学園修学旅行編
2学期スタート ツインズのターン
はぁ 朝起きてから何回、溜め息を吐いたのだろうか
この日が来てほしくなかった 夏休み明け初日 快晴にも関わらず心は晴れない 憂鬱な気分で家を出た
2日前にひまりと別れたという事実
メンタルは弱くない方だけど、あかりを6年間も昏睡状態にさせといて
その姉と、のうのうと付き合ってられる程のメンタルは持ち合わせていない
俺の勝手で別れたのに、ひまりは何も言わないし、何も聞いてこなかった
ひまりにとって俺はその程度の男だったのか
今でも大好きだけどそれ以上に自分が許せない
あかりには何て言っていいか、どう付き合っていけば良いか分からない
俺を事故から守ったせいで6年遅れの時間を過ごしているのに、しかもその事実を俺は忘れていた上に嘘までついた
思えば思う程、鈴影ツインズには酷い事をしている
足取りが重い 予定より10分も過ぎてしまった……
出てくるのはため息とネガティブな言葉だけだ
自分では楽天家だと思っていたが以外とナイーブなのかも
はぁ ついに 着いてしまった
目の前には白く大きいドア
くそっ 何故か威圧される 呼び鈴を人差し指で そ~っと押してみる
あれ? 出てこない…… もう1度押してみる
呼び鈴はドアの向こうから聞こえて来るので、故障ではないらしい
出てこないな……なんだ 緊張して損したわ
俺が予定より遅れたから 先に行っちゃったのかな
ビビらせやがって この呼び鈴め!
憎さのあまり思いっきり連打したった!!
「遅いからテラスで待ってたんだけど、陽太君 うちの呼び鈴壊さないでね」
「うおぉ ゲームやってる時の、陽太の連打だ! かっくいー」
小首を傾げながらグーにした右手を口元に当て微笑むひまり。親指を真っ直ぐと上に立てながら目を丸くさせるあかり
くっ 鈴影ツインズ可愛ぜ
こんちくしょー
「お おはようございます」
何て顔して良いかが分からない
「おはよう ギリギリのバスになっちゃうから急ぎましょう」
「陽太が遅いからー あかりの初登校なのに」
2人は小走りに前を行くので慌てて追いかけた
なんか、いつもと変わらない気がするんだが……
バスに乗り込むと一番後ろが珍しく空いていたので、3人並んで座るとあかりがこっちを見てきた
「陽太は制服なんだね? 」
「あぁ 私服だと毎日着る服が面倒くせーから」
「エヘヘ 靴も新しいのだし、あかり服可愛いいっしょ? 」
「あぁ 似合ってて、可愛い」
今日は始業式とHRしかないので、あかりは上がベージュのレースでスカートがネイビーの切替ドレスだった。制服のような落ちついた色のドレスは最初に見たときから可愛いとは思っていた。
「ひまりちゃん。陽太があかりの事を可愛って」
「そう 良かったわね。陽太君 わ 私は? 」
「え? 」
ひまりはひまりで淡い緑のトップスとグレーのチェックスカートを合わせており、大人っぽいけど、ウエストリボンのスカートが女の子らしく可愛い。
ってか、何着ても可愛い。しか出てこねーよ!
「『え?』 ってだけ?」
「あ あぁ 大人っぽいけど、そのリボンとか女の子らしくて可愛い」
「ひまりちゃん。最近はどんどん、おっとなー。になってくね」
なんだ? 強烈な違和感を感じるのだが
2日前の出来事ってなかった事になってる?
そんな訳はねーよな。何でこんなに通常運転なの?
「ようたー ひまりちゃんとあかり どっちが可愛い? 」
「え? 」
「だ・か・ら どっちが可愛い? 」
「いや どっちって どっちもどっちで選べねぇって」
「むぅ~ 優柔不断な男はモテないよぉ」
プク顔したあかりの隣でクスクス笑ってるひまり
「あかり、陽太君が困ってるよ」
「陽太がはっきりしないからだよぉ。ひまりちゃんと別れた上に、あかりとの付き合いもなしになっちゃったんだよぉ」
ひまりは別れたことをあかりに喋ったのか!?
「陽太! 良い? 陽太はモテないの。だから、もう1度ひまりちゃんと付き合うか、あかりと付き合うか。でしか青春出来ないんだよぉ」
「……どういう事だよ? 」
「だから、陽太はモテないの」
「いや そこの悲しい事実じゃねーよ。って、そこも大事何だが、後半だよ後半! 究極の二者択一をさらっと、迫られた様な気がする」
あかりは恋愛対象には思えないが、昏睡状態にさせた負い目もある。
ひまりは今でも好きだが、別れを俺から言った以上はプライドが許さねー。
「あっ あかり! 次だよ! 次で降りるよ」
「うおぉぉ ボタン連打だ!! 陽太には負けない! 」
降車ボタン連打してんじゃねーよ! 子どもそのままじゃねーか! しかも俺の話は無視されたらしい……
学園前のバス停を降りると、多くの学生が駆け足で正門を目指している
「初日から遅刻とかは認めませんからね。急いでください」
やべっ 担任の花森ちゃんが時計を見てるってことは……
「あかり ひまり 急ぐぞ! 」
「ようたぁ 靴が新しいのだから走りにくいよぉ」
だーー 面倒くせーな! あかりをそのままお姫様抱っこすると、ジト目全開で見てくるひまり……
「陽太君。ごめん 私も今日初めて履くヒールなんだ」
なんなんだよ! ジト目すら可愛いじゃねーかよ!!
「あかり 俺の首にしっかり腕回して掴んどけ! ひまり 右手出せ 引っ張ってやっから! 」
ぐうおぉぉ あかりを片腕で抱っこし、左手でひまりの手を握り締め 正門目掛けて走った!
くっ 美少女2人を守れるなんて、幸せだね! これが青春と言うのなら 悪くはねーかもな青春とやらも!!
って、あかりを支える右腕がジンジンしてきたし あと5歩くらいで正門だけど、もう無理……
はぁ 門が閉まる! 花森ちゃん。俺たちの担任だろ? そんな無慈悲な顔しないでくれよ
片腕抱っこしていた右腕を少し伸ばし首を曲げた。
あかりはリハビリもしてたし、元の運動神経が抜群だからやる価値はある!
「あかり俺の肩からジャンプしろ!」
器用に俺の肩に回るとあかりはジャンプした
と、同時に左腕も思いっきり前に振って、握っていたひまりの手を離した。反動で俺は地面に倒れ込んだが視線の先には着地を綺麗に決めるあかりと、推進力のお陰で門を通過したひまり。
よし ギリギリで間に合った!
あれ? 門が閉まらないんですが、なぜ……
「はい2人はセーフ。お前はアウトな。で、 美馬よ。生徒がギリギリで入ってくるのに門を閉めると思うか? 危ないだろ。ちゃんと確認して閉めるに決まっている」
ガラガラガラガラ ガシャン
「ってことで、お前は後で職員室に来い 初日から遅刻はお前だけだ」
「ですよね~」
腰に手を当て呆れたように見下ろすジャージ姿の花森ちゃん。
なんだよぉ そしたら我慢して走り抜ければ俺もセーフだったんじゃんか!
「まっ 女の子2人を守ろうとした努力だけは褒めてやる」
「あざっす……」
閉まった門の向こうでは、あかりはケラケラと笑っているが、ひまりは心配そうに俺を見ていたので、軽く片手を上げて見送った。
はぁ やっぱ 溜め息しか出てきませんわ……
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