文化祭編
来栖ひなたとの遭遇
「『乱れることなく並んだ机。壁に貼られてある掲示物は、確かに俺たちが学校生活を送ってる。と云う事を表しているのだが、誰もいない放課後の教室は、空気感が変わり、やたらと静かで、世界から抜き取られた様な一抹の寂しさや不安さえ感じる。得も言われぬ恐怖とでも言おうか……』って顔をしているぞ。陽太」
「鏡持ってこい! そんな顔をしてるかどうか見てやる」
俺と海斗は修学旅行の『アルコール摂取及び不純同性交遊』の罰として、文化祭のクラス委員を花森ちゃんから本日仰せつかった。
文化祭までは1ヶ月も切ったので、そろそろクラスの出し物を決めなければならない
「やっぱ飲食は無しだな。衛生検査や臨時出店届け。とか面倒だし」
海斗は机に頬杖を付きながら興味なさげに呟く
「メイドカフェやりたい。って女子もいたぞ」
「ありきたりだし、メイドになってる自分が可愛い。とでも思われたいだけだろ」
「ちげーよ! 俺たち男子がメイド姿でやるカフェだってよ」
「それ 誰得だよ? 」
確かに誰得なのか分からんが 海斗は美形だから女装すれば その変の女よりは綺麗だろうな
ってか実行委員とか面倒くさいし 俺たちだけで決めるもんでもないだろ
「明日のHRで多数決して決めようぜ」
「それが1番まともなやり方だろうな。じゃあ、同好会に顔出すか」
「あっ 俺はバイトあるから行けない。って、事でお先」
海斗に軽く手だけ上げて教室を後にした
ラノベやアニメのグッズ購入など何かとお金が必要なのでバイトを減らすことだけはしたくない
バイト先のファミレスに着くと 同じ学校の中等部の女子が外からガラス窓に張り付いて、必死に中の様子を窺っているのが見える
中等部は制服が義務つけられているのですぐに分かる
「金髪の長身イケメンのお兄さんなら18時からだから まだ来ないぞ」
「はわわわ べ 別に、そんな人を見たくて様子を窺ってた訳じゃないんだからね」
なんだ こいつ? 自分から様子を窺う。と言ってくる奴は初めてだ
アニメの世界でしか中々、お目に掛かれない金髪のツインテール
生意気そうな猫目 ツンとした鼻
その鼻をふんっ。と鳴らし腕組みしながら睨み付けてくる
「じゃあ 帰るか中に入るかにしてくれ。そんなに外から見られてたら、中のお客様も居心地悪いだろ」
「は? これ、中から外見えるの?? 」
「当たり前だろ。マジックミラーだぞ? 外からは中が見えにくいけど、中からはバッチし外が見えるから」
「じゃ じゃあ ひなたが窓に張り付いてる姿も」
「そりゃあ こんだけ張り付いてたら、中のお客様は恐怖すら感じるだろうな」
ペタンと座り込むとツインテールで両目を隠し
「は 恥ずかしい 恥ずかしい 恥ずかしい」
「ちょ 俺が何か泣かせたみたいに見えちゃうから! 」
ツインテを片方だけ目から少し離し、オロオロする俺をチラ見してくる
「あ~あ ひなた。お腹空いたなぁ」
なんなんだよ! この中坊は?
「先パイ ここでバイトしてたよね? また泣いた振りしようかなぁ」
「まてまてまて! 取り敢えず中に入ろうか? 」
「ひなた。お金持ってない」
「じゃあ 帰れ」
またもツインテを両目に当てると 泣きわめく振りをしてきた……
「分かった! 分かったから 俺の奢りで良いから」
「えぇ 良いんですかぁ? さっすが~ セン・パ~イ」
八重歯を覗かせながら笑いやがって 語尾にハートマーク付けたな
あかりと良い勝負だ この性格は……
「あっ 私、日桜学園中等部3年の『
「来栖。取り敢えず立ってくれない?」
「立ち上がれな~い 先パ~イ 手 貸して下さいよ~ 」
くっ 顔が可愛いから余計に腹立つわ!
これ以上ややこしい事態にしたくなかったので
手を差し向け、ひなたが握って来ると引っ張り上げた
「ありがとうございま~す。っとっとっと」
「って お前 何してんの? 離れてくれない? 」
そこまで強く引っ張ってないのに ひなたはわざと、よろける振りをしては抱き付いてきた そん時に何かズボンに違和感を感じたが、こんなことしてる場合じゃない 早く着替えないと
「もぅ 先パイって強引何だから」
「その言葉、そっくりそのまま打ち返すわ」
「う~ん その返しだとセンター前位ですかね。『強引じゃなきゃ、お前付いてこねーじゃん』とかの方が、ひなたは好きかな」
「いや 本当に勘弁してくんない? バイトの時間も間に合わなくなるし」
声掛けなきゃ良かったと本気で後悔している……
別にこいつの目的何か知りたくもねーし関わりたくない
「じゃあ2人で一緒に入りましょう。これが同伴出勤ってやつですね? 」
「多分と言うか絶対に違うと思う。俺は従業員用の出入口から入る」
「えぇ そんなぁ仕事上だけのお付き合いみたいじゃないですかぁ」
「仕事上だけでも付き合いたくねーよ」
抱き付いていた ひなたの肩を押して従業員用の出入口へと向かう
「ひなた。席で待ってるからオーダー取りに来て下さいよぉ」
事故にでも遭遇した気分になる こういう時に海斗がいてくれれば海斗に押し付けるんだけどな
控え室で店の制服に着替えフロアに出る
夕方の16時だから 客入りもまばらだし学生客しかいなかった
そんななか、ひなたは端っこの席に通されたのか メニュー表に視線を落としていた
チャイムが鳴り天井に付いてる電光掲示板を見ると
ひなたの席番が点灯してあった
仕方ない 行きたくないけど行くか
「ご注文はお決まりでしょうか? 」
「えっと……ご注文はうさぎでしょうか? 」
「ホント邪魔だから帰って! お金なら上げるから」
「先パイ! 今、お金受け取ったら怪しい関係にしか見えませんよぉ」
ため息しか出てこない
「ご注文はお決まりでしょうか! 」
「この『葡萄のブリュレパフェ』お願いしまぁす」
「畏まりました。少々お待ちください」
こいつの為に900円も奢らなきゃならんのか
「そ それと……」
「他にも御座いますか?
「
何かモジモジしてるけど まさか俺の『愛』とか言わないよね?
「せ 先パイ……」
潤んだ瞳を向けてくるので
思わず生唾飲んじゃったよ
なにこれ? もしかしてだけど俺に惚れてる??
それならそうとしっかり断らないとだな
ひまりとあかりの事もあるし
「先パイ! ひ ひなたを……」
「ごめん 無理です。オーダーお持ちしますね」
「ちょっと 最後まで聞いて下さいよ! 別に先パイに告白しようとかしてませんからぁ」
「じゃあ 何だよ? 」
「ひなたを『恋愛同好会』に入れて下さい」
頭をペコッと下げるひなた
あんな秘密結社よりも秘密めいた活動しかしてないのに 何故知ってるんだ?
悩んでる時間ないし 断ったら断ったでまた面倒だからな
「良く分からんが 今は仕事中だから 明日の放課後、部室まで来てくれ」
「分っかりましたぁ! じゃあ早くパフェ持ってきて下さい」
敬礼ポーズ! 可愛いじゃねーかよ! 先パイを先パイとも思ってねーだろーが
こうして不思議な金髪ツインテール美少女
『来栖ひなた』は唐突と俺の前に現れたのであった。
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