第二話〈3〉
2
そういう
正直そんなに乗り気なわけじゃなかった。
いや春香と過ごすのがイヤだってわけじゃない。というかそれ自体はその場で三
にもかかわらずいまいち気乗りしないのは、何というか、俺にとってアキハバラという街にはあまりいい思い出がないからである。
俺がこの日本最大の電気街に来るのは
最初に連れて来られたのは、小学校一年生の時だった。
その
ムダに
理由は
で、そんな俺が
二度目はそれから何年か
もはや二度とあそこには行くまいと
まあとにかくそんなこともあって、俺はこの街があんまり
ちょっとだけ複雑な気分で
待ち合わせ場所でもあるアキハバラ駅前。休日ということもあり
などとぼんやりと考えていると、
「あ……もしかして待たせちゃいましたか?」
ウワサをすれば
「ごめんなさい……時間通りに着いたつもりだったんですけど」
「いや、春香は
これはほんとのことである。もう少し
にしても──
「……うーむ」
春香の私服
「あ、あの……どうしたんですか? そんなにじっと見られると
「あっ、悪い」
思わずぼーっと見入ってしまっていたみたいだ。だけどそんな恥ずかしそうにちょっと
「? 私……どこかおかしいでしょうか? このお洋服、今日おろしたばかりのものなのですが……
「いやそんなこと」
全くありません。むしろ似合いすぎていて
それに春香は気付いてないが、さっきから
「そ、それじゃ行くか」
「あ、はい」
さて、この辺で俺たちがこの街にやって来た理由をちょっとばかり説明しておくべきだろう。
いやもちろん買い物に来ているわけだが、そういうことではなくて具体的に何を買いに来たのかということである。
以下はちょっと前に
「あのですね……銀色の『ぽーたぶる・といず・あどばんす』が欲しいんです」
春香の口から出たのは、俺でも知っているくらい有名な
「てことは、オモチャ屋に行くってことか?」
「う~ん、オモチャ屋さんというか電気屋さんだと思います。たぶん。私もよく分からないのですが、雑誌にそう書いてあったので」
何か
「じゃあまず電気屋か? といってもこの街は電気屋ばっかだからな……」
むしろここではそうでない店を
「だったら、まずその辺の電気屋を
とりあえずそう
「あ、ちょっと待ってください」
止められた。
「あ、あの、実は今日のために用意したものがあるのです」
何やらカバンをごそごそと
「えと、こちらが
「……これは?」
「〝お買い物のしおり〟です」
にっこりと春香。
「は?」
何だそれは。
「今日に
なるほど地図ね。いや、まあ行きたいところを事前にまとめておいてくれたのはいいんだが、ひょっとしてこのミミズがのたくってヘビとケンカしてるみたいなけったいな線が地図だとか言うんじゃないだろうな。
内心の不安を
で、このお買い物のしおりとやらによると、
「なあ、何で
俺の質問に、春香はちょっとイタズラっぽく目を細めた。
「だって最初に買ってしまったら、それでお買い物が終わってしまいますよ。せっかく楽しみにしていたお買い物なのに……そんなのもったいないです。それに──」
「それに?」
「それに……一番のお楽しみは、最後に取っておくものだと思って」
どうやら好きなオカズは最後に食べるタイプみたいである。
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