第一話〈5〉
3
「あー、これから持ち物
「静かにしろー。それじゃあ今から回るんで、男子は私、女子は
上代先生はうちのクラスの副担任であり、去年女子大を卒業したばかりのうら若き音楽教師である。先生ぶった
そんなことよりも、持ち物検査と聞いて一つ頭に引っかかったことがあった。
……まさかとは思うけど、乃木坂さん、あの本を持ってるなんてことないよな?
うちの学校の図書室の貸し出し期間は二週間。乃木坂さんがギリギリまであれを借りていたとすれば、
そこには、殺人事件の
……うわあ、
それはもう明日も太陽が東から昇るのと同じくらいの確信だった。
「はい、それじゃみんな。すぐに終わるから、少しだけガマンしてね~」
上代先生の
さてどうするか。
しばし
でもなあ。
二週間前の
ま、
俺は手を上げて言った。
「あの、急にハラが
「んー、何だ、朝から食いすぎか? まあ別に
「ちょっと悪い」
「えっ?」
すでに少し泣き出しそうだった乃木坂さんにだけ聞こえるようにそう言って、俺は
「え、え、きゃっ!」
机が
「乃木坂さん、
「ちょっと
「あんた、
「あ~、もう。何をやっているの綾瀬くん」
見かねたのか上代先生が
「すいません。早くトイレに行こうと気が
「気が
「お願いします」
どこか
ハラを
「……あれ?」
と思ったら、その下から何か出てきた。やたらと高価そうな青緑色の本。これって……
「フランツ = リスト作曲、メフィストワルツ第一番S514……」
何やらすごいタイトルである。
改めて乃木坂さんの
…………閉じようとして、
「……」
これは、イラストなんだろうか? 楽譜の
いや〝ような〟と表現したのは、それが人喰いタヌキにも見えるし、人喰いイヌにも見えるし、出来
絵心のある幼稚園児ならもうちょっとマシに
「……見なかったことにしよう」
色んな意味でそれが正解のような気がする。きっと、世の中には知らない方がいいことってのは
ちょっとだけ
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