第三話〈6〉
4
春香とメイドさんが行ってしまい、
適当にくつろいでと言われたものの、何だかこの部屋は広すぎて落ち着かない。
じっと
まずは部屋の中央にどん、と置かれているグランドピアノ。メイドさん
「……」
何だか
ピアノの向こうにある
本棚には、いくつもの
「これ……全部
何か『
と、その中に、楽譜に
何だろ、これ?
中身を見てみようと思ったのは、ほんの気まぐれだろう。ちょっとした
「……」
中身は、マンガだった。
「……おい」
いや正確に言えばマンガ雑誌か。
──ああ、コレね。
今でもこのタイトルを聞くと二ヶ月ほど前のあの図書室不法
春香の思い出の一品か……
ロングヘアーの女の子のイラストが
「……あれ?」
そこで、何かが引っかかった。
それが何であるのか、はっきりとは分からない。だけどこの表紙を見ていると
「お待たせしました」
「!?」
その時ドアの開く音と春香の声が聞こえ、俺は
「あれ? 楽譜に
「ん、ま、まあちょっと」
首を
「もし何か
にこにこと
「じゃあ
「あ、そうでした。実は妹が……
「いや、俺は
向こうから挨拶がしたいっていうのを
「そうですか。美夏も喜びます。美夏、いらっしゃい」
「は~い!」
と、元気な声とともにドアの向こうからウサギのようにぴょんと飛び出してきたのは──
「ん? あれ?」
「へへ~、こんにちは、おに~さん。また会ったね」
何とあの地図を
「あ、
言われてみればそんな気もするが……でも何で俺が春香の知り合いだって分かったんだろ。
疑問が顔に出ていたのか、女の子は俺の耳に顔を寄せて小声でささやいた。
(あんな
……なるほど。大いに
(それにお姉ちゃんから、今日はお客様が来るって聞いてたしね)
えへへ、と笑う。そんな無邪気な表情は春香によく
「……妖怪画?」
その
「あ、ううん、何でもないよ。こっちのことだから~。それよりお姉ちゃん、早く
「あ、そうですね。何か二人とももうお知り合いみたいですけど……。この子がさっき話した私の妹で──」
「
「……」
何か趣味のところで一部あり
気を取り直して自己紹介を続ける。
「あー、俺は
「えっ……
と、
「
「いや別に俺はいいけど……何か俺の名前、変だったか?」
「あ、ん~ん、そういうことじゃないんだけど……」
「?」
「な、何でもない。──ふ~ん、それより〝春香〟か~」
春香妹……美夏が俺と春香の顔を見てにやっと笑う。
「な、何だよ」「な、何ですか」
「ん~ん、べっつに~。ただお姉ちゃんのことこんなに親しげに呼ぶ男の人、
そうなのか? でも確かに学園ではみんな
「べ、別に深い意味はないんですよ。ただ裕人さんはクラスメイトで、その、お、お友達ですから、それで……」
「ふ~ん、〝裕人さん〟ね~。お姉ちゃんが男の人を名前で呼ぶのも初めて聞いたな~」
「あ、そ、それは……」
しどろもどろになる春香。うーん、何となくこの姉妹の基本的な力関係が見えたような気がする。
ともあれ春香が
「あー、ヘンな
本当はちょっと
「そ~なの、お姉ちゃん?」
「そ、そうです。た、ただのお友達です。け、けして特別な関係とかではないです」
春香が
それを見た美夏が
「ふ~ん。ナルホド、そうゆうことか」
「何だよ、それ」
「何でもな~い。つつけばまだいろいろありそうだけど、だいたいは分かったから今日のところはこれくらいでカンベンしといたげる。あ、それからわたしのことも美夏って呼んでね、おに~さん」
「りょうかい」
「よろしい♪」
しかし元気で活発な妹だ。
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