『ドキッとするジェスチャー』

「さすが理事長の子どもの鈴影ツインズ。同好会にも関わらず。こんな良い部屋が使えるとはな」

「もとは生徒会が使ってたんだけど、今年から学園内の4階に移ったから、離れにある、この部屋は使わなくなったんだってさ」


 ここは我ら『恋愛同好会』が活動と言う名の暇潰しを今日から行う場所である

 校舎から少し離れた独立された建物

 まっ白な壁にオレンジの屋根、庭もありお花や草木たちがキュートな家。

 あかり曰く『絵本から飛び出てきたお家』らしい


 中は謎にキッチンが付いている1Kで

 長さが違うテーブルが4つとソファ。ホワイトボード等が備え付けてあった


「ってか勢いで楽しそうだから、俺も入ったけど恋愛同好会。って、何をすれば良いんだ? 」

「知らねぇよ あかりが言い出したんだから」

「で その妹ちゃんは、お姉様と何処に行ったんだ」

「『同好会には飲み物とお菓子が必要だよねぇ』言いながら、ひまりと出てった」


 あかりの考えは正直言うと

 良く分からないが

 こういうのも良いな

 とは思った。

 ラノベ何かでも『同好会』

 とかは有りがちだし

 慣れてないからかも知れないが この学園から独立された建物がワクワクさせる



「たっだいまーー」

「ごめんね 遅くなって あかりが、あれもこれも欲しがっちゃうから」

「ひまりちゃんだって クッションとか電気ポットとか迷ってたじゃん」


 鈴影ツインズの両手には、いくつものビニール袋が垂れ下がっていた


「うへぇ 重かったっしょ? 言ってくれれば俺も手伝ったのに」

「赤ピは授業サボってたから 先生に呼び出しされてたじゃんかぁ」


 あかりは赤髪ピアスの海斗を『赤ピ』と呼んでいる


 一通り荷物を整理すると

 ひまりが両手をパンと

 鳴らした


「これでようやく 落ち着けるわね まずは何か飲みましょう」


 放課後ティータイムが始まった


「では 飲み物も行き届いた事だしぃ 『恋愛同好会会長』の、このあかりから一言」

「妹ちゃんが会長かよ」

「赤ピ! 言い出したのはあかりだぁ では『恋愛同好会』は いかにして」


 あかりは言葉を区切ると

 コホンとわざとらしく

 咳払いした


「『想い人』や『美馬陽太』を攻略していくかを科学的かつ心理的それでいて物理的に統計学的も参考に いや社会的もかな、あと学術的アプローチ。を取り入れながら落とす同好会だー」

「妹ちゃん。一言で『個人的』って言葉で済むから」

「よし 書記は赤ピに任せよう ひまりちゃんは経理。陽太は副会長」


 書記と経理は何となく分かるが副会長は何をするんだ?


「では 第一回 『男子高校生を虜にさせちゃう仕草』についてえぇぇ! ほら 赤ピ ホワイトボードに書いて」


 海斗は頭をかきながらも

 マジックペンでホワイトボードにタイトルを書いていった


「はい ひまりちゃんから」


 両手でお上品にカップを

 持とうとしていた ひまりの手が止まったかと思うと


「え? あの……その」


 伏し目がちにひまりは

 垂れた長く艶やかな黒髪を耳に掛けた


「ハイそれえぇ! 」


 海斗 声がでけー

 マジックペンでひまりを

 指差す海斗


「今の髪を耳に掛ける仕草! 美少女と黒髪にプラスして恥じらい。耳や首が露出するから男子生徒の9割はドキッとするね。さすがはお姉様 さすおね!」


 ムッとしながら今度は

 あかりが仕草を真似するが


「妹ちゃんはショートボブの外ハネだから意味ねーから 武田鉄矢の物真似かと思うわ これだから妹は これいも! 」

「むぅ~ 陽太ーー 赤ピがバカにしてくるぅ」

「あかりに出来て、ひまりに出来ない仕草もあるよ……」


 多分な。今は上手く言えなくてすまん……


「どんな仕草があるって言うのさぁ」


 くっ 逃げ切れなかったか

 あかりに似合う仕草か

 やはり見た目を友好活用

 しないとだよな


「あかり。今から言う仕草をしてくれ。 まずは片手の甲を腰に当てて片足を前に出します。あっ 出した足の方はかかとをつけて、爪先は立てて」


 言われた通りに動くあかりこの時点で可愛らしい


「で、舌をペロッと横に出してくれ! 」


う~ん ナイスなミルキー娘の誕生だ!

思わず頭をナデナデしてしまった。


「おぉ 妹ちゃん! 『ママの味』的な可愛さだよ」


 一瞬固まったあかりだが


「やってられるかーー あかりのやりたい仕草とは何か違うのおぉぉぉ」

「あ あかり! 落ち着いて。ここは男性陣の意見を聞いてみれば良いのよ」


 男性陣の意見ねぇ

 海斗を見ると 答える気が満々な顔をしていた


「えっと 俺はやっぱ雌豹のポーズとか こう胸を寄せて」

「陽太君は? 陽太君はどういう仕草が好きなの? 」

「あ あれ? お お姉様 もっと好きな仕草あるから聞きたくないですか? 」

「ねぇ 陽太君は? 」


 完璧にひまりに無視されて海斗である

 これだから氷の美少女言われるんだよ

 って、俺の好きな仕草ねぇ

 あるにはあるが


「何かさ。好きな仕草ってより、誰がやるかじゃね? 例えば さっきの髪を耳に掛ける仕草だって、ひまり以外がやっても 俺はそこまで良いとは思わない。ひまりだから良かったんだよ」

「ズルくね? それにそんな事を言ったら『恋愛同好会』の意味ないじゃん」

「そうなんだけどさ。小手先のテクニックより、その人自身が現れてる仕草の方が可愛いって思えるだろ? あかりだって『頬をプクっとさせたり』『美味しく食べる』とかは、あかりがやるから可愛いんだよ」


 あれ? また俺 何かやっちゃいました?


 異様にシーンと静まり返る部室

 鈴影ツインズは顔を真っ赤にさせながら

 両手で顔を仰ぎ始めた


「陽太が鈴影ツインズからモテる理由が分かった気がする 勝負してないのに敗北感がするぜ」


 海斗はホワイトボードに

『結局、仕草より やる人が重要! 小手先のテクニックより自分らしい内面性を見せていけ。これが贈る言葉!』


 と書き足した。

 武田鉄矢 引っ張りすぎだろ


 こうして第一回 恋愛同好会は、何のまとまりもなく終わりを告げたのである

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