第一話〈9〉
夜の校舎ってやつは、なかなか
さてどこから入ったもんか。
当然こんな時間に
何とかスマートに侵入する
「あの、
「
「裏口って……何でだ?」
「
「合鍵?」
なぜにそんなもんを?
「ええと……父の
ああなるほどお父さんの書斎から……って、
「私もよくは知らないのですが……何でも父はうちの学園に
出資……そうか、そういえばそんな話をちょっとだけ小耳に
「? どうかしましたか?」
「いや……」
どうかしたかといえば何から何までどうかしている気もしなくもないのだが。くわえて学園の合鍵を全て
「それでは行きましょう」
「ああ──」
図書室は二階にあるので、俺たちはまず階段に向かうことにした。
当たり前だが校舎の中には人の
「
無人の
「ゲームだったら、その角の向こうからゾンビとか出て来そうです」
「あー」
そのゲームなら俺もやったことがある。ゾンビやら
「
ようやく階段まで
「『
他には『理科室の
「ええ、そうです。あとは『トイレの花子さん』『死後の
乃木坂さんが後を
「……」
あの、今、ものすごく
『読書する死者』。初めて聞く話だが、読書っていうからには当然図書室
「……」
……俺、帰っていいかな?
「だ、だめです」
そんなことをしているうちに、問題の図書室に
非常にヤな感じだ。
「ちなみに……『読書する死者』って、どんな話?」
「むかしむかし、この学校がまだ木造校舎だった
「
「
「……」
「私、一昨日たまたまその話を聞いてしまったんです。聞かなければ良かったって、今すごく
「……その話って、知らない人に言っちゃまずいってことにならないか?」
「そう……なりますね」
「でもって、俺はその話を今の今まで知らなかったわけなんだが」
「ええと、それって……」
乃木坂さんが
「……もしかして、今、初めて聞いたんですか?」
「まあ、そういうことに」
「……」
「……」
「ご、ごめんなさいっ。やっちゃいました……」
「あー、いいさ。別に
それに、そもそも
「で、でも、もしも今の私の話が
「まあ
ガキの
「け、けど……幽霊の攻撃って、物理的なモノじゃなくて
「そっちもばっちり」
精神的攻撃の方は、ルコのみならず
だけど俺のそんな
「……優しいんですね」
「な、そんなんじゃなくてな……」
何を
「ふふ」
「だ、だからなあ……」
「ご、ごほん。で、そんないわく付きの図書室なわけだが……当然入るんだよな?」
確認すると、乃木坂さんは
「ええ。せっかくここまで来たんですもの、手ぶらでは引き返せません」
いや手ぶらになるためにここまで来たんだがね。
「い、行きましょう」
そうは言うものの、乃木坂さんはその場から動こうとしない。ただ目でじーっと俺に何かを
仕方なくバカデカイ
「わ、私から
俺の
「あ、そ、そうですね」
「じゃ、じゃあこれくらいで。でも、
その間、ふとした
「きゃっ」
と、乃木坂さんが何か──
「な、何でこんなところにイスが……」
何でと言われても最初からそこにあるものはどうしようもない。つーかそれ、この前もつまずいたイスじゃないか?
「……や、やっちゃいました。私って、ドジですね」
「……」
まさかとは思ったけど。
乃木坂さんって少しばかり……いやかなり
「……昔から、よく転んだりモノにぶつかったりはするんです」
俺の内心の疑問に答えるかのように乃木坂さんがそう言った。
「歩いていると何もないところで転んだり、電柱にぶつかったり、
「でも乃木坂さん、運動神経は悪くないよな?」
体育の時間とかも、別に
「あの……運動神経とはあまり関係がないみたいで。注意力とか、そっちの話みたいなんです」
「それは……何ともまあ」
そういうこともあるのか。でも教室とかでは別にそんなドジっぷりを
「
「……あ、な、何を言っているんでしょう、私。それより早く手続きを
「あのさ、今ふと思ったんだが」
「はい。何でしょう?」
「いや、よく考えてみたら、今その雑誌を
そのための管理用パソコンである。貸し出し及び返却の日付と時間、それらは正確にパソコンに、細かく言えばそのハードディスク上に記録される。四月二十二日木曜日、二十三時八分、管理番号千二百三番『イノセント・スマイル』返却、という風に。
「……」
乃木坂さん、きっかり五秒間
「……それは、全然考えていなかったです」
おいおい。
「う~ん、でも何とかなるんじゃないでしょうか? ほら、
まあそりゃあそうかもしれんが……でも案外
「それでは
そう言って乃木坂さんは作業に集中し始めた。
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