恋占いストーン
「お姉様と妹ちゃん。食堂にもいなかったな? 」
「先に食べてたんじゃね? 」
部屋に戻ると時計の針は8時50分を過ぎていた
俺らが朝食の時間ギリギリだしな
「それより9時エントランスだぞ! 早くしねーと」
「そうだな。最初から遅れたら妹ちゃんに何て言われるか」
急いで部屋から荷物を持ちエントランスで2人を待つも
ツインズは来なかった
「もう9時過ぎだぜ。陽太のスマホに連絡入ってないの?」
「何回も確認したし、一応 LAINE送ったんだけど既読にもならない」
「あっ! 来た来た」
階段から急いで降りてくるツインズが見えた
あかりだけならまだしも、ひまりも連絡なしに珍しいな
「ごめん。私もあかりも起きたら8時30過ぎてたから、慌てて準備したんだけど、間に合わなかった」
「別に10分位だし。それより、ひまりが遅れるって珍しいな」
「陽太に赤ピ。ごめんなさい。テレビの占いも見てたら遅れちゃった。って、2人は眠くないの? 」
「占いって……まぁ 陽太も言ってるけど10分位なら誤差だよ誤差。早めに爆睡して睡眠時間たっぷりとったから」
ひまりの目が心なしか冷たいのだが
「よ 陽太君もすぐに眠れたの? 」
「おぉ ベッドに入ったらすぐ、夢すら見ることなく爆睡よ! 」
「ば バカ……」
目力抜群に睨みつつ、ツンと顔を逸らすひまり
何で朝から罵声を浴びなきゃならんのだ
「じゃあ 行こうぜ。午前は……清水寺と地主神社? に伏見稲荷大社と。ひまり、地主神社って何だっけ?」
「え? えっと。清水寺より少し高い所にあって世界文化遺産にも登録されてて、天井に描かれてる龍が有名かな」
「あぁ。何かあったね。ってか、ツインズのチョイスって渋くない? 」
「い 良いの! あかりとひまりちゃんで考えて決めたんだから」
プク顔のあかりが歩き出したので 海斗と苦笑いを交わし後に続いた
同じ様な修学旅行生や外国人観光客の多さが目立つ
「おぉ ここから飛び降りるのか」
「あかり。危ないから気を付けなさい」
清水寺の本堂から興奮気味に見下ろすあかりの肩を掴むひまり
俺たちは来たことあるがあかりは初めてだもんな
はしゃぐもの無理ない
「赤ピ。飛び降りてみてよ」
「何で俺なんだよ! 」
「海斗君。昔の人は結構飛び降りた人いたらしくて、生存率は85%ってガイドブックに書いてあるから大丈夫だよ」
「いやいや。15%は死んでるじゃん! ツインズ揃って、飛ばそうとするの辞めて」
「赤ピはYouTuberになりたいんでしょ? 『清水の舞台から飛び降りてみた』これで再生回数稼げるよ」
「なりたくねーし、炎上しかしねーよ。また、バカなYouTuber現れた的な」
清水寺も参拝を澄まし、一通り回ってから地主神社へとやって来ると
「はは~ん。お姉様に妹ちゃん。そういう事ね」
「どういう事? 」
ニヤニヤしてツインズに顔を向ける海斗に聞いてみた
「ここの神社。めちゃくちゃアピってるじゃん」
海斗が指を指すので見てみると境内の至る所に提灯が飾られてあり
赤字で『えんむすび』と書いてある
「べ 別に清水寺から近いから一緒に回ろうとしてるだけだよ」
「そういう事にしときましょうか。清水寺もガイドブックに書いてあったけど、御利益は縁結びだし。お姉様も健気ですねぇ」
「赤ピも花森ちゃん先生との事を祈れば良いじゃん」
「言われなくても全身全霊で祈るわ! 」
何か、そういう事が分かると恥ずいのですが
お参りするときに何を願えば良いのか難しくなる
「おっ あれが恋占い石じゃね? 」
本殿前に膝の高さ程の石が2つあり、10メートル位は離れている。
「あの片方の石から反対側の石に目を閉じて歩き、無事たどりつくことが出来たら恋の願いがかなうらしいよ」
ひまりの言葉を聞いてからガイドブックに目を落とすと
「ガイドブックには『一度でたどり着ければ恋の成就も早く、二度三度となると恋の成就も遅れ、人にアドバイスを受けてたどり着けた時は、人の助けを借りて恋が成就する』って書いてあるな」
あれくらいの距離なら目を閉じてても
一度でたどり着けそうだけどな
「じゃ ひまりちゃん。やってみてよ」
「わ 私から? 」
「だって、ひまりちゃんが1番やりたがってたじゃん」
ひまりは片方の石の前に立つと目を閉じ深呼吸すると歩き出した
「おぉ 一切の迷いもなく、もう片方の石まで一気に進み出すとは。さすがお姉さま」
そのままひまりは見事に一回でたどり着き 石を触り目を開けると
「やった やった。1度でたどり着けたわ」
両手を胸の前で合わせぴょんぴょん跳ねるひまり
「お姉さまらしからぬ はしゃぎようで。これは陽太選手 見事な願掛けになりましたが、一言感想を」
「そうですね 俺が言うのもアレですが、ひまりの俺に対する想いが一直線。と言うことでしょうね」
「なるほど。また付き合う日も遠くはない。と? 」
「ちょっと待ったーー」
あかりが両手をビシッと挙げた
「次はあかりがやる! ひまりちゃんより早く到達しちゃうんだから! 」
「さっ 次は鈴影あかり選手の登場です。あかり選手、目を閉じて両手を ちっぱいに当てるとゆっくりと深呼吸をします」
「赤ピ! 黙っててよ」
深呼吸を終えたあかりは右手を挙げてから進み出したが最初の3歩目位から曲がり出していた
「あり? 距離的にこの辺なのに、全然石に触れないんだけど」
「あかり選手 アドバイス入ります? 」
「い いらない」
手探りで空気に触れるあかり……どんどん石からは遠ざかっていく
一向に石にたどり着く気配がないので
「あ あかり。俺が誘導するから、その通りに動けよ」
「だ 大丈夫」
全然、大丈夫じゃなさそうだけど……
何がしたいのか 石を通過し俺に近付いて来ると
そのまま抱き付く様にピタッとくっつき
「エヘヘ よーた 捕まえた! 」
目を開いてニカッと上目遣いに見つめてくるあかり……か 可愛い 願掛け関係なくなってるけど
「おっとぉ あかり選手は、石に触れてゴールするのではなく、直接陽太選手にくっつき出しましたが」
「そうですね。非常にトリッキーですが、あかり選手らしいですね。僕までたどり着く事は出来ましたし、ありよりのありで」
「なるほど。恋心を変幻自在に見せ付けてくる辺りはさすがですね。これは、あかり選手と付き合う事もあり得ると」
「そこはノーコメントで。次は海斗がやってみなよ」
海斗は不適な笑みを浮かべ両肩をグルグルとしてから、顔を両手で叩くと気合い十分でスタート地点に向かった
「よっしゃ。花森ちゃん待ってろよ! 年の差も立場も愛さえあれば関係ねーー」
思いっきり大声で叫び、目を瞑る海斗
「すっごい赤ピ 恥ずかしいんだけど」
「そうね。あんなに叫ばなくても、回りからの失笑が凄い」
少しずつ石に近付いてはいるが 微妙にずれ出し、石を通過する海斗
「うおぉぉ 何処だ? どこにいる花森ちゃんー 俺の花森ちゃーーん」
「ひまりちゃん。恥ずかしいよぉ アドバイスして上げなよ」
「え? 嫌よ。知合いだと思われたくないわ。陽太君お願い」
「俺も嫌だよ。あいつ石を探す気あんのかよ? ただ騒いでるだけにしか思えないが」
「じゃ じゃあ先に伏見稲荷大社に行ってようか? 」
グルグル徘徊している海斗は周りの観光客からスマホで撮られているようだ
そんな海斗を遠目に伏見稲荷大社へと向かう事にした
「陽太君はやらなくて良かったの?」
「そうだよ。陽太もやれば良いのに」
「あんま願掛けとか好きじゃないからなぁ」
って、言ってみたけど
俺がゴールする時に 目を瞑っている俺は ひまりかあかりか、どちらの顔を思い浮かべているのかを知るのが怖かった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます