ひまりルーム①

 ふえぇぇん


 なんでー? なんでなんで?


 あの おっきいワンちゃん

 わたしの事だけねらってくるのー?

ここって、あたしのおうちの庭だよね?


 どこに逃げても追ってくるし 、私の事を食べようとしてるのね

 逃げなきゃ 食べられちゃう


 逃げないと モフモフにされちゃうよぉ


「いたっ! 」


 こわくて足がうまく動かずに 転んでしまいました……


 ふわあぁぁ ど どうしよう

 ワンちゃんは長い舌を出して いまにも 飛びかかってきそうです

 あかり! わたし 食べられちゃうけど お父さんとお母さんをよろしくね

 つぎはワンちゃんよりもつよく生まれてきますよーに


 わたしは食べられるのを、かくごして目をつむりお祈りをしました


「うおぉぉーー あっちいけーーー」


 え? なに とつぜん 男の子が、おおきい声をだしながらちかづいてくる? そ~っと、うす目にするとワンちゃんめがけて男の子は はしっていきます おっきいワンちゃんがにげていく……


「だいじょうぶ? セバスチャンもあそんでほしかっただけだよ」


 たとうとしても力がはいりません

 ペタンとお尻をじめんにつけていると


「手 つかまって」


 男の子は手をだしてくれました

 わたしは手をつかみました


「せーの! 」

「キャッ」


 男の子はキラキラかがやいて見えました。

 男の子のニッコリとしたえがおをみると 食べられちゃうとおもったきょうふから

 なぜかあんしんして、なみだがポロポロ落ちてしまいました


「どこかいたいの? もうだいじょうぶだよ」


 男の子はわたしのあたまをなでてくれました。

 その手は とてもあたたかく きもちのいいものでした。


 男の子はニッコリとしたまま 手をにぎってひっぱってくれました

 こころがキュウッとなって ドキドキしました

 おうじさまのとうじょうに、こころが口からでてきそうです


「あぁ ひまりちゃん! ようたと手つないでるー 」


 え? なになに? あかりはもう この男の子とお友だちなの?


「ようた……君」

「そ ボクはミマヨウタだよ ひまりちゃん。って言うの? あかりちゃんとソックリだけど、かみがきれー」


 ひまり。とよばれてドキドキがおおきくなりました。

 かみがきれー。と言われて ずっとのばすことにきめました。


 ようた……そのなまえはとくべつな なまえのような気がしました


 さんさいのわたしはこの日 ようた君に ひとめぼれをしました……



 ※※※※※


(陽太君ともっと仲良くなれますように 陽太君ともっと仲良くなれますように……)


 私はいま、学校の高学年で噂になっていることを実行しています

 5年2組の教室でも休憩中に女子と話していました。


「ひまりちゃんは、こういうの興味ないよね? 大人だし」

「え えぇ 面白そうだとは思いますが。神頼みより自分を信じますから」

「さすが ひまりちゃん! ひまりちゃんだから言える台詞だよ」


 クラスメイトにおもわず、思ってもないことを言ってしまった……

 それ、凄い興味あります! そんな事で成就されるなら、何万回でも私はやります!

 普段の私のクールキャラが言動と行動を制限させる


 神社でお参りをして、その神社近くの公園で告白をする。 たったこれだけで想いが通じるなら 私は365日 雨にも風にも それこそ夏の暑さにも、大きい犬が待ち伏せていようが負けず お参り出来ます

 やっぱり犬はなしかな……


 誰にも見られたくないから、こうして早朝に神社にお参りし 一度家に戻ってから双子の妹のあかりと陽太君と通学をする

 いつも私と陽太君の間には、あかりがいる。


 だから私はたまに妄想で陽太君と2人だけでお喋りをするんだ

 不気味だとは思うけど、なかなか2人でお話し出来る事もないし


 ある夏の日 あかりに言われました


「ひまりちゃん。朝早くから、いつも何処に行って何してるの? 」


 やはり毎日お参りしているとバレてしまいますね。あかりとは昔からの約束でお互いに嘘は絶対に付かない事にしてました。

 なので、聞かれたときも正直に


「神社にお参りしてるよ」


 と、だけ答えました。そんなに興味がなかったのか、あかりは、ふ~ん。とだけ言うと それ以上は聞いて来ませんでした。

 この時にもし、恋愛成就の神社で『誰を想ってお参りしてるの? 』

 と、聞かれていたら私は正直に陽太君。と、答えられたのかな?


 誰とでもすぐに仲良くなれるあかりが羨ましく、陽太君とも3歳の頃から私よりも仲が良く『陽太』と呼び捨てするあかりに 少し嫉妬してしまいます。そして何よりもクラスメイトが噂していたあかりと陽太くんの事に……


 一発逆転を掛けたこのお参りが。秘めた私の想いがいつかは成功すれば良いな。なんて乙女的な事を考えてます

 みんなには絶対に言えないし、絶対に知られたくないけど……わたしは変わらず陽太君が大好きです



……それは昨日、別れを告げられてからも変わることはない。

私は夏休み最終日あかりに宣言をした。

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