第四話〈4〉
1
夏休みまであと二週間に
由香里さんに
「
「裕人さ~ん」
その辺を歩いていたヤツらが
だけど春香は相変わらずそんなもんどこ吹く風でにっこりと笑って、
「あのですね、〝この前お話ししたモノ〟を持ってきました。よろしかったらこれからいっしょに見ませんか?」
ぱたぱたとこっちに向かって走り始めたのだが。
「あ、おい
その進路上には
「え?」
こっちに来るのに
「え、ええっ……?」
そして
「き、きゃあっ!」
一回転して、
走る→
「い、
助け起こそうと春香のもとへ行こうとして……そこで、
何やら見てはいけないものを見てしまったような、たまたま
最初はただの注目だと思った。
あの『
しかし。
春香の
〝この前お話ししたモノ〟とやら。
たまたまめくれて
「……」
「ま、またやっちゃいました……」
「あ、あれ……みなさん、どうしたんでしょう?」
「……」
「あの、どうしてこんなに静まり返っているのですか?」
俺を見てそう
「??」
春香の頭の上にでっかいハテナマークがいくつも
「あの
助けを求めるように
「え……?」
その
「え、どうして〝なつこみ〟のカタログが……え? え?」
春香の顔色がかわいそうなくらいに変わった。朝会で校長先生の長話の最中に
「え? だって私、ちゃんとカバンの一番
受け入れたくない現状に心がついてこないのか、春香はあたふたとするだけで立ち上がることもしない。
「春香、とりあえず立てるか?」
「あ……わ、私、私……」
「春香?」
「や、やめて……そんな目で見ないでください。私、私は……」
「お、おい、落ち着けって……」
俺の声も聞こえていないのか、両手で頭を
「わ、私はっ……」
そして
「っ……」
そのまま落ちているカバンを
「は、春香……」
残されたのは、いまだドジポーズとやらのページが開かれたままのカタログと俺。う、
「なあ……アレって、本当に
「分かんない……でも彼女のカバンに入ってたのよね」
「でもあの『
よし。
だったらここはもうこれしかないだろ。
「あ、これってもしかして!」
俺はわざとらしく大声を出し、残されたカタログを指差した。
「これってもしかして……俺が三日前に落として
……かなり
だがそれでも、周りのヤツらは俺の
「……そうだよな。あの乃木坂さんがこんなもん持ってるはずないし」
「春香ちゃん優しいから、あんなものでも捨てずに持ち主を
「あいつ一組の
「ふーん、綾瀬くんもそういう
「そう? 別に綾瀬なんてどうでもよくない?」
「まあもういいじゃん。行こーよ」
好き勝手なこと(人のことどうでもいいとか言うな)を言いながら、ヤジウマ共はちりぢりに
……ふう。何とか
「やれやれ……」
立ち上がる。
ともあれ、これで一件
だけどその考えは、少しばかり
翌日。
春香は学園を休んだ。
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