第3話 カフェに寄ってから選んだ水着は可愛いすぎ

 カフェへ入ると冷房のヒンヤリとした空気が体を吹き抜け、熱がこもっていた体から一気に解放された気分がして心地が良い


 お洒落で人気のある店内は雑貨やインテリアが女の子に受けが良いらしく、カップルや同年代の女の子同士で座っている人たちがほとんどだ。

 満杯に近かったが、ちょうど窓際に座っていた2人組が帰っていったので、俺たちはそこに座った。


「俺、買ってくるけど ひまりは何飲む? 」

「ありがとう。えっと…… レモネードで」

「了解」



 俺は中学に入ったくらいからコーヒーは何故か違和感なくブラックで飲めるようになった それをある時、ひまりに『ブラックで飲めるなんてスゴいね』と言われてからは、常にコーヒーを頼んでいる 数少ないひまりよりも優位性が保てると思っているからだ


 レモネードとアイスコーヒーを買って席に戻るあいだ さりげなく周りを見てみると、店内にいる男どもは目の前に自分の彼女らしき人がいるにも関わらず チラチラとひまりに視線を向けている


 幼馴染みなので昔から学校でも外で遊んでいても、こんな光景は見慣れてはいたが、心は一向に慣れない。ひまりを自慢したい見てほしい気持ちと、ひまりをよこしまな目で見てそうな男どもに見るな。って言う気持ちが入り混じる

 外見的超絶才能を生まれつきもった女の子と付き合うのも なかなか大変なものだ……


「おまたせ はいレモネード」

「ありがとう ここのお店、カップも可愛いよね」


 そう言うとひまりはストローを咥え飲み始めた。

 カップにはデフォルメを効かせたウサギの絵が書いてあったが、どこが可愛いのか俺には全く分からない ただ、透明なカップにレモネードの黄色は爽やかで夏っぽく、ひまりの白いワンピースとも合っている

 そんな事を考えながら ひまりを見ていると


「ん? 陽太くんも飲みたいの? 」


 上目遣いにカップを手渡そうとするひまり 昔は当たり前のように ひまりと間接キスをしていたが、それは意識をしてなかったからで、今はちょー恥ずかしいんですけど だがせっかくのチャンスなので さも当たり前の様に受け取りレモネードを口に含んだ

 口に広がるシロップは少し甘く、それでいてレモンの酸味もしっかりある

 そう甘酸っぱいのだ!!

 はぁ これが青春ってやつか? 青春ゾンビが憧れている青春を青春時代に俺はしているのか!


「陽太くん 別に良いけど飲み過ぎじゃないかな? 返してくれる 」


 はっ 感動に震えて思わずレモネードを半分くらい飲み過ぎちゃった


「ご ごめん。それ飲んだら新しいの買ってくるよ」

「別に良いよ 飲み過ぎるとお腹が脹れるし」


 ガリガリのくせに何を言ってんだが てもひまりの胸だけは自己主張が激しい

 他愛もない話をしていたが、俺は気になっていることを聞いた


「なぁ 日曜日のこと怒ってる? 」

「別に」


 ストローを片手に持ちカップの中の氷をつつき出したひまり

 ふむ 少し怒っているようだ 感情の起伏が少ないひまりだが 長い付き合いから多少の事は分かっているつもりだ

 ひまりはストレスが溜まるような事があったり言われると 片手で何かをいじるクセがある それが髪の毛だったりシャーペンだったりと様々だが


「ごめん。必ず遊園地は夏休みの間には行こう」

「だから 別に良いって」

「良くねーよ 最初に約束してたのに破ったのは俺だし」

「う~ん じゃあ また予定合わせようか」

「あぁ バイトがない日ならいつでも空いてるから」

「それも何か悲しいね」


 ようやく少しは和らいだのかストローを離し俺を見てきた


「うるせぇ 前に夏休みでバイトない日をLAINEしたじゃん。そこから選らんで」

「分かったよ 帰ったらLAINEするね」

「よし じゃあ 涼んだ事だし、あかりの水着でも買いに行きますか」


 言ったあとに俺は後悔した 高校生男子にとって 女子の水着売り場に足を踏み入れる事が こんなにも背徳的行為なのかと

 水着姿のマネキンにすら 少し興奮を覚えてしまう

 このビキニをひまりが着てたら こんな感じかなぁとか

 日焼け止めオイルを指差しながら、ひまりが寝そべりビキニのブラを取って『陽太くん 背中から塗ってくれる』とかあぁぁぁ


「顔がいつにもまして個性的になっているよ」


 いかんいかん ついニヤついてしまった


「どうしよっかな。あかりの水着って選ぶの難しいんだよね」

「え? なんで? 」

「ん~ 16歳だけど身長も多分140ないだろうし体型も体型だから……そうなると子どもっぽい水着しかないよ」


 水着に詳しくないが、ひまりがそう言うので そうなんだろう 何かやけに あかりは、ひまりが着ている服や大人っぽいものとかに拘ってたし、リハビリもだが無茶して焦っているようにも思えた


「なるほど ってか、ひまりもプール来れば良いじゃん 予定なんてないだろ」

「予定あるよ 図書館行って勉強する」

「日曜日ってやってたっけ? 」

「き 近所の図書館はやってないけど、大きいところはやってる」


 その予定も今作ったくせに 泳げない訳でもなかったよな?


「あっ これなんか、あかりに合いそう」


 ひまりが手に取ったのは


「マリンボーダー柄のブルーグリーンは爽やかだし、ワンピ風のセパレートでバストのフレアデザインとハイウエストのビックリボンが可愛いよね? 体型もカバー出来るし、タンクトップと見えても平気なショーツも付いてるから このまま出掛けられるし」


 だそうだ。正直何を言ってるか分からなかったが、双子ならではの感性もあるだろうし


「あ あぁ 似合うと思うよ めちゃくちゃ可愛いじゃん それにしよう」


 時間が経つにつれアウェー感も感じ始めたので、ここを早く離れたかった


「ふ~ん 陽太くんもこれが気に入ったの? 」


 水着を顔の前まで持ち上げて俺を睨むかのように見てくるけど、その顔ですら可愛いから困る ってか、何で自分から振っといて少し不満気なんだ?

 意味が分からん 何て答えるのが正解だったんだ!


「まぁ いいや。これにしよう 前日の土曜日には、あかりも家に戻って来れるみたいだし、日曜はしっかり迎えに来てよね 時間とかは さっきの話しと一緒にLAINEしとくから」

「分かったけど、ひまりは本当に来ないのか? 」

「もぅ しつこいよ プールには行かないし来週の日曜は……お会計してくる」


 来週の日曜は。の後、何て言おうとしてたんだ? 何だよ言いたい事があれば言えよ


 家に戻るとひまりから 遊園地は来週の水曜日に決定。とLAINEが入っていたので了解スタンプで返し、そのまスマホのスケジュールに来週の水曜日は『ひまりと遊園地デート』と花丸を入れといた。


 そしてプール前日の土曜日には、ひまりからLAINEが届き10時に家に迎えに来てほしい事と、あかりを見たらビックリするかも。あかりも物凄い楽しみにしている。との報告を受けたのであった。

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