第四話〈7〉
春香はヒザを
その
俺の
「……あの、さっきはすみませんでした。そ、そのおかしなことを言ってしまって……」
「あー、俺は気にしてないから」
そのことに関しては今はあんま突っ込まない方が吉だろう。いや突っ込んではみたいんだけど。
「それより三日も学園休んで……
「……すみません」
「いや別に
「とりあえず、
「え?」
「春香の
「そ、そうなんですか?」
春香がぱっと顔を上げた。
「ああ、だから春香は何も心配することない」
「あ、ありがとうございます。でも、あの
確かにあれはかなり
俺があの時にやったこと(
「え、それじゃあ……
「まあそういうことに」
「そ、そんな……」
春香の表情が変わった。
「ん? 何かマズイか?」
特に問題はないと思うんだが。
「だ、だって、裕人さんがヘンな目で見られてしまいます……」
なるほど、そのことか。確かにアレが
「それは別に気にしなくていい。春香が元気になれば、それで俺は満足だ」
だから俺はそう言ったのだが。
「そ、そんな、そんなこと……」
しかし、春香はその答えに
「裕人さんは分かってないです。それがどういうことなのか……
その
「ダメです……そんなのはダメなんです……。ゆ、裕人さんには、私と同じような思いはさせたくありません」
「
「……あんな、あんな思いはもう──」
うつむいて
「……
「ああ。いいけど何の──」
言いかけて気付いた。こんな
その
「──私の、中学生の
*
春香の語った内容と
要するに、春香は今回やっちまったのとほとんど同じポカを、中学の時にもやっちまったとのことらしい。
そして見事に
中学の時も、すでに今と同じように
別にムシされたり、表立っていじめられたりするようなことはなかったらしい。
ただ周囲の春香に対する
美夏が言うには、その時の春香の落ち込みようは見るに
「あの
美夏も
「ほんとならお姉ちゃん、そのまま
聖樹館女学院とは、幼小中高大の十九年間
「お姉ちゃんが、趣味がバレることをあんなに
*
話を終える
「……だ、だから、ダメなんです。あのカタログの持ち主が
思い出したくない昔の話をするのは
「私、わ、私は……裕人さんに、そんなことになってほしく、ないです……」
「いやそれは」
春香の言うことは分かるが、
俺の
「そ、それはそうかもしれないです。で、でも私のせいで、裕人さんが、そんなことになる
「そういうこと、言うな」
「だ、だって……」
「だいたいそんなことくらいで
少なくとも俺はそう思っている。
そいつがアキバ系であるというだけで、その他の性格などの
「で、でも……」
「でも……一人になってしまうのは
そして辛そうに目を
うーむ、かなり後ろ向きになってるな。話を聞く限りじゃムリもないことかもしれんが、いいかげんにそんな過去から春香を
「なあ」
だから俺は言った。
「一人、じゃないだろ」
「え?」
春香が顔を上げる。
「春香は、俺が変わった
「そ、そんなことはありません。私は
まあ、その『好き』に深い意味は
「だろ? だったら少なくとも俺には春香がいる。一人じゃない」
「それは、でも……」
「それに……俺だって同じだ。たとえ世界中のやつらが春香のことをヘンな目で見たって、俺だけは春香の
「え、ええっ……!?」
もしも
何でかって?
そりゃ春香の
けど、俺が春香の
俺は気に入ってしまったのだ。この
「だから、春香が一人になることもない。どんなことがあっても、俺は
……って、自分で言っておいて何だが、これってもしかしてかなり
「ゆ、
でも春香は
「わ、私……きっとだれかにそう言ってもらいたかったのかもしれないです。私は一人じゃないって、どんなことがあっても
ガマンしきれなかったのか、春香の目から再びぽろぽろと
ちょっと
「あの、一つだけお願いして、いいでしょうか?」
「ああ」
「少しの間だけ、
「お安い
「はい」
春香はこくりとうなずくと、俺の胸に顔をうずめて静かに
やがて春香は
「……ずっと、
返事の代わりに、俺はもう一度春香の身体を抱きしめた。さっきは気付かなかったが、春香の長い
「……とても良い
「うわあっ!」「きゃっ!?」
気が付くと、また
「……ですから、私の顔はそんなに
かなり
「二人の世界に入ってたから、気付かなかったんじゃないの~?」
これまたいつの
「どうやら
「あ、そういえば……」
思い出したかのように、春香のお腹がく~とかわいらしい音を立てた。
「……」
春香が真っ赤な顔になる。
そんな春香を見ながら俺は、お
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