第二話〈7〉
休めそうな場所を
「つ、
さすがに人一人抱きかかえての全力
「よいしょっと」
──それにしても
まあ、あそこまで楽しみにしていたゲーム機購入である。それだけに失敗した反動はものすごいのかもしれんが……
ベンチの上で、
何にせよあと少し待ってみて目を
さて救急車を呼ぶとしたら
「あっ……」
いつの
こっちに顔を向けていた春香とぴたりと目が合った。それはもう、これ以上ないってくらいのばっちりのタイミングだった。
「……」
「……」
……何か、気まずい。
「あ、身体はもう
「は、はい」
「おかげさまでだいぶ落ち着きました。あの、昨晩はあまり
「眠れなかった?」
「え、その、はい……今日のお買い物が楽しみでわくわくして、遠足の前日みたいに目が
「そ、そうか」
「……」
「……」
目が合ったままの
心臓がどくんどくんとやかましく動く。ノドがやたらと
けど……だとしたらこれは一体何なんだ?
このままこの
「……あ」
〝ワルキューレの
映画『
「ルコ……」
『今日の夕食はカレーが食べたい。材料買って、七時までには
……まあ、二十三にもなって好物がカレーなのはどうだろうだとか、料理はおろか
「メ、メールですか?」
「あ──ああ、姉貴から」
なぜなら、そのおかげで
「お姉さんがいるんですか?」
「あ、あれ。言ってなかったっけ? 七つ年上なんだけど……」
「そ、そうなんですか」
とはいえそれは完全に消え去ってくれたわけではない。
おかしな
とにかく、ここは少しインターバルを取らなきゃマズイ。
「ま、まあそういうわけなんだが。それより……あ、そうだ。春香、ノド
「あ、ええ。あの……」
「すぐ戻ってくるから」
何か言いたげな春香をベンチに座らせて、俺はその場から
近くにある自販機でコーヒーと紅茶を買う。そのついでに
「ほい、紅茶で良かったよな?」
「は、はい。ありがとうございます。私、紅茶大好きなんです」
黄色いレモンティーの缶を
「何か……
「新鮮?」
別にどこにでも売ってる
「私、缶に入っている紅茶を飲むのって、初めてなんです」
……ナルホド。そういえば学園でもブリック(パック入りジュース)とかを飲む
こくこくとレモンティーを飲む春香。その
「あの……さっきはすみませんでした」
「あんなに
「ん、あー、いや」
まあ確かに倒れた春香をお
「……ほんとにすみませんでした。今日はムリを言って、せっかく裕人さんにこんなところまで付き合ってもらったのに」
春香がうつむく。
「……私、ほんとにダメですね。おまけに私がぼやぼやしていたせいで『ぽーたぶる・といず・あどばんす』も売り切れちゃうし……。目的も
缶をきゅっと
それに春香。お前の言ってることには一つだけ大きな
「待った。確かに
「え……」
「それに何だかんだいっても……今日は楽しかった。色々と俺の知らない新しい世界(ネコミミメイドとかネコミミメイドとかネコミミメイドとか)も見られた。だから来ない方が良かったなんてこれっぽっちも思ってないし、むしろ
これは
「
春香が、くしゃっと顔を
「う……ぐすっ、あ、ありがとうございます。わ、私も、今日は楽しかったです。だ、だれかと買い物に行くなんて初めてで……本当に楽しかったんです。でも、でも楽しかったからこそ
「あー、
「はひ……」
とは言いつつも春香は泣いていた。マジ泣きだった。ポケットからハンカチを出そうとして……ハンカチなんて上品なものは持ってきてなかったことに気付いて、街でもらったポケットティッシュ(配布元:最近社長が
「ぐしゅ……すみません」
それから春香が
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