第三話〈5〉
3
色々とインパクトの強い
お茶を飲み終わった俺たちは、その本来の目的を達成すべく、客間から春香の
で、その春香の部屋だが……何というか、思ったよりも普通の部屋だった。
いやそりゃあ広さにして三十畳ほどあって部屋の中央に巨大なグランドピアノが
「あ、その辺に
俺にそう言って、春香はさっきからウォークインのクローゼットの中で何やらごそごそとやっている。クローゼットだけでおそらく俺の部屋よりも
高価そうな
まあこれはこれでこの上なく『
そんなことを考えていると
「この
「あ、ええ……」
「この前、アキハバラでいくつか
あの中には春香お気に入りの『ドジっ
「それは──」
春香が
「それは、私も飾りたいと思います。かわいいですし、
「え?」
家族にも?
「私の家は両親、特にお父様がとても
うつむく春香。
なんつーか……そりゃあ
「そういえば、家の人っていないのか?」
ふと思った。
もしも
「今日は私しかいないです。お父様はアメリカの〝ぺんたごん〟というところに出張していますし、お母様も経営している料理学校の講義で夜中まで帰ってきません。お
「……」
えっと。
あなたのお父上は何者ですか? ……ヘタしたら消されるんじゃないか、俺。
そんな俺の気持ちを分かっているのかいないのか、春香はどこまでも平和そうな顔でにっこりと笑った。
「というわけですので、気を
さて、さすがに入学以来学年トップを
「あ、ここの
「それはつまり、彼は都会に出て一山当ててやるぜと
「え、ええ、まあそうかもしれませんが……」
「ふむふむ」
「これは不定詞と
「つまり前者が
「……ま、まあいちおう。中毒かどうかは知りませんが」
「なるほどなるほど」
てな感じに。何か俺の
ほとんど俺が春香に教えてもらうカタチではあったが、それでも勉強は
「えと、ここはですね……」
そして本日何回目かになろうという春香先生の解説が始まろうとして、ふとその左手がテーブルの上にある俺の消しゴムに
「あ、すみません」
「いいよ、俺が拾うから──」
「いえ、私が──」
そう言って俺たちが手を伸ばしたのは、
「……」
「……」
指先に
心臓が、どくりと動く。
「あっ、あの……」
「あ、わ、悪い」
何だ? 何か……ヘンな気分だ。見れば
目の前には
よく考えてみれば、今この部屋には俺と春香の二人しかいない。二人しかいないということは他にはだれもいないってことであり、二人きりってことだ(当たり前だ)。閉じられた空間。年若い男女。二人きり。これらのキーワードから
などと自分の
とにかく、今はこの
──いきなり
我ながら、数学二(十段階中)の成績は
……自分で言っていてアレだが、何だかものすごく悲しくなってきた。
やるせない気分になり
目が合った。
春香がぼんって音がしそうなくらいに顔を赤くする。そのまま落ち着かなく視線をあちこちに
そのまま十秒が
うーむ、さすがにこのまま
もうこうなったら
「お二人で良い
「!?」
「うわあっ!」「きゃあ!」
「……私の顔はそんなに
少しばかり
「五度ほどノックをしましたが、返事がないようなので失礼とは思いながら勝手に入らせていただきました」
いや……いくら春香に気を取られてたとはいえ全くもって
「は、
春香が
「はい。実は先ほど
「え、美夏が?」
「はい」
メイドさん、こくりとうなずく。
「あの子、今日はお友達のお家へ遊びに行くって言ってませんでしたか? どうしたんでしょう」
「
「
「あの春香、
「え? ああ、
「妹? 春香、姉妹いたんだ」
「はい。中学二年生なのですが」
そういえば前に
「すみません、そういうことですので私、ちょっと美夏のところに──」
「ああ、りょうかい」
「ほんとにすみませんです……。すぐ
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