第三話〈8〉
ひとしきりそんなじゃれ合いにも近いやり取りをやった後、ちょっと
「ね、おに~さん。
「……」
「……知ってる。きっかけは
「そっか」
美夏の表情がぱっと明るくなる。
「うん。まあたぶんそうだろうとは思ってたんだけど、やっぱそうだったか。うんうん、我ながら女の
「なあ、今度はこっちが
「ん、な~に」
「そっちこそ、何で春香の
確かにあの〝お買い物のしおり〟を見れば
「あ、そのことか」
美夏が
「ん~、本人は
ぺろっと舌を出しながら笑う。この歳でそんなことまで考えてるのか。うーん、お姉ちゃん
まあ、美夏たちが秘密を知っていることについてはこれで
でもまだ一つ気にかかることがあった。
「なあ、何で俺が春香の秘密を知ってるって思ったんだ?」
美夏も、俺が知っているというある
すると美夏はあはは、と笑った。
「それは
「……あ」
確かにそれはまったくもってその通りだ。
「それに……そうじゃなくたって、お姉ちゃんの顔を見てれば丸分かりだよ」
「顔?」
「うん。だってあんなに幸せそうな楽しそうな顔したお姉ちゃん見るの、初めてだもん。あれは完全に心を
「……本当の
確かに学園での『
「きっと、お姉ちゃんはおに~さんのこと
「うーん」
姉妹にそろっていい人と言われてしまった。
「おに~さん」
と、
「お姉ちゃんを……どうか
「見放すって……」
いや立場的にはどちらかと言えば俺が春香に見放される方かと。何せ『
しかし美夏はふるふると首を
「お姉ちゃん……あの
それは……あるかもしれんな。うちの学園にもファンクラブはあるが、
「お姉ちゃんには、お姉ちゃんのことを色眼鏡なしで見てくれる人が
だから、と言って、
「勝手なこと言ってるのは分かってるけど……でも、どうかお姉ちゃんと仲良くしてあげてください。わたし、もうだれかに
ぺこりと頭を下げる。
──ほんとにこの子は
だからってわけじゃないが、俺は美夏の頭に手を置いて、出来るだけ優しい
「……
「え……」
「春香は大事な友達だし、それに……」
「それに?」
「……か、かわいいとも思ってるしな。ドジで
そうでなければ、春香の中身を知ってから二ヶ月近くもこんな関係(真夜中の学園に不法
「おに~さん……うん、やっぱりおに~さんはわたしの見込んだ通りの人だっ!」
美夏が
と、その時。
「お待たせしました」
がちゃりとドアが開き、春香が
「ワンちゃんのお
「は、春香……」
紙袋を片手に
「は、春香、いやこれは」
最悪のタイミングだった。客観的に見れば、どう
「み、美夏からも何とか言ってくれ」
「おに~さん、いくらわたしがカワイイからって、いきなり抱きしめるのは早いと思う。物事には
いや「きゃっ♪」じゃないだろ!
もうどうしていいか分からず、
「もう
「は~い」
イタズラを
「……春香、
「え、どうしてです?」
頭の上にハテナマークを
「お姉ちゃん、こういったことにはすっごく
「ま、それがお姉ちゃんの短所でもあり長所でもあるんだけど」
「?」
「あ~、いいのいいの、お姉ちゃんは分からなくて。それよりおに~さん」
「ん?」
小首をかしげたままの春香から俺の方に向き直り、美夏は改めてこんなことを言った。
「ああいうお姉ちゃんだから色々と
最後の〝おにいさん〟の
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