第三話〈7〉
それからはもう勉強どころじゃなかった。
俺は
「美夏、
「え~、いいじゃん、ちょっとくらい。おに~さんはわたしと遊ぶの~」
「もう……」
とたしなめつつも、春香もそれほど強く注意する気はないみたいだった。
「ごめんなさい、裕人さん。美夏が
「おっけ」
「わ~い、じゃあ次はトランプね」
というわけで、これじゃあもう試験勉強に来たっていうよりほんとにただ遊びに来たって感じだったが、楽しかったのでよしとしよう。あと一週間あるんだし試験勉強は何とかなるさ、きっと。明日は明日の風が吹く(現実
で、気付けば夕方になっていた。
夕食を食べていってはいかがですか? と春香は言ってくれたのだが、ウチには定時に食事を
「そうですか……
「せっかく
「エサ? 裕人さん、ワンちゃんでも
「あー、まあ……」
手がかかるって点では
「ワンちゃんですか……。あ、そうだ。それなら昼間に食べたプラムプディングの残り、お
「いやそこまでしてくれなくても……」
「大した
「ま、いいか……」
大きな
「ね、おに~さん、ちょっとちょっと」
「ん?」
と、
などと少し
「おに~さん、この前はアキバ楽しかった?」
「!?」
いきなりそんなとんでもないことを
「お姉ちゃんと二人でデートしてきたんでしょ? い~な~。ね、もう手は
「な……」
「何を言って──」
ほんとに、突然何を言い出すんだ、この子は。
「ふっふっふ。とぼけてもムダだよ。わたしにはちゃ~んと分かってるんだから」
「と、とぼけるって、何のことだよ……」
アキバって……当然先月のあの春香との買い物のことを指してるんだよな。というかそれ以外あり
俺の
「ふ~ん、とことんとぼける気なんだ~。でもね~、もうネタは上がってるんだよ。確か連休明けの日曜日だったかな~? お姉ちゃん、新しい服着てうきうきで出かけていったんだよね~」
にやにやと笑う美夏。
……日にちと
「お姉ちゃん、おに~さん専用のリッパな〝お買い物のしおり〟まで用意してたよね。
「……」
もう、
「何でそのことを……」
うなだれる俺に、
「へへ~、実はね、〝お買い物のしおり〟をこっそり見ちゃったんだ~。ていってもわたしが悪いんじゃないんだよ。だってお姉ちゃん、リビングのテーブルに
「……」
「で、ちらっと見てみたら二冊あって、その一つに『
「はあ……なるほどな」
しかし何つーか……そういうところ(置き忘れ)は実に
「でさ~。ついでにもういっこ
「……どうぞ」
もうここまで来たら何を訊かれても
「おに~さんは、お姉ちゃんの
「え……」
それは少し
春香の秘密。それが指すものはもう一つしかないだろうが、
「ど~なの、おに~さん」
「い、いや……」
「あ、その目は知ってる目だな~。ほらほら~、大人しく
「こ、こら……俺はそこ弱いんだ」
「あ、それいいこと聞いた~、ほれほれ~」
「う、うははははは……や、やめ」
「ほれほれ~」
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