美少女彼女の双子の仲良かった美幼女妹が6年ぶりに昏睡状態から目覚めたので俺は取り合われる事になりました(双子とは幼馴染み)

毒壇場クルース

　ステージ上の真ん中から、ミスコンの為に用意された真っ直ぐに伸びたランウェイを出場者が次々に歩く。が、観客の視線は後ろに控えてる来栖に集中してるのが見てとれた

　来栖以外の出場者は空気を感じ取ったのか 先程までと違い顔が引きつっている 可愛いので普段からチヤホヤされてきたからか プライドが高そうだけど そのプライドが崩されたなか ランウェイを歩くのは辛いだろうな

　来栖の番になりスポットライトを浴びながら歩き始める 顔を上げ前を見据える来栖の目は力強く、あかりに化粧をしてもらったからか、大人っぽさとあどけなさが混じり合うビジュアルも観客を惹き付けるには十分過ぎるほどだ

　視線が来栖から離れる事を許さず強制的に目が追ってしまう

　ひまりの時に海斗やクラスメイトが言っていたが、通常の人とは違う 芸術を眺めている様な独特なオーラが来栖にもあるのだろう

　ひまりとは幼馴染みだから俺は感じなかったが 今、来栖を見ていると理解できる 近付きがたい触れるのを躊躇われる様な自分とは違う世界の住人

　神様からの贈り物のような……

　さっきまでは出場者の友達やクラスメイトからの応援や歓声がチラホラと聞こえてはいたが 来栖が歩くと一斉に息を飲むのが分かる 体育館を包む異様な空気

　ランウェイの先まで歩くと来栖は見渡す様に視線を流してから口角を上げて微笑んだ

　背中に小さい黒い翼があれば不敵な小悪魔の様にも見えるし 白い翼があれば純真無垢な天使にも見える笑顔に女子生徒からの感嘆の溜め息と羨望の眼差し 身を翻す来栖のスカートが綺麗に広がると男子生徒からは、どよめきと熱視線。色々な感情や視線を浴びつつ戻っていく

　ようやく順番的にも、今歩いて来たのが来栖なのだと気付き始めた観客たちは

　周りの生徒たちと顔を見合せ興奮をさらに高めていた

　すげーよ 来栖！ 体育館にも500人位はいるはずだが 中からの歓声や悲鳴が外にも漏れ伝わったのか 屋台や外のイベントを楽しんでいた人たちが流れ込み 入り口にはいつの間にか人集りが出来ていた

「これでランウェイも終わりになります。次で最後になりますがミスコンに懸ける想いを出場者に語って頂き投票に移ります」

　海斗が話してる間も興奮覚めやらず ザワザワ感は半端ない

　優勝を諦めてる者も多いのか 明らかに気落ちしながら話す子や 淡々と手短に話す子が多い

「次は３年の来栖ひなたさん。お願いします」

　海斗に呼ばれ前へと歩を進める来栖

　失笑も冷笑もなく 来栖の言葉を皆待っているのか静まり返る

　ふいにひまりの時を思い出してしまう

　中1から高1までの四年間を四連覇し殿堂入りとなったひまりだが その四年間、ミスコンに出る度に『懸ける想いはないです。ただ推薦してくださった方と応援してくださる方の為に出てます』

　この言葉を一語一句違わずに言ってただけだ

　普通に考えれば煽っているとも思える様な言葉だが、変な綺麗事や嘘等は言わないひまりらしいとも言えた。

　圧倒的なビジュアルと存在感に学園理事長の娘で成績優秀なお嬢様。この恵まれ過ぎている属性により四連覇。もし、あかりが同じように育っていれば、＋して親しみやすさに運動神経抜群も加わるのだが どちらが選ばれるのか俺にも分からない

「私は……」

　一言だけ呟いて言葉を止める来栖 次の言葉を待ちわびる観客

「…………」

　中々、口を開かない来栖。

　だんだんと観客たちもザワツキ始める

　少しすると来栖が横を向く。

　ステージの袖から誰かが何かを言ってるのか？

　横を向いたまま頷いたかと思うと 来栖は顔を観客に向け直し 大きく息を吸ってから口を開いた

「私は『来栖ひなた』です。普段は黒髪お下げで、分厚いガラス入りの眼鏡を掛けてました」

　緊張しているのか、語り懸ける声は細く震えていた

「今は金髪で眼鏡もしてませんが、この『来栖ひなた』は、どう見えてるのでしょうか？ 」

　先程までザワツキ始めていた観客も大人しくなり、来栖の声だけが響く

「ある人に少し前に言われました『折角、可愛く産まれたのに隠してちゃ両親に申し訳ないでしょ。使える武器は使いなさい。ゲームでもそうじゃん？ クルースはビジュアルとスタイルは誰もが羨むレアアイテムだよ。出し惜しみしてどうすんの？

　中身で勝負？ 笑い死ぬわ！ そんな中身だけで見てくる徳が高い中高生何て普通はいないから！ みんな可愛くなろう。可愛く見せたいと思って必死に頑張ったりしてるの！ まぁ 中にはそう思わない子もいるかもだけど、少数だしクルースは……」

　一気に喋りたてる来栖に観客は唖然となる

　ってか、『クルース』言ってる時点で、あかりなのは確定なんだが

「その人に言われて思いました。可愛さでマウント取った気でいるなら、可愛さで取り替えそうと」

　自嘲気味に笑う来栖

「すみません。冗談です……私は変わりたいと思いながら何もしてませんでした。本やゲームの世界に入って、性別の違うキャラクターに自己投影したり妄想で周囲を皮肉ったり……傷付きたくないから……安全な所からでしか、自分を出せませんでした」

　先程までの震えてた声はなくなり じょじょに声は大きくなっていく

「周りの子とは違う見た目めで小学生の頃に色々あって、それで……それで日桜学園の中等部では最初からウィッグと眼鏡で目立たない様に過ごしてきました。クラスで自分が大声上げて笑えば目立つだろうし、何か発言すれば目立つだろうし、極力声も出さずにひっそりと過ごしてきました」

　本当であれば来栖の時間は終わりだろうが 海斗は遮らずに最後まで話させるつもりのようだ

「でも 全然居心地も良くないし、何で私が我慢しなきゃならないんだろうって内心は思ってました。変わりたいけど変われない。そんな自分も嫌いでした。ある人に『私って何かしたのかな？ 何もしてないのに』って愚痴を言いました。その人からは『何もしてないからじゃん』 って言われました」

　それも言ったのはあかりだろうな

「『小学生の頃は過去だから仕方ないけど、現在はクルースの行動で変えられるし、それによって未来も変わる。クルースはどうなりたいの？』私は……私は隠れるように生きていたくない！ 」

　何かだんだんと大声ってより叫んでるようになってきたけど……大丈夫かこれ？

「変に我慢ももうしたくない！ 私より可愛くもない癖に、私をブス扱いしないでよ！！ あんたらこそ鏡見たことあんの？ 良く言って個性的な顔だよ！ ぜんっぜん可愛くない 良く平気で表を歩けるわね！ なんでそんな顔でマウント取れるの？ 逆に尊敬するわ！ 」

　あっ もうダメだこれ肩で息し始めたし 興奮しすぎて最後はマイクがキーンってなったし ミスコンに懸ける想いってか 悪口じゃん 独壇場ってか毒を振り撒いてる毒壇場じゃん 特定の人物ではないけど。めちゃくちゃ静まり返るし どうやって収めんのこれ？

　もう海斗も遮ってやれよ！ 来栖は自分が見えなくなってるだろうし

「私がミスコンに出た理由何て１つよ！『この中等部の誰よりも最強に可愛から！に決まってるじゃない！！ 』そして…そして……今までの卑屈な自分と別れて、『少しでも皆と仲良くなりたいから、中等部の想い出を来栖ひなた。として残して置きたいから』……お昼休みに中庭でお弁当食べたり、放課後にクレープとか食べてカラオケとか買い物に行ったり、テスト嫌だね。って言いながら、お家に集まって勉強したり。

　みんなから私に来ないなら……感謝しなさい、最強に可愛い。私から寄り添って上げるわ」

　強烈な間違った方向でのツンデレか！！

　初めてこんな支離滅裂なツンデレを見たわ！

　来栖が恋愛同好会に入りたいって言ったのも、何か楽しそうに見えたから。とか言ってたし、あいつにはボッチ属性も本当はなかったんだろうな

　静まり返る中、マイクをスタンドに戻し後ろに引き下がる来栖

　海斗が何とか進行を進めようとすると

　何処からともなく拍手が起こった

　って、舞台袖から聞こえるから、多分と言うか絶対にあかりじゃねーか。

　拍手は次第にステージ下の観客からも、今日一番の歓声と一緒に沸き起こり暫く続いた

　来栖と友達になりたいと、仲間数人で泣いている女子生徒たちまでいる始末だ

　ほんの2年前まで俺も中学生だったが

　中学生の考えてる事は分からん！

　そして投票から発表までの１時間、有志のバンドや漫才を挟んで、遂に中等部のミスコンが決まる時間になり、再度出場者がステージ上に横一列に並ぶ

「お待たせしました。総投票数は865票になります。多くの投票ありがとうございました」

　そしてドラムロールが鳴ると海斗が上手い具合に間を開ける

「今年の日桜学園中等部ミスコン優勝者は得票数817票集めました……」

　めっちゃ圧倒的！ 高等部からも相当な票数を稼いだな。 ひまりの時でもこんなに集まらなかったぞ

『３年…… 来栖ひなたさんです！！』

　ほんとなにこれ？

　来栖のキョトン顔と大歓声のギャップが面白いが

　結局は顔か！？ 顔なのか？ ミスコンだからそうなのだろうが あの想いを聞いて来栖に入れたくなるものなのか？ 共感出来るところあったのか？ 俺の考えがズレテルのか？？

でも、ステージ上で出場者から抱き締められてる、ティアラを着けた来栖の笑顔が最強に可愛かったのだけは認めよう