貰ってしまった
マーライオンの如く盛大に吐くひまり……
「だ 大丈夫か? 」
「うぅ 苦しいよぉ 頭も痛くなってきたし鼓動が凄い早い」
しかもバニラアイスでも食ってたのか ゲロの香りがレモンとほのかにバニラ何だけど
ゲロまでひまりらしい
「立てるか? 」
ひまりから離れると、お越し上げトイレまで連れていった
便器に向かって丸める背中を擦る
ひとしきり吐いて落ち着いたみたいだが、あまり動きたくないらしいので
トイレにひまりを残し 電気をつけてゲロ塗れの布団を片付けた
枕元の缶に目をやると案の定レモンジュースだと思ってたのは、アルコール度数高めの酎ハイだった
ボケ! 高校生の冷蔵庫からはアルコール抜いとけよ!
幸い布団は1つしか敷いてないし、もう1つを押し入れから出して敷きなおす
「おーい ひまり大丈夫か? 」
「だ 大丈夫……」
はぁ~ めちゃくちゃ良い感じだったのに
初めてのディープキスをしちゃいましたよ!
レモンとバニラとゲロの思い出になりそうだけど
口の中をすすいだ ひまりはゾンビの様に這いながら布団に入ってしまった
立ち尽くす俺はどうしようか? 別にそこまで寒くないから 毛布だけあれば 雑魚寝でも大丈夫そうだけど
「陽太君」
ん? ひまりに視線を落とすと 目を瞑りながらハグを求めるかの様に 両腕だけを布団から俺に伸ばしていた
「おいで もう大丈夫。今度は私がよしよし。してあげる」
あざと可愛いすぎて思わず笑みがこぼれる
「お お邪魔しま~す」
布団に入ると横向きになるひまり そのまま強く抱き締められるので爪が背中に当たる
でも何故か心地良く背中は痛痒かった
「私が吐いた事は朝には忘れている事。誓えますか? 」
相変わらず目を瞑りながら ひまりは俺の答えを待つ
「聞いてる? 誓えますか? 」
「誓います」
「宜しい……」
そのまま可愛い寝息を立て始めた
睫毛が長いし鼻筋も通ってるし間違いなく美形だ
何でこんな可愛い子が幼馴染みとは言え 俺に惚れるのだろうか不思議でならない
舌も脳も心も とろけるような感触がまだ残っているうちに眠りにつきたいのに、頭の片隅にはあかりの笑顔がちらつく……
「おは……ご……ます」
囁くような声が聞こえてきた
「おはよ……ござ……います」
なんだ? もう朝なのか?
「おはようございます! 」
「うわぁ」
「早く起きろよ! 」
「海斗かよ」
「『海斗かよ』じゃねーよ」
あれ? 半身が軽い……ひまりがいなくなってる
シーツに手を当てるとも少し温もりが残ってたので 出たばかりだろう
「お前さ 酒まで飲んだ上に避妊しなかったの? 初めての失敗談でありがちって言えばありがちだけど」
「は? 」
海斗の指差す方向に目を擦りながら向けると
酎ハイに未開封のコンドーム
「バカ! 夕べは何もしてねーよ」
「へ? 俺、入ってきた時に お姉さまは、凄い顔赤らめて布団から飛び起きると猛ダッシュで出ていったからさ。お姉さまの初めてを貰ったのかと」
「まぁ 貰ったには貰ったが……あまり嬉しくないのを」
頭の上に?がいくつも浮かんでそうな海斗はそのままコンドーム拾い上げた
「まさか使い方とかタイミング分からないとか言わないよな? 」
思わず顔を横に背けてしまった
「マジかぁ? めちゃくちゃ大事な事でもあるんだぞ」
ため息をつくと包装紙を破る海斗
「これな裏か表か確認しないと着け辛いから気をつけろよ。太さや長さが足りないけど」
言いながらコンドームの先に息をフッと吹き掛け 海斗は実演するかの様に自分の中指に被せはじめた
手際の良さと興味本位、それに後学の為だと思い凝視した
「こんな感じ。これ手間取ってると一気に雰囲気最悪になるからな。ブラを取るときも手間取るなよ」
「へいへい。まぁ 当分先だろうけどな」
そろそろ着替えないと集合時間に間に合わねぇ
背中に手を回し服を上に引っ張る 半分まで脱いだ所で海斗がちょっかいを掛けてくる
「ブラ取るときは前からの方が格好良いぞ」
「おい バカ! 顔が服で隠れて見えねーから 変なことすんな! 」
「こういう感じに片手は耳とか弄りながら 空いた片手を背中に回し」
海斗が抱き着いてくるが 脱いでいた服が邪魔でなにも出来ない
突然ドアが開いたかと思うも
「高坂! 美馬! お前たち冷蔵庫の酒を飲んだ……」
「え? 花森ちゃん? 」
海斗の言葉に耳を疑うが最悪だ どうなってるかは見えないが 花森ちゃんが入ってきたらしい
ようやく海斗が離れたので 服を着直す
「お前たちの関係に口を出す気はないが、アルコールを摂取したのは見逃せない」
ちょっと待ってくれ……
この状況を整理しよう 部屋にはレモン酎ハイに封が開けられたコンドーム
そして半裸の俺に抱き付いていた海斗
状況証拠でアウト!!!
夕べもヤッてたくせに 朝になったらなったで
「いやいや 俺は花森ちゃん一途だし、陽太にも男にも興味ないよ」
「俺の方が興味ないわ! 」
「そんなにお互いを貶すな。カムフラージュで、鈴影ひまりと付き合おうが、チャラさを見せ付けようが秘密は守る。が」
花森ちゃんの目付きが鋭くなる
「アルコール摂取のルール違反と、そのなんだ……不純異性じゃないか、不純同性交遊で罰を与える。これは男子同士の恋愛に対してではないからな、あくまでも修学旅行中のあの、そのアレだ」
コンドームに目をやる花森ちゃん
完全に誤解されてるじゃん!!
まだひまりといる所を見られてたり、クラスメイトに見られるよりは良いけど最悪なのは変わりない
「分かったよ 花森ちゃん。罰ってなに? 」
「取りあえず 今日の自由行動は2人はなしだ。後は修学旅行が終わってから正式な罰を言い渡す。あと、高坂は爪を切った方が良い」
そう言い残すも花森ちゃんは出ていった
背中の痕はひまりのセクシーな爪によるものだと、俺の名誉の為に言いたかった。
部屋には俺と海斗のため息が響く
「お前の悪ふざけのせいだぞ」
「ええ!2人っきりにさせたのはいも……俺のせいかもだけど、酒なんて飲ませんなよ! 酒飲ませてヤろうとかないわ! 見損なうレベル」
「炭酸のレモンジュースだと思ったんだよ」
「缶に書いてあるじゃん! アルコール度数とか。修学旅行最終日が弾け飛んだよ! 学生最後なのに」
暫く言い合いしていたが 空しくなるだけだった
こうして俺の修学旅行最終日は海斗と2人で反省文を書いて終わりを告げた
ひまりに対する想いはシュワシュワと沫のように涌き出てくるが1つ1つ必死に潰していった
肉弾戦で来られると理性より本能が勝ってしまうから 何とか対策を考えねば
第二章 修学旅行編 完
第三章 文化祭編に続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます