ティッシュボーン

「あんっ ようたぁ」

「痛いか? 俺も初めてだから どうやって良いか分かんなくて」

「うぅん 気持ち良ぃ」

「そうか。もう少し奥まで入れるぞ」

「あっ 陽太のが中まで入ってくる」



「だあぁぁぁ お前ら黙ってやってくんね? ってか、何で陽太が妹ちゃんの耳掻きしてんだよ! 」


 膝の上で目をトロンとさせ気持ち良さそうに横になるあかり

 そう、俺は今 耳掻きをしてあげているのだ。

 他人にして上げるの何て初めてだから怖くて仕方がない


「あんま 動くなよ! 」

「だってぇ 陽太のが中に入ってくる度にゾクゾクして体が勝手に反応しちゃうよぉ」

「おい! 妹ちゃん。わざと言ってるだろ! 言葉のチョイスが怪しい」

「わざとって何? あかり子ともだから分からない」


 耳掻きに集中させてくれ!

 耳ちっちぇーな

 傷付けそうだ


「あかりの穴がちっちゃくて 壊しちゃいそうだ」

「てめーもわざとか! 耳の穴だよな!主語をつけてくれ!! ってか、お姉様はどうした? お姉様は? 」

「赤ピ黙っててよ あかりは穴に棒を入れられている。気持ち良い行為に全神経を集中させたいのぉ」

「くっ こんな破廉恥だったのか耳掻きは」


 よし 取れた!

 他人の耳掻きするの面白いかも


「よし あかり抜くぞ 」

「だめぇ まだあぁぁ」

「妹ちゃん。最近どんなラノベとかアニメ見てんだよ! 俺は妹ちゃんの行く末が心配だ」


 最後に梵天で綺麗にして息を吹き掛けると


「ひゃん ふぅ~ 何か耳がスッキリした気がするぅ」


 ん? 耳掻きが終わったのに

 膝からどけようとしない


「もう終わったんだから さっさとどけろよ! 」


 あかりはムクッと立ち上がり睨み付けてくる


「終わったら 冷たくなる男って最低ーー 女の子は余韻に浸りたいんだよ! 」

「耳掻きの余韻ってなんだよ? 」


 俺もひまりの膝の上で耳掻きされてーなぁ

 言えばやってくれそうだけど 恥ずかしく言えない……


「ごめん。花森先生の手伝いしてたら遅くなっちゃった」


 息を切らしながら入ってくるひまり

 その手には何かを握りしめている


「ね? 花森先生からお礼に福引券貰ったんだけど、商店街行かない? ちょうど4枚引けるし」

「ひまりちゃん。見せて! うぉお ガラガラするやつだぁ。あかりやりたい」

「まっ やる事もねーし 俺は良いけど 陽太は? 」

「バイトあるから遅くならなければ」


 取りあえず商店街に向かうと福引き会場が見えてきた


「いらっしゃい。福引きやっていくのかい? 」

「やるうぅ ここにある物を全部かっさらってやる! 」

「お お嬢ちゃんは盗賊かな……それに4枚じゃ全部は無理かと思うよ」

「へぇ 特賞は温泉旅行。しかも4名様か! 以外と当たっちゃうんじゃないの! じゃ 俺から行くわ」


 テンション高く海斗がガラガラを回すと出てきたのは

 赤玉だった


「おめでとう 4等賞のポケットティッシュだよ」

「4等賞でポケットティッシュかよ! 」

「赤ピは人生の運を全て使い切ったね! 」

「こんなんで使い切る位なら 俺の人生たいした事ねーな! 」


 次にひまりが引く事になり

 お上品に両手を使ってガラガラを回すと

 青玉が出てきた


「おぉ おめでとう3等賞は紐パンとブラのセットだよ! しかも紫色。美人さんは運も持ち合わせていて凄いね」

「あ ありがとう御座います……」


 解せぬ表情で紐パンとブラを受け取るひまり 何故に景品で紐パン? 完全にセクハラじゃねーか!


「よっしゃ 次は俺ね」


 ニヤニヤしながらあかりがこっちを見てくる


「陽太はティッシュ沢山使うから赤玉が良いんじゃない? 」

「どういう意味だよ! 」

「ゴミ箱をティッシュで妊娠させちゃってる。ってことぉ」

「お前 俺の部屋のゴミ箱見たことあんのかよ! 」

「あるよ」

 ………


 それ以上は何も言えなかった ひまりの視線が突き刺さる そんな汚い物を見るような目で見ないでくれ

 男子高校生なんて そんなもんだ


「よ よーし 特賞引いちゃうぞ! 」


 カオスから光に導かれし金の玉よ。今こそ汚れた地上に姿を現し己の存在を誇示するのだ! 唸れ俺の黄金の右手! 金玉を引き寄せるっっんだ!



 きたあぁぁ 金の玉!

 金玉だ!! 金玉出たよ!


「「「おぉ!」」」


 カランカランと鐘をならすおじさん


「やった ひまり! 金玉出たぜ! 俺の金玉だ ひまり、嬉しいだろ? 金玉だぜ」

「あ あまり連呼しないでよ。あと、こっちに近寄らないで下さい」


 なんだよ! 人が折角 金玉出してやったっつーのに


「おめでとう御座います! 出ました1等賞! 」

「あれ 金の玉って特賞じゃなくて1等賞なの? まぁ 良いや商品は? 」

「特賞は黒玉だよ。で、1特賞は……高級ティッシュ1ダースです! 」


 ぐぬぬ 解せぬぞ! 金色の箱で出来たティッシュを受けとる

 確かにしっとりとしてて

 良さそうなのは分かるが

 何故 こんなに景品がティッシュばかりなんだ!

 異常なまでにティッシュへの執着を感じる


「何だよ? 見てんじゃねーぞ あかり」

「しっとりと水分多そうなティッシュだから、優しそうだね? 」


 なにに? 何に対して優しそうなの?


「ふっふっふっ やはり主役は、このあかりちゃんみたいだね。大体、こういう時は主役が特賞を出すって相場が決まってる」


 お前はいつから主役になったんだ

 あかりが深呼吸をしてからガラガラに手を伸ばす


「さて、裁きの時間が来たようだ……カオスから光に導かれし黒の玉よ。お前の封印を解いてやる! ガラガラと貴様の奏でるシンフォニー 内なる悲鳴が我には聞こえる。さぁ今こそ我に従い我に跪け! うおぉぉ バーニングサンダーアルティメットフラッシュ!! 」


 ガラガラガラガラガラガラ

 …………

 ガラガラガラガラガラガラ

 …………


「お お嬢ちゃん。もう少しゆっくり回さないと出て来ないよ」

「ご ごめんなさい……」


 ポトッ タンタンタン……


「「「白玉」」」

「はい 惜しかったね。外れだよ また貯まったら引きに来てね」


 ガラガラを握り締めたまま微動だにしないあかり


「やい おやじ! 『惜しかったね』って、何に対してだ! 何で惜しいって分かる? そんなの優しさでも慰めでもないわ」

「ちょっと あかり! 言い掛かりは止めなさい」

「ふんっ 良いもん。別に当たんなくても、私の家はお金持ちだから温泉旅行位、行けちゃうからさ 残念だったなおやじ! 」

「お おじさん。すみませ~ん 楽しかったです。また来ますね。 妹ちゃんも行くぞ!」


 俺たちはあかりの首根っこを掴み 早歩きで移動した


「お前さぁ あれはないわ 当たらないからって」

「当たったよ! 」

「いや 白玉は外れだろ」

「ちゃんと当たったから、八つ当たりだけどなっ! 」


 黙ってあかりの頭を叩いた


「いやぁ しかし、お姉様は紐パンとブラ良かったじゃん。赤色以外に紫色も手に入れて」

「やったね ひまりちゃん! おっとな~な、ひまりちゃんには似合うよ。明日さっそく付けてきなよぉ」

「そ そうね。軽い着け心地だし蒸れにくいし 紐パンに限るわ」


 着け心地何てあんのかよ!蒸れにくい? なにそれ? 誰か詳しく教えてくれ

 かなり刺激の強い下着だが あれをひまりが付けるのか……


「うわっ 陽太! 鼻血出てる 」

「陽太。ひまりちゃんの下着姿、想像してたあぁぁ」

「してねーよ」


 慌てて上を向くが勢いは凄まじくポタポタ流れ落ちてくる


「高級ティッシュは、陽太が家に帰ってから使うと思うから、赤ピが当てたポケットティッシュあげなよ」


 くそっ 完全にあかりに遊ばれている

 海斗からポケットティッシュを受け取り鼻に詰める


「まっ 特賞当てられなかったけど、どっちにしても修学旅行あるしな」


 修学旅行? そうだ。俺たちは 来週から修学旅行で京都に行くんだった

 何が悲しくて今さら京都なのか知らないが

 楽しみではある


「じゃ 俺こっちだから また明日」

「じゃあね 赤ピ ポケットティッシュ無駄にすんじゃないよぉ」

「大丈夫 俺はティッシュ使わない派だから」


 めちゃくちゃ気になるんですけど 一体どうやってんだ?? 海斗の背中がとても大きく見えるぜ


「陽太もバイバイ また、明日ねぇ」

「おう またな ひまりも明日な」


 あかりは手を振るが

 ひまりがトコトコと駆け寄ってくる


「どうした? 」


 恥ずかしそうに手招きして来るので耳を近付けると

 俺の耳に手を当て


「よ 陽太君にだけなら べ 別に下着姿見せて上げても良いよ……修学旅行楽しみだね」


 言い残すとあかりの元へと戻っていく

 フラグか? 今のは、ひまりがフラグを立てたのか?

 あんな紐パン見ても良いんすか?

 がぜん修学旅行が楽しみになってきたぜ!!


 俺の顔は夕焼けよりも赤く染まっていただろう

 特に鼻の下からは

 そう バイト中も鼻血は治まらず家に帰ってからも止めどなく流れるので

 ティッシュを詰めては代え詰めては代え

 見事にゴミ箱をティッシュで妊娠させました


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