第四話〈5〉
2
「はい、それでね~。フランスでは近代になってドビュッシーやラヴェルなどの
「この印象派の人たちの
だけどそんな由香里さんの説明も、今の俺の頭にはほとんど入ってこなかった。まあもともと
教室の
そこにある、本来春香が
いや今日も、という表現の方が正しいか。
心の中でため
今日で、春香が学園を欠席して三日目である。
先日の〝カタログ
ほんとに体調不良ってことは……たぶんないだろう。
いまだに俺のカバンの中に入りっぱなしのカタログのことを考える。あの時の
いくら考えても、俺のニワトリ
だが何にせよ、このまま放っておくことはためらわれた。
──
こんなことを
放課後になるのを待って、俺は
そういえばあの事件以来、俺の
「またありやがる……」
「やれやれ……」
全部拾い集めて
などと
そこには、「春香ちゃんに近づく害虫め!
心の
このテの
「はあ……ったく」
どうも学園では、『
「にしてもどいつもこいつも……アキバ系がそんなにキライなのかね」
あるいは単に俺のことがキライなだけかもしれんが。
いや
これらのことから結論すると、
「……つまり、キラわれてるのは俺個人ってことか?」
ちょっと
まあしかし、なるようにしかならないだろ。
人のウワサも七十五日。そのうちみんな俺のことなんて
んなことより今は春香の方が
校門へと足を向けようとした俺の前に、
「やあ、
……だれだ、こいつ。
初めて見る顔だが、少なくとも
「ああ、自己
にやにや笑いを
その名前には
確かバスケ部の
「……で、その佐々岡先輩が俺に何の用ですか?」
どうせロクな用事ではあるまいと
「いやなに、春香ちゃんに
「……それはおヒマなことで」
はあ。試験のヤマとかは全くもって当たらないクセに、どうしてこういうろくでもないことだけは当たるんだろうね。自らの不運を
「……だったら、十分に見ることが出来てもう満足したでしょう。そこ、どいてくれますか? 俺はこれから用事があるんで、アンタに
「……何ですか?」
「まあ待てよ。キミに一言だけ言っておきたいことがあってね」
「……手短に」
三秒以内にすませろ。
「何、
……フィギュアを眺めて喜んでるのは実は春香の方なんだけどな。まあ何であれ、こんなヤツの言うことを聞く気なんてこれっぽっちもありゃしない。
「用件はそれだけですか? んじゃ俺はこれで」
「ま、待ちたまえ!」
「何ですか?」
しつこいな。
「何だじゃない! 今の僕の話は聞いてたんだろ? だったらここで
「お
「うん、分かればいい……って、
「ええ。別に俺にはアンタの言うことを聞かなくちゃいけない
当たり前だ。
「……っ」
その返事が気に食わなかったのか、
「ふ、ふん、まあいいさ。キミなんて、
と、鼻で笑った。
もういいからそこどけ。
佐々岡の野郎を
「おに~さん!」
何やら
「おに~さん、お姉ちゃんに何したの!?」
いきなりそれだった。
「……
だが俺の
「だってお姉ちゃんがあんなに落ち込む理由なんて他に考えられないもん! おに~さん、お姉ちゃんに、へ、ヘンなプレイとか強要したんじゃないのっ?」
顔を真っ赤にして美夏が
「ナ、ナースとか、バニーとか、
さらに超具体的な内容を付け加える美夏。
「あのな、だから俺のせいじゃないんだって」
説明するが、美夏からは
「ウソ! じゃあ何でお姉ちゃん、あんなになってるの!? 三日前に学園から帰ってくるなり
それはかなり
「それに夜には
そこまで言って、
「……もしかして、お姉ちゃんの
すがるような
「いや
「それじゃ何で……」
「あー、でも
「あ、うん……」
美夏が
「いちおう本人は体調が悪いからって言ってる。でもあれは
「あの時と言うと……?」
「あ、え、それは……」
「俺が聞いていいような話じゃないならムリにとは言わないが──」
「……そういうわけじゃないんだけど」
「でも、もし
「……」
美夏は少し考え込むようにうつむいて、
「……そうだね。うん、おに~さんは知っておくべきなのかもしれない」
それから何かを
「分かった、話す。おに~さんにだったら話してもだいじょぶだと思うから。あのね、お姉ちゃんは──」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます